碧山窟

里山を買うまで(4)


私は、「どこまでぃくんですかぁ~。。」と、背中に声をかけました。
「宿はとってあるんだから、心配ねぇよっ!」
古都の細い路地の先は、もう、おまかせするしかありません。

・・

馬刺しを前に、その日、何度かの乾杯をしました。
営業所のパソコンをリカバリして、設定のしなおしをしたのです。
メーカーのサポートFAXはごちゃごちゃで、順不同で、メーカーに電話すると、話中です。リカバリCDなんてありません。
朝から始まって、本体のリカバリが終わったのが夕方6時。
それから、接続の設定などをはじめて、終わったのは9時を過ぎていました。
その日は、支店長の勧めもあって、その古都に泊まることにしました。

*

「おやじはさぁ、80歳過ぎてるんだけど、なぜか筆を持つと振るえがぴたっ!と、止まるんだよね。」
支店長は家族のことを話しはじめました。
私は知っていたのです。
彼の父親は蒔絵の漆工芸で、全国的にも有名な工芸作家だということ。
そして、跡継ぎは彼の筈だったのだけれど、彼の弟が跡を継いでいること。
「高田馬場で、クロッキーしたんだよ。オレも跡継がないと思ったからね。」
「あ、その場所って、あそこですよね。」
「そうそう。あそこだよ。知ってるのかぁ。」
しばらく、美術についてあぁたら、こうたら、馬刺しを食べながら話しました。
子供の教育のこと、家の借金のこと、老夫婦を養うこと。

*

「あのぉ~、お父さんが字を書いて、元気になるんでしたら、書いて欲しいんですけど。」
私は、メモ帳をぶりっと破いて、ボールペンで書きました。

「握種観梢」

支店長に渡すと、人なつっこい顔が険しくなり、そのまま1分は沈黙していたと思います。

「誰の言葉だい。」
「私の言葉です。」
「いい。とてもぃい。親父に書かせてみるよ。」

観梢

それから、一週間もしないうちに色紙と短冊が届きました。

「握種観梢」

ふくよかな字に、松の絵が添えてありました。
私は、その墨書の気高さに圧倒されました。

雪解けを集めて早し・・・・


第四のぢぃさんは、奥さんと相談したそうです。
リフォーム借金をすること。
そして、雪解けを待って、春から住むこと。
「冬にむかって引越しは、いけないよ。春だと、気分が乗るからなぁ。」
「んだなぁ。」

第四のぢぃさんは、すでに家は建てていたのです。
でも、その家を娘夫婦に譲って、寺守をしていたのです。
ま、檀家のために家賃なし。
でも、墓の整備はするという、暗黙の契約ですね。
彼の奥さんも誠実な人ですから、夏には草を抜き、秋には落ち葉かきをしていたんです。
でも、古民家を見たとき、奥さんは賛成したそうです。
今までの人生は、人のために生きるのがあたりまえだと思っていた。
でも、ここなら、自分の人生を悠々と送れる。。。と。

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ヤマセミが飛んでいった山に指で四角をつくてみました。
寒さと雨で胴振るえがしてきました。

おれ「なぁ、じぃさん。」
ぢぃ「ん。」
おれ「ここに額縁あてると、いぃ借景になるわ。」
ぢぃ「んだなぁ。誰かが買ってくれればなぁ。」

第四のぢぃさんも、ぶるっと胴を震わせました。

おれ「ぃぃ絵だなぁ。300万かよ。」

ニタッとぢぃは笑ったのです。

「安い絵だべ。。」

......

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