今日も歩いて健康になろう

今日も歩いて健康になろう

スリムな私との別れ・・序章


痩せていた私をそう呼んだのは、小学校3年の時の担任だ。

今だったら、そのような呼び名で、生徒を呼んだりしたら、
たいへんなことになるかもしれない。

しかし、そのような呼び名で呼ばれても、大して気にはならなかったし、
先生を嫌いになったりは、しなかった。
反対に、先生の事は、好きだったと思う。
実際、その先生は、生徒から人気があった。
たぶん、先生の決して形だけではない、人間性を、子どもながらに、
感じていたのだと思う。
おおらかな、ゆったりした時代だったと思う。

物心ついたときから痩せていた私は、
なぜ、本屋にこれほど「ダイエット」に関する本が、たくさん並べられているのかが、分からなかった。

日本から、定期的に送られてくる、夫の実家からの船便には、
私のために、雑誌が必ず入っていたが、
「ダイエット」のコーナーだけは、飛ばして読んでいた。
食に無頓着に暮らしてきても太ることなど経験がなかった私だった。

ベルリンに来たばかりという事で、様々な人たちが歓迎のパーティに招いてくれた。
歓迎のパーティは、夫の勤務先関係や、剣道関係、子どもを持つ親のコミュニティ関係など。
招かれるだけでなく、自宅でのホームパーティーもよく開いていた。

外国のパーティでは、必ず最後にデザートがつく。
ほとんど、バターと砂糖の塊のような生地と、
季節のフルーツを一緒に焼き上げたクランブルケーキ。
チーズケーキには、たっぷりの生クリームをトッピングするのが、ドイツ流。
「ミット ザーネ!」(ナマクリームをトッピングしてね!)
とドイツ語でいうのはとても簡単だった。

また、観光気分の抜けない私達は、買った車が届くまで、
バスや地下鉄の乗り方を覚えながら、
町の中心部のクーダムや、スティグリッツなどの町を散策し、
ベルリンの食べ歩きを楽しんでいた。

ドイツといえば、ソーセージとビール。
昼間から、飲んでいる人も珍しくはなかった。
中高年のご婦人でさえ、ビールを片手にランチを食べていた。
水よりも安いビールの値段もあって、私も当然のことながら、
「昼間からビールを飲む」という習慣をみにつけさせてもらうことにしたのだった。
いま思えば、あの時にビールを持っていたご婦人の体型を、
注意深く考察してさえいれば、そんな習慣など身につけなかっただろう。
しかし、ビールの種類によって、大きさやデザインにこだわる、
ドイツ人のビール道を極めずにはいられなくなっていた私には、
婦人の体型の事など、まったく目にはいっていなかったのだ。



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