「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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21話:無限
「お前か・・・」
桜色のGの2本のブレードが輝く。新しい腕の反応は良好だ。機体は綺麗に修復され、バージョンアップが図られていた。
「反応が早い・・・これなら!!」
「ちっ、新型か・・・だが、こないだより動きが硬いぞ!?」
「・・・くっ!」
ブラック・バードはブレードの刃を桜色のGのブレードに軽く当てるようにして、受け流していた。まともにぶつかり合うと、ブレード出力の差で負けてしまう。正面から攻撃できないのは翼の意に反することだが仕方がない。距離を取りつつリニアライフルで応戦する。翼の機体も武装強化、反応速度上昇などの改造が施されていた。完全とは言えない状態で戦うのはさすがに辛い。気持ちだけでも前に押し出す。
「ここで、死ねぇぇ!!」
「俺の敵となるなら!!」
やはり空を飛べるブラック・バードが機動力の点でも上回る。桜の方が翻弄されている形になってしまう。桜にはどうしても聞きたいことがあった。あの“赤い漆黒の鷹”のことだった。
「漆黒の鷹!!お前に聞きたいことがある!」
「あぁっ!?んだよ?」
リニアライフルが火を噴く。桜色のGの横を掠めた。お互い攻撃の手を休めない。
「お前は・・・!お前と同じ・・・“赤い鷹”を知っているの!?」
「・・・何処でそれを!?」
“漆黒の鷹”に動揺が見える。やはりあの“赤い鷹”は“漆黒の鷹”と繋がっていたようだ。桜は畳み掛けるように“漆黒の鷹”に口撃する。だが、“漆黒の鷹”はあっさりそれを否定した。更に意味深なことを続けた
「やっぱり、お前の仲間なの!?」
「残念ながら仲間じゃねぇんだよ。・・・そうか・・・お前はアイツに会ったんだな」
「どういうこと!?」
「これ以上お前に言う義理はねぇよ。どちらにしてもアイツは俺の敵だ。俺が殺す」
“漆黒の鷹”から返って来た言葉は予想外のことだった。“漆黒の鷹”と“赤い鷹”・・・いや、コード“深紅の鷹”との繋がりはあるようだ。だが、“深紅の鷹”は“漆黒の鷹”の敵でもあるようだ。桜はそこに何かの因縁のようなものを感じた。
「おしゃべりしてる場合じゃねぇだろ!!」
「きゃぅっ!」
“漆黒の鷹”がライフルで直接叩きつけてきた。桜色のGが地面に叩きつけられ、スライドする。2機が戦っている間、離れた場所では黒い2機のGが世界政府軍のGたちと戦っていた。
「美山少佐!・・・美山少佐!」
「姉(あね)さん!しっかりしてください」
桜がその声に答え、ゆっくりと目を開けた。目の前には救護腕章をつけた女性と部下の少年が居た。どうやら、あの後再び気を失ってしまった桜は、機体ごと回収されていたようだ。機体から下ろされた桜はどこかの格納庫の中で目を覚ます。周りには怪我を負ったパイロットたちが呻いていた。
「あうっ・・・」
「あ、そっとしてください。早く担架を!!」
救護腕章の女性が声を上げる。直ぐに担架を持った2人が駆けつけてきた。
「見たところ怪我は軽いですよ。安心してください」
桜は安心と疲れでそのまま眠ってしまった。彼女が再び目を覚ましたのは彼の名前を聞いたときだった。
「漆黒の鷹が現れたぞ!」
その言葉に反応し、桜は目を覚ました。桜は所々軋む体でベッドから立ち上がる。
「うっ・・・。でも、アイツがいるのなら!」
桜は掛けてあったパイロットスーツに身を包み格納庫へと向かう。
「あ、姉さん!!まだ動いちゃだめですよ!」
「アイツは・・・私が殺すのよ!」
その剣幕に負けて部下の青年は道を開けた。その桜色の機体は形を変えた姿でそこに立っていた。
「どうした!?俺を殺すんだろ!?」
「はぁっ、・・・いっ・・・」
「んなんじゃ、“赤い鷹”を殺るなんて無理だな・・・ここで沈め!」
腕が痛む。思うように攻撃を繰り出せない。“漆黒の鷹”はいつものように強い。心なしかこの前より早いような気がする。自分の体のこともあるのだが、それは直ぐに証明できた。2機の間に世界政府軍のグロリアス3機が躍り出た。
「うおぉぉぉ!!」
「行けぇぇぇぇぇ!!」
「これ以上美山少佐を!!」
3機はライフル、ブレード、バズーカと抜群のタイミングで攻撃を仕掛けてきた。だが、“漆黒の鷹”はいとも簡単にそれらをあしらう。
「何機で来ようと同じってわかんねぇのかよ!!」
最初のグロリアスはリニアライフルで、一撃で葬られる。“漆黒の鷹”は空中でバランスを崩してきりもみ状態のまま、ブレードで2機目のグロリアスのブレードを受け止めた。その逆さまになった態勢のまま、バズーカの弾をリニアライフルで迎撃した。残された2機のGパイロットは唖然となった。
「馬鹿な・・・」
「一瞬・・・だと?」
“漆黒の鷹”はその後飛び上がりリニアライフルで2機のグロリアスを破壊した。桜にはその2機が無抵抗にやられているように見える。それほど黒い機体の動きは軽かった。桜は黒い機体を見つめて小さく呟いた。
「・・・敵わないの?」
その時、巨大な光の直線が“漆黒の鷹”を捉えた。桜の後方から放たれた、対戦艦用の極太レーザーだった。その光を“漆黒の鷹”は機体を変形させ軽々と回避した。
「うおっ!あぶねぇな!」
第2射目が“漆黒の鷹”を捉えようとしていた。
「ちっ・・・一旦引くか」
黒い機体は空高く舞い上がり、飛び去っていった。桜は無言でそれを見つめる。桜の機体に帰還命令が出たのはその直後だった。結局、“漆黒の鷹”と戦闘し、生き残ったのは桜含めたった数機だった。
「ヴィラ!バラッド!どうだ?」
翼が2人に通信を掛ける。バラッドのGの上に乗る形になっているヴィラから最初に返事が返って来た。続いてバラッドからも返って来る。
「まあまあよ。凄い、ってパイロットはいなかったわ。もちろんGもね」
「そうだな。手ごたえは無かった」
「じゃあ、真っ直ぐ帰るとするか」
バラッドのGが地上で更に加速する。バラッドのGは戦闘用と移動用を使い分けることが出来る。簡単な脚部の変形で移動するだけならかなりの速度で地上を走ることが出来た。翼のブラック・バードもその上空を飛行していた。ブリッツェンの待つ戦艦は谷間の見えないところに接地してある。この周りは戦闘が終了したエリアなのでGの影は皆無・・・のはずだった。それはバラッドの機体にロックされたと言う警報から始まった。
「ロックされた?・・・何処だ!?」
緊張が高まる。バラッドは機体の前にシールドを構えた。直後機体に衝撃が走る。シールドに着弾しシールドを損傷させた。シールドのおかげで大したダメージは無い。だが、直ぐに2射目が発射された。2弾目も“同じ場所”に着弾した。
「きゃあっ!」
「何!?・・・っ、何て腕だよ・・・」
正面からの狙撃だが、2発とも同じ場所に着弾させた。シールドが大きく損傷する。1発目は不意打ちだったが、2発目は反応できた。だが、2発とも同じ場所への着弾。とんでもない腕の持ち主のようだ。バラッドは空を飛ぶ翼を呼ぶ。
「翼!何か見えるか?」
「どうやら、“お出迎え”が居る様だぜ」
翼の目に映ったのは3機のGだった。スナイパーライフルを構えた白と青のG、ブレード二刀流の黒と赤のG、そして真ん中には赤と白のGが居た。真ん中の赤いG以外は同型機。3機ともそれぞれ見たことも無いモデルだった。
「見たことねぇな。新型か?」
「でも、私たちの前に現れたってことは・・・」
「・・・敵で間違いねぇな」
ヴィラのシャイニングが翼を展開し飛び上がった。翼もブラック・バードのプログラムを戦闘モードに変更する。バラッドは機体を“起き上がらせ”戦闘形態を取った。
「よし・・・カズ、マサ、“プランB”にシフト」
その赤い機体に乗る男は両隣の2機のパイロットに指示を出した。“カズ”と呼ばれた青年は白に所々青いカラーリングが施された機体を立ち上がらせた。スナイパーライフルをガチャリと動かし、取り回しのしやすい長さにそれは形を変えた。“マサ”と呼ばれた青年は黒に所々赤いカラーリングが施された機体の背中から長めのブレードを抜いた。刃が光り輝く。赤いGは全く動かない。落ち着き払ったその声は更に2人に指示を出した。
「今回はあくまで“プランE”までとする。分かっているな?」
「はい」
「了解」
2人から冷静な言葉で返事が帰ってくる。そして、“マサ”と“カズ”は同時にコクピットモニター横の赤いボタンを押した。
「何だ!?」
翼は両サイドの同型機の各所が一瞬光ったことに気づいた。翼はそれほど気にも留めなかったが、戦闘が始まって直ぐにその正体を知ることになる。ヴィラは翼から送られてきた映像を見て驚いた。その声が震えている。
「嘘よ・・・何で・・・こんなところにいるのよ・・・!?」
「どうした!?」
翼とバラッドは普通じゃない反応を示すヴィラに驚く。ヴィラは驚きの名前を口にした。
「あの赤い機体・・・アイツは・・・“無限”よ!」
「“無限”!?誰だそりゃあ?」
翼は首を傾げる。聞いたことの無い名前だった。だが、バラッドは聞き覚えがあるようで、表情が声とともに変わる。
「む、“無限”だと!?・・・何で奴が・・・?」
「私に聞かれても知らないわよ!・・・翼君、あいつはマズいわ!」
「だから、誰なんだよって言ってるだろうが!!?」
明らかに怯えているヴィラと表情が硬くなったバラッド。そして、“無限”と呼ばれるあの赤と白の機体。声を荒げる翼にヴィラは震える声で言った。
「あいつは・・・“無限”・・・世界政府軍最強のパイロットよ!」
「んだよそれ・・・?」
「“無限”って言うのは・・・あいつの機体、“ムゲン”から来ているの。“ムゲン”って機体は、あいつの自身が・・・設計開発したオリジナルのGって噂よ」
「オリジナルのG・・・“ムゲン”」
翼はその赤い機体を見た。確かに見たことの無い形式だ。隣の2機は何かをモデルにしているのだろうか雰囲気が何かに似ている。だが、翼にはそんなこと関係ない。最強だろうが目の前に立ちはだかるものは全て敵だ。
「関係ねぇよ。俺の前に居るなら敵だ」
「翼君でも勝てるか分からないわ!・・・それにあの二刀流、“羅刹の剣”で間違い無いはずよ!」
「ヴィラ・・・お前怖気づいたのか!?・・・嫌ならウチへ帰れ」
翼は突き放す。このまま一人にされると襲撃でも食らえばお仕舞いだ。それに彼のそば居たい。
「そ、そんなわけ無いでしょ!バラッド!行くわよ!!」
「分かった。翼は“無限”をやってくれ」
「任せろ。後の2機は頼んだぞ」
翼はブラック・バードを変形させ、最初の一撃を赤いGに向かって放った。だが、その弾丸は命中することは無かった。正確に言えば命中させられたと言うのが近い。空中で爆発が起き弾丸が炸裂する。
「マジかよ!?撃ち落したのか!?」
“カズ”と呼ばれた青年は、スコープから無言で目線を外す。自分の腕に酔っている訳でないが、狙い通りだったことに彼は満足した。“漆黒の鷹”の放ったリニアライフルの高速弾をスナイパーライフルで撃ち落とす。彼にとっては造作も無いことだった。弾丸は真っ直ぐ対称に向かって飛ぶ。Gのように変則的な動きは出来ない。後は弾丸に命中させられるだけの腕があれば可能な話だ。
「さすがだ、“カズ”。2人は下の2機の相手をしてくれ。私は“漆黒の鷹”の相手をする」
「「了解」」
“無限”の指示に2人は素直に従った。そして、機体を急加速させた。速い。
「嘘っ!?速い!!」
「ちっ!ミサイルを撃つ。ヴィラ、当たるなよ!!」
ヴィラのシャイニングがバラッドのGの射線上から離れた。と同時に無数のミサイルが向かってくる2機の周りを取り囲む。そのスピードでは急な進路の変更は不可能だ。ミサイルが2機のGを捉えた。爆発が起きて砂塵が舞い上がる。
「やった!!・・・意外と呆気なかったわね」
「・・・ダメだ」
「え!?」
「来るぞ!!」
砂塵から現れたGは無傷だった。スピードを緩めることなく真っ直ぐバラッドとヴィラの方に向かってくる。バラッドのGはバズーカを放った。そして、無傷の正体を知る。
「ジェネレーター・フィールドか!!?」
その2機は至近距離のバズーカも効かないほど強力なジェネレーター・フィールドを搭載したGだった。二刀流の黒いGが飛び上がる。ヴィラのシャイニングに斬りかかって来た。シャイニングはブレードを抜き、“バスターナックル”と右手のブレードで受け止めた。ブレード出力では負けてはいないが、機体の性能差は歴然だった。一気に弾き飛ばし、蹴りを食らわした。
「きゃあああぁ!!」
「ヴィラ!!」
バラッドが一瞬気を取られる。その隙に青いGは距離を一気に詰め、至近距離で肩に装備されたエネルギー・ランチャーを放った。
「・・・余所見ですか。余裕ですね」
「ぐわあ!!」
とっさに回避したバラッドだったが左手を失う。凄まじい威力だ。撃った直後にスナイパーライフルで機体の足を撃ち抜く。バランスを崩した機体は地面に落ちた。
「・・・強すぎるわよ」
力の差は圧倒的だった。あまりにも圧倒的過ぎる彼らの強さにヴィラは死を覚悟していた。
「食らえ!!」
翼がリニアライフルを放つ。赤い機体に向かったその弾丸は・・・外れた。翼は何が起きたのか分からなかった。ロックしたはずだ。そして、対象の赤いGは動いていない。外れるはずがない。2発目、3発目も赤いGを捉えることができない。だが、3発目で翼はその原因に気づいた。
「一瞬だけ速く動いているみてぇだな!?」
赤いGは着弾する瞬間、少しだけ機体を横にずらし、弾丸が通り過ぎればまた元に戻る。それを赤いGは繰り返していた。Gのカメラではその動きを捉えることは難しい。ブラック・バードの戦闘機用の高速処理システムではないと捉えるのは無理だっただろう。
「これからだ」
「“漆黒の鷹”・・・実力はどれほどのものか・・・」
パイロットは驚くほど冷静な声でつぶやく。赤いGはライフルを構えて空へと飛び上がった。
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