waiting for the changes

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64話:ロンドンの風(後


そして、ナディアの前に銀色に光る機体が何もない場所から現われた。ヴァリアルスだ。
マサとリナリー、カズとエリスの前にもそれぞれ2機ずつ“白いG”が対峙した。


「ヴァリアルス出現!」
「厄介な相手だな。“Qタイプ”と“Yタイプ”を出せ」
オペレーターの言葉にイワサキは指示を出した。すぐに6機のGがカタパルトから現われた。全方向からの攻撃にヴァリアルスが動いた。
「レベル1・・・解除(レリーズ)」
銀色の機体に光が屈折し、4枚の翼を広げて虹色に輝き始めた。そして、光を放ちながらゆっくりとヴァリアルスはナディアクルーの目の前から姿を消した。オペレーターは息を飲んだ。完全消滅するステルスシステムは存在しないはず、だ。
「・・・消えた・・・」
「慌てるな。データはある。モニターを切り替えろ。“目視モニター”オン、音感度センサーを最大に、サーモレーダー起動」
イワサキはヴァリアルスが消えることが分かっているかのように指示を出した。すぐさまその指示が実行され、切り替わったモニターの中にその機体は現われた。それははっきりと見える。そして、イワサキは手を振りかざした。
「排除開始!」


「ブラック・バード・・・あなたの攻撃は通用しませんよ?」
「今までのBBとは一味違うぜ!!」
翼はレバーを引き倒し、機体を人型に変形させる。そして内蔵型のブレードを展開して斬りかかった。クリックスは大型のシールドを展開させる。2本のブレード攻撃が大型の実体シールドとエネルギーシールドを組み合わされたものに阻まれた。光を放ってバチバチと唸りを上げる。同じような攻撃にレイはため息を付いた。
「同じですか・・・」
が、翼は攻撃を防がれたにもかかわらず冷静だった。今の攻撃を分析する。
「やっぱ、無理か・・・まあ、当然だな」
そう呟くと、翼はあのシステムを起動させた。ブラック・バードの動きが明らかに変わった。すぐさまレイもそれに気づいた。クイックで、明らかに速い。
「!?・・・動きが変わった」
ブラック・バードは真っ直ぐ突っ込んできたかと思うと、クリックスの放ったエネルギー弾を回避した瞬間、一瞬視界から消えた。
「はあっ!!」
下方からの攻撃にレイはすぐさま反応し、シールドを向けた。今度の攻撃はシールドを押し返しブレードの力が勝った。パワーも、ブレードの出力も増していることにレイは感嘆の声を上げた。
「・・・言うだけのことはあるようですね」
そして、レイは小さく笑った。この戦い楽しめそうだ。


「うー・・・この!この!」
ブラウの放つ攻撃は悉く空を切った。スピルスを捉えることすら出来ない。ロックしたと思ったらすぐにその有効範囲から消える。圧倒的なスピルスのスピードについていけなかった。スペック上、最新鋭のシエンとトップスピードは遜色ないはずだ。スピルスは機体性能や性質を理解した非常に腕の立つパイロットが操っているようだ。
さすが、“音速の皇帝”。
「く・・・何が“音速の皇帝”よ!!旧世代の老兵のくせに!!」
ジャックからの反応は無い。ブラウの声が空しく響く。ジャックは一気に攻めることなく冷静に相手を分析していた。新しい機体を見かけるとすぐには倒さすに情報を収集する。非常に危険なことだが、今後、この機体が量産化されたときの対策が打てるからだ。特殊部隊にいた彼の癖のようなものだった。一通りデータを収集すると、ジャックの顔つきが変わる。
「時間だ」
「・・・な、何が時間よ!!」
その瞬間、アレだけ派手な赤い機体が姿を消した。
「え!?・・・どこ!?」
ブラウはモニターを見回した。その時、ロック警告シグナルと同時にコンピューターが下からの接近を告げた。スピルスのブレード攻撃を、機体を捻って辛うじてシエンは回避した。切り返したスピルスはすぐさまエネルギーライフルを放った。シエンは方向を修正し、シールドでガードする。速い。ブラウはぐっと唇に力を入れた。
「速っ・・・」
シエンのエネルギーライフルがスピルスをロックする。だが、すぐにロックが解除され距離を取られる。完全に“音速の皇帝”のペースだった。彼がその異名を取るのはその戦い方。常にペースを握り自分の戦いをする。それがさらに相手を焦らせ、自分に有利な戦いへと運んでいく。戦いを支配するようなことからそう呼ばれているのだった。
「くっ・・・コイツ」
「甘いな」
スピルスのブレードの一撃がシエンの左腕を掠めた。


「マサ!」
「ああ・・・こいつ等今までのヤツと動きが違う!!」
白いGはあっさりとジャンプしたマサのMK-2攻撃を回避すると背後を取った。攻撃を加えようとした白いGにリナリーのMK-2が斬りかかった。それに反応し
振り返りざまにブレードを受け止めた。路面に着地し、マサのMK-2は振り返った。ちょうど、リナリーのMK-2が弾き飛ばされて、路面に叩きつけられ砂埃を上げながら、ロンドンの街の中を滑っていく。
「きゃあああ!!」
「リナリー!!・・・くそっ!!」
2本のブレードが輝き、白いGにMK-2が迫る。白いGは“ランサー”を振りかぶりその2本のブレードを受け止めた。それでも押される。
「くっ・・・」
マサは歯をかみ締めた。


白いGが路面に地上に降り立ち顔を動かして辺りを見回している。
「はぁはぁ・・・」
エリスのMK-2は息を飲んでそっとビルの間から見た。その時、カズの叫びがエリスを反応させた。
「エリス!!上だ!!」
エリスが顔を上げるとそこにはブレードを構えた白いGが真っ直ぐに降りてきていた。とっさにエリスは機体を捻った。ギリギリで回避し、白いGのブレードが路面に突き刺さりアスファルトがめくれ上がった。ゆっくりと白いGの顔がこちらを向いた。青い目が光る。エリスはペダルを踏み込んで一気に離れ距離を取った。
「ここから反撃するぞ!」
「ええ!」
カズの言葉にエリスは大きく頷いた。


「潜水艦の着岸を確認!・・・戦闘機の発進を要請しています」
「戦闘機・・・?」
司令官は首を傾げた。先ほど2機の黒と赤のGが出て行ったのは見えた。そして、“ナディア”から発進してきた黒い2機のGと戦闘を開始していた。
「よし・・・許可を出してやれ。・・・3番の戦闘機用ハッチを使うように指示を」
「了解です」
オペレーターが3番の滑走路に通信を開いた。パイロットスーツ姿のレッシュがゆっくりと薄暗いコクピットで顔を上げた。
「既にカタパルトにセットしてあります!発進許可を!」
「許可します」
その言葉を聞くとカタパルトのオペレーターはレッシュに通信を開いた。
「行けます!」
「ありがとう」
レッシュはモニターに写るオペレーターに向かって敬礼をした。カタパルトにサイレンが鳴り響く。
「カタパルト角度セット!ゲートオープン!作業員は速やかに退避してください」
EVEがそっとレッシュに語りかけた。
「厳しい戦いになるわよ」
「わかってる」
「いいわね。・・・無茶しちゃだめよ」
その言葉を聞いてレッシュは頷いた。カタパルトが明るく輝き、進路を示す。
「レッド・バード、レッシュ・F・ヴィレドル・・・行ってくる!」
カタパルトが一気に加速し、赤い戦闘機を空中に打ち出した。ペダルを踏み込み機体が一気に加速していく。翼とジャックにもレッシュが出撃したことが伝えられた。
「レッシュ!?」
翼はクリックスから距離を取りながらレッド・バードが出撃したと思われる方角を見た。
「機体は大丈夫なのか!?」
スピルスはシエンを弾き飛ばすと牽制のエネルギーライフルを放ちながら一旦距離を置く。確か、レッド・バードは完全な状態ではなかったはずだ。それがジャックの心に引っかかる。レッド・バードは真っ直ぐ“ナディア”の方へと向かって行った。
「何だ?」
「“F”だ。・・・ちょうどいい・・・消すぞ」
「俺に命令すんじゃねぇよ」
“Y”は“Q”に向かって噛み付いた。それぞれ同モデルの灰色の機体。ライフル、ブレード一体型野“ランサー”にシールドを装備。背中にはミサイルランチャーとエネルギー砲を備え付けてあった。“消える”ヴァリアルスも同じ“エデン・チルドレン”だと場所が分かってしまう為、ステルスを解除し、2機の排除にあたっていた。“J”は真っ直ぐ向かってくる赤い戦闘機に通信を開いた。
「レッシュ!」
「援護する!」
レッド・バードが“シルバーアロー”を放つ。独特の発射音と強烈な光の道を残して真っ直ぐ“Q”と“Y”に向かって行く。2機はそれを回避した。
「あたったら死ぬぞ、アレ」
「けっ・・・当たったら、だろ?」
“Y”は吐き捨てるように言うとすれ違いざまレッド・バードに斬りかかって行った。が、戦闘機の速度に追いつけずにその攻撃は空振りに終わる。
「狙いを定めろ」
「うっせーな!!お前の指図は受けねぇ、つってんだろ!!」
と、“Y”の機体の右腕の“ランサー”が“Q”に突きつけられた。それを見て“J”とレッシュは首を傾げた。
「仲間割れか?」
「・・・いえ・・・そんなはずは」
その状況を見てイワサキはため息をついた。そして、射撃管制に指示を出した。
「“Q”及び、“Y”をロック」
「はっ・・・?」
「構わん・・・やれ」
自分達が“ミラージュ”にロックされたことに“Q”と“Y”は驚いた。
「何やってんだ!?・・・俺たちじゃねぇだろ?」
かみつく“Y”にイワサキは冷静に言った。
「使えん部下はいらん。命令を聞かない様ならここで消えろ・・・。これを握っているのは私なのだからな」
そう言うと、イワサキはポケットから2つのディスクを取り出した。そこには“Q”“Y”とそれぞれ書かれている。それを見た瞬間、“Q”は“ランサー”を降ろした。
「ちっ・・・やればいいんだろ?」
そう言うと、2機は銀と赤の機体に同時に向き直った。


戦艦の中では忙しく人が走り回っていた。桜は手錠が外され、部屋に放り込まれていた。その時、「ピー」と言う電子音と同時にドアが少しだけ開いた。膝を抱えていた桜は驚いた。薄汚れたままの姿と顔にゆっくりと光が差し込んでくる。
「え?」
桜は立ち上がるとドアに近づいた。そっと外の様子を伺うと遠くのほうで足音や作業音が聞こえるだけで、桜の部屋の周りは静かなものだった。
「どーなってるの・・・?」
桜はそっと部屋から出た。


本部にブリッツェン以下潜水艦のブリッジクルーが銃を持った兵士に連れて来られた。司令官は彼の顔を見て驚いた。
「レッツォ・・・ブリッツェン!!?」
「・・・なんだ?知っているのか?」
驚きの表情を見せる司令官は銃を下げるようにジェスチャーをした。そして握手を求めた。
「まさかあなたが潜水艦の指揮官だったとは・・・失礼した。私はここをまとめているベントだ」
「君に会ったことは・・・」
突然のことに握手に答えながらブリッツェンは首を傾げた。友子と貴子、シェリーも顔を見合わせた。
「世界政府軍では有名だぞ?“世界初のG専用部隊艦長”」
「そうか・・・。すまないな、無理を言って。ついでに状況を説明してくれるか?」
「そうだな。・・・一言で言うと・・・最悪だ」
その言葉が全てを物語っていた。


世界政府本部からの発表はまだ無い。
世界規模で白いGが襲撃しているということ。
そして、世界の殆どの主要都市は制圧、壊滅・・・または消滅。
情報が錯綜し、どれが正しい情報すら分からない。
どこからの情報かは分からないが、「“勝利”を死守しろ」と言う謎の通信が指令センターに一斉に届いたりしていたことを司令官はブリッツェンに報告した。大型のモニターには4機のMK-2と4機の白いG、ブラック・バードとシエン、スピルスとクリックス、そして、レッド・バードとヴァリアルス・・・見たこともない黒い戦艦が映し出されていた。
「何だアレは・・・」
ブリッツェンは言葉を失った、大きい。見たこともないモデルの艦だった。その回りで3機のGと1機の戦闘機が飛び回っている。ロンドンの街並みに、“ビッグベン”に向かって一直線の“道”が出来ていた。
「Gは?」
「カタパルトが最初の攻撃により損壊。・・・敵はそれを計算に入れて初撃を放ったものと思われます」
オペレーターが敬礼してブリッツェンに言った。ブリッツェンは口に手を当てて唸った。


エリスは白いGをロックして弾丸を放った。が、それは当たることなく空を切った。そして、もう一度敵の動きを解析し、攻撃を放とうとした瞬間あることに気づいた。と、同時にレッシュも同じことに気づいた。EVEも同じ事に気づく。
「これって・・・」
「ああ」
レッシュとエリスから同時に通信が届く。
「“J”こいつらの目的は何だ!?」
「え?」
「聞こえますか?“J”さん!!・・・彼らは同じ方向に向かってます!」
そう言われて、“J”はEVEから送られてきたデータを見た。すぐさま指令センターに報告する。オペレーターがスクリーンに映し出した。
「司令。彼らの狙いはやはり“ヴィクトリア”です・・・艦長!?」
“J”は司令官の横にいたブリッツェンの姿を見て驚いた。“J”の姿にブリッツェンが小さく笑う。
「とりあえず、あとだ。・・・司令、“ヴィクトリア”とは?」
「・・・世界政府軍の最新鋭艦・・・その3番艦」
“J”がそう答えると同時に大型モニターが半分に割れ、片方には白い大きな戦艦が表示された。それが表示されると、司令官は“J”に手をかざして合図を出した。“J”は頷くと通信を切った。司令官はブリッツェンに向き直った。
「これは世界政府軍の最新鋭艦“L-シリーズ”の内の1隻、“ヴィクトリア。残り2隻に対しバランスの取れた艦になっている」
そう言った瞬間、指令室が大きく揺れた。オペレーターたちが大きくざわつく。ブリッツェンは手すりを持ちながら司令官に聞いた。
「他にGは?」
「・・・第一波の攻撃をしのいだ時に壊滅的ダメージを受けた・・・彼らに頼るしか今は方法がないのだ・・・。正直あなたが来てくれて助かったところだよ」
司令官は小さくため息をついた。


「“J”!左だ!」
「レッシュ!ミサイル接近!リニア砲にロックされたわ!」
レッシュが“J”に叫んだと同時にEVEがレッシュに警告を発した。ヴァリアルスとレッド・バードは同時にその攻撃を回避した。戦闘機のまま飛び続けるレッド・バードに“Y”は小さく笑った。おかしい。これは・・・。
「あいつ・・・変形できない?」
「はぁ!?マジかよ!?だっせーなぁ!」
その言葉を聞いて“Q”は吐き捨てるように言った。EVEはすぐさまそれを察知した。
「レッシュ!・・・バレたみたい」
「・・・くっ」
コクピットでレッシュは歯をかみ締めた。左に旋回しながら2機の灰色のGを見た。黒い戦艦と銀色に輝く機体も見える。例え変形できなくとも、戦闘機なりの戦い方をすれば、Gに対しても引けを取らないはずだ。レッシュは灰色の2機のGを睨んだ。そしてEVEに指示を出す。
「回避パターン、反応速度を解析!・・・こっちは“J”の支援に徹する」
「了解!取得データを“ヴァリアルス”に転送します」
レッド・バードはエネルギー弾を回避するとバレルロールし、“翼を羽ばたかせた”。戦闘機ではありえないようなトリッキーな動きに、“Q”と“Y”はイラつく。
「くっ・・・何だあの動きは」
「ウゼーんだよ!!お前ぇはよ!!」
“Q”と“Y”の2人の動きがシンクロし、レッド・バードに双方向からエネルギー弾が迫った。


・・・その時。
「!!」
優美は薄暗い部屋で目を見開いた。
感じる。
レッシュが戦っている。


「掠っただけ!ジェネレーター・コートがあるから損傷はないわ!」
EVEが早口で叫ぶ。レッシュは目線を素早く2機の灰色のGに向けた。操縦桿を握る手に力が入る。ペダルを数回に分け、小刻みに、時に大胆に踏み込み、Gの掛かるコクピットで、数センチ単位で操縦桿をスライドさせる。“J”は歯をかみ締めた。
「“F”!!・・・このままでは」


優美は重い体を起こした。
レッシュが戦っている。
「・・・私も行かなきゃ」
彼は今ピンチだ。助けに行かなくてはいけない。
優美はふらつきながら、扉を押して、倒れこんだ。


「レッシュ!下!!“J”!ナディアから高熱減反応!」
「“ミラージュ”を止めます。アレを放たれたら最期です」
EVEからのデータがレッシュと“J”に直接流れ込んでくる。ナディアの“ミラージュ”に光が集まり始めた。“J”は“ミラージュ”に向かってエネルギー弾を放った。が、目の前の見えないバリアに阻まれた。ジェネレーター・バリアだ。
「ミラージュ再発射まで10秒」
「9、8、7・・・」
カウントダウンを開始するオペレーターを見て、イワサキは目の前の時計塔を見た。
「目標・・・時計塔」
「6、5、4・・・」


桜は扉の前に立っていた。潜水艦の中はいやと言うほど静かだった。
「・・・」
桜は息を飲んだ。この向こうには優美がいる。そう思った瞬間、扉が開き優美が倒れこんできた。とっさに桜は優美を抱きとめた。
「優美!?」
「・・・行かなきゃ・・・レッシュが」
「え・・・ちょっと!」
桜の腕を掴んで優美は必至の形相で顔を上げた。指の色が白くなるほどその手には力が篭っていた。ふらつきながら立ち上がる優美を桜が支えた。
「・・・レッシュが」
そう呪文のように「助けなきゃ、行かなきゃ」と辛そうに繰り返す優美を見て桜の胸は締め付けられるようだった。そして、桜は顔を上げた。その目には決意の光が宿っていた。


「え・・・?今なんと・・・?」
司令官はもう一度聞いた。聞こえなかったわけではない。もう一度、確認の意味で聞いておきたかった。
「その“ヴィクトリア”を出すんだ」
ブリッツェンはモニターの隅に表示され、モニター全体にズームして拡大された“ヴィクトリア”の映像を見て言った。
「ここに眠らせておけば到達するのは時間の問題だ。ならば、こちらから打って出て彼らを退ければいい。・・・その力があの“ヴィクトリア”にはあるのだろう?」
そのブリッツェンの言葉に司令官は言葉を詰まらせた。
「ですが・・・あれは、最上クラスのプロテクトが掛かっています。“上”の許可がないと・・・」
「“上”の許可?・・・その“上”がアレではないのか?」
そう言うとモニターをブリッツェンは指差した。“白いG”、“灰色のG”、“黒いG”、そして、“ナディア”。世界政府軍のGと戦艦だ。司令官は何も言えなくなる。
「“上”などもう何の意味もなさない。ただ、世界を破滅させるだけだ」
ブリッツェンは司令官に視線を移した。
「・・・このままではイングランド(ここ)は墜ちる」
司令官は顔を上げた。ブリッツェンの目を見た。
「・・・分かりました。ですが、“ヴィクトリア”は特殊艦です。操舵及び、火気管制等にスキルが必要となります」
「その点に問題は無い」
「え?」
ブリッツェンの言葉に司令官は首を傾げた。そう言うと、ブリッツェンは友子やシェリー、貴子、翔達に手を広げた。
「我々のクルーは優秀だ。存分に使ってくれて構わない」
司令官は彼らを見回した。彼らの目には自信が宿っているように思えた。司令官は頷く。
「分かりました。・・・では、どうするか・・・」
「ここの司令か君だ。君が人選して配置してくれ。・・・ここに押しかけて来たのは私達だからな。君の指示に従う」
そう言われて、司令官は頷いた。オペレーター陣に指示を出した。
「“ヴィクトリア”を発進させる!・・・クルーはブリッツェン以下そのクルー及び、ハシェス副官を呼んで来い!」
司令の言葉にオペレーターは耳を疑った。最高機密である“ヴィクトリア”を知らない男に、ましてや反政府軍にいた上に、傭兵に賞金も掛けられているのだ。そんなヤツに“ヴィクトリア”を任せる司令に反発の声が上がった。
「司令!こんな奴らに・・・」
「そうですよ!我々でもあれは動かせます!」
「静かにしろ!・・・我々はここを動くことは出来ない!彼らに任せるべきだ。・・・こちらからはハシェス副官を送る。彼女が監視の役割をする・・・それでいいだろう?」
司令官はオペレーターに言い聞かせるように言った。
「ですが・・・」
「彼らは信頼できる。・・・だが、このままでは・・・」

その時だった。オペレーターが叫び、サイレンが鳴り響いた。

「高エネルギー反応!!!・・・“ナディア”からです」
「“ミラージュ”か!?」
「カードオービット展開!!収束、“ミラージュ”を何としても防げ!!」
ロンドンの街にガード・オービットが射出され、ふよふよと宙に浮いている。司令は指示を出しながら、ブリッツェンに振り返った。
「あなた方は“ヴィクトリア”へ!搬入作業を急いでくれ!!・・・早く!」
「ああ!」
ブリッツェン達は踵を返して“ヴィクトリア”へと向かって行った。


「鷹山!!あれを観ろ!」
ジャックのスピルスがシエンを弾き飛ばすと、翼に向かって叫んだ。翼は“ナディア”の方に目をやると、“ミラージュ”に光が収束していた。翼は舌打ちしてその方向へと向かおうとするが、クリックスがその行く手を阻む。
「いかせませんよ」
「ちっ!!どけっ!!」
ブラック・バードは両手のブレードを展開し一気に斬りかかって行った。


「“F”!!」
「レッシュ!!間に合わない!!」
レッシュにEVEと“J”が同時に叫ぶ。
「ハッ・・・“Q”!“F”を“ミラージュ”の射線上に追い込むぞ!!」
「・・・わかった」
エネルギーライフルでレッド・バードは追い詰められ、“ミラージュ”の射線上に追い込まれた。それを見てイワサキはふっと笑った。
「上出来だ」

「3」

「ダメ!!レッシュ!!」
優美は桜の腕を掴んで叫んだ。優美の目が閉じられる。何も出来ない桜はただ、優美を見つめることしか出来なかった。
「・・・誰か・・・力を貸して」

「2」

「くそ!!間に合わねぇ!!」
翼は歯をかみ締めた。
「ガード・オービット、配置完了!!出力調整中!・・・間に合いません!!」
「間に合わせろ!!」
司令官がオペレーターに向かって叫ぶ。

「1」

「レッシュ!!」
EVEの悲痛な叫びが響いた。“J”のヴァリアルスが“Q”の乗る灰色のGを弾き飛ばす。
「“F”!!」

ブリッツェン達は“ヴィクトリア”に向かって走っていた。

イワサキは静かに告げた。

「撃て」

「ガード・オービット展開!!収束!!」

レッド・バードの周辺にガード・オービットが展開する。

レッシュは“ミラージュ”が発射口から放たれる瞬間を見た。眩しくて目を細める。
コクピットでは警報が鳴り響いていたのだが、レッシュには聞こえていなかった。
まるで、スローモーションのように感じる。


そして、“ミラージュ”迫りレッド・バードのコクピットのレッシュは強い光に包まれた。



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