もあ style

もあ style

moaのらくがき

私は目の前に座ってる人の手元を見つめていた。

それがこの夢の最初の記憶。

誰かにメールを送ってるのだろうか。
頭の中の言葉があふれ出す前に
携帯キーを押しているかのように
せわしなく動く指。
相手もすぐに返信してるのか
携帯の着信ランプがブルーに点滅する。
しばらくすると またせわしなく動く指。

私は汽車に乗っているようだ。
日が傾き始めた頃なのか
窓から差し込むオレンジ色がまぶしい。

進行方向の逆に座っているのだろう。
私は前に流れる 夕日に染まった景色を眺めるふりをして
向かい側に座っている人を見た。

指を口元に持っていき かすかに爪をかんでいるシルエットは
ほのかに笑みを浮かべながらメールを読んでいた。

どこに向かっている汽車なのか。
私はどこに行くつもりだったのか
まるで思い出せないけれど
西日に染まったその人の
うつむき加減の顔がとても印象的で
忘れられなかった。

たぶん大切な人とのメールだろう。
穏やかな優しい目をしたその人に
愛される人はきっと幸せに違いない。

名前も知らない 言葉も交わしたこともない
ただ乗り合わせただけの人の愛する人に
ちょっぴり嫉妬している自分に可笑しくなった。

そんなことをぼんやり考えていると
ふと その人が顔をあげた。

長い時間 見つめてしまっていたのだろうか。
あわてて私は目をそらしたけれど
一瞬だけその人と目が合ってしまった。

他人を見る目。

私は携帯の先にいる大切な人ではない。
汽車を降りた瞬間から記憶にも残らない存在になる自分。

夢から覚めたとき なんだか悲しい気分になっていた。


*********************************************


世の乙女たちに大人気の韓国人俳優がいるらしい。
空港にお迎えの様子がワイドショーでやっている。

私はそれを横目で見る。

まったく興味がない。

いつものように朝ごはんの片付けをし
仕事に向かう。

趣味の習い事の数々。
友達と飲みに行ってはバカ騒ぎをする。
時間があると本を読み
好きな作家を読みつくすとと古本屋でマンガを大人買いをしたりする。

特に何も不満がない日常。

毎日楽しく暮らしていると思う。


そんな日を過していたある土曜の夜、
テレビをなんとはなしに見ていた私は
そろそろ寝ようかとスイッチを消そうとしたとき
ちょうど例の韓国俳優が出ているドラマが始まった。

その人に興味はないけど
多くの人が興味を持っているということに
興味があったので 少しだけ見てみることにした。
続けて見るつもりは更々なかったので
あくまでも 少しだけ・・・

不思議なドラマだった。
内容もその人気俳優も特にいいとは思わない。
なのに続きが見たくなってしまう。
結局その日は最後まで飽きずに見てしまい
それからは土曜の夜が楽しみのひとつとなっていた。

そんな中、私はひとりの俳優に注目せざるを得なくなっていた。

それは乙女たちが熱狂している俳優ではなく
単なる脇役の俳優さんだった。
この人を見ているうちに役を飛び越えて
この人自身を見ているような錯覚に陥ってしまうのだ。

この俳優さんに愛される人はきっと幸せだろうな。
と 私は何故だかわからないけど そんな風に感じて
私生活では いるであろう恋人に嫉妬し
ふと昔に見た夢を思い出していた。


この人はあの時見た夢の人かもしれない。

名前も知らない、もちろん言葉をかわしたこともない
何も知らない人。
なのに 勝手に想像して勝手に嫉妬して
勝手に悲しんでいる。

生活ががらりと変った。

習い事をやめた。
飲みに行ってもつまらなくなった。
本を読む時間があったらパソコンを開き
この人のことを検索した。

名前を知った。
今までの活動を知った。
この人が書いているホームページも知った。

いろんなことを知るたびに
この人自身がわかるような気がしてきた。

きっと私は自分の直感を信じて
この人の愛にふれてみたくなってしまったのだと思う。

だけど遠くから見ているだけしかできない。
仕事を応援するしかできない。

絶対、携帯電話の向こう側の人にはなれない。

それでもいいからこの人をずっと見ていたいと思った。

新しい記事が出ればすぐパソコンをチェックして
新しい雑誌、CDが出ればすぐに買いにいく。

テレビや写真で見るだけでなく
目の前でしゃべってる姿や歌ってる姿も見た。
手にふれたことも私を見てくれたこともあった。

でも夢から覚めたら他人になってしまいそうで
悲しくなったりもした。


この人を見続けてどのくらい経っただろう。

器用だけど不器用で
優しいけれど冷たくて
雲の上の人なんだけど自分から近づいてきてくれて。。


もう充分 この人の優しさや愛はわかったつもり。


私に大切なものがたくさんあるように
私もこの人の大切なもののひとつになれたような気がする。


習い事を再開した。
友達と飲みに行く約束をした。
パソコンを開くより本を読む時間が増えた。



今日、新しいDVDが届いた。

彼が私たちにに向かって言う

『あいたかった~~~』


******************************************



夢を見た。

あの日の夢だ。

私は携帯をいじってる彼を知っている。
でも その人は私を知らない。

携帯の向こう側の大切な人へ優しい笑みを浮かべながら
愛を送っている。

わかっていても涙がにじんできてしまう。

彼が携帯をパタンと閉めて顔をあげた。
穏やかな優しい目をしていた。

そのとき私の携帯のブルーの着信ランプが光った。



『あいしています』




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