土曜日の書斎 別室

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ギャング ・ オブ ・ ニューヨーク

【土曜日の書斎】  名作断章




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(マーティン ・ スコセッシ監督作品 『ギャング ・ オブ ・ ニューヨーク』 )

  ゲティスバーグ会戦の勝利から十日後・・・。
  北部諸州の戦勝気分に冷水を浴びせる異常事態が ニューヨーク市内 で発生した。
徴兵制度 への反撥を起因とする、 住民による大規模騒擾・・・ 暴動 であった。

  規定の金額を支払う事で徴兵回避が可能な一部富裕層。
  その手段を持たない圧倒的多数の貧困層。
  ・・・殊に アイルランド系市民 達。
  徴兵免除を廻る 不平等 に加えて、 貧富の格差 人種差別 等・・・。
  社会の不合理は、 彼らの憤懣を募らせ、 その憤懣は、 あらゆる対象上に凝固した。

  鬱積する憤懣は、 是の日・・・1863年7月13日。
  マンハッタン地区の徴兵事務所で発生した騒擾を契機として、 一挙に爆発、 ニューヨーク全市を揺るがす大暴動へ発展する。
  暴動の渦は、 瞬く間に同地区全域に拡大。
  警察署 ・ 新聞社 ・ 兵器庫等が襲われる。
  マンハッタンは 無警察状態 に陥った。
  裕福な 英国系市民 の邸宅 ・ 商店が襲撃され、 徹底的な破壊と略奪を蒙った。
  又、 解放奴隷も襲撃対象となり、 多数の 黒人労働者 が殺害された。

  暴徒を鎮圧し、 市内の治安を回復する為、 合衆国政府は、 戦略単位の軍隊を投入しなくてはならなかった。
  鎮圧軍は、 マンハッタン攻囲の態勢を完了すると、 海 ・ 陸から猛攻撃を開始し、 暴動は発生四日目にして鎮圧された。
  犠牲者数千数百名。
  逮捕者は数千名とされている。



ギャング ・ オブ ・ ニューヨーク

(1863年7月13日)




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( 『ギャング ・ オブ ・ ニューヨーク』 )

  マンハッタンの下層社会 ファイブ ・ ポインツ を支配する暴力組織 ネイティブ ・ アメリカンズ
  その首領 ビル ・ ザ ・ ブッチャー (ダニエル ・ ディ ・ ルイス) に、 父親を殺され、 復讐の機会を窺うアイルランド系青年 ・ アムステルダム (レオナルド ・ デカプリオ) 。
  人心を収攬する能力に長けた彼は、 アイルランド系市民を糾合し、 ネイティブ ・ アメリカンズに対抗する組織 デッド ・ ラビッツ を結成。
  ビルに挑戦状を叩き付ける。
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  ・・・アムステルダムとビル。
  1863年 7月14日
  遂に、 対決の時を迎える二人であったが・・・。
  13日発生した 徴兵暴動 は市内全域に拡大。
  両者の抗争は、 その渦乱に呑み込まれてしまう。

  更に、 鎮圧軍の砲火が、 暴動と無関係の二つの徒党集団の上にも、 容赦なく降り注ぐ。

  十数年来の怨憎も・・・。
  個人の野望も、 欲望も・・・。
  歴史の巨大な渦流は一呑みにし、 粉々に押し潰してしまうのである。



  マーティン ・ スコセッシ監督が三十年来抱懐して来たとされるモチーフの映画化作品。
  流石に大作の風格を感じさせますが・・・。
  アムステルダムの父親・・・ ヴァロン神父 (リーアム ・ ニーソン) は、 アイルランド系移民の集団 デッド ・ ラビッツ のリーダーでしたが、 ビルとの対戦に敗れ、 非業の最期を遂げてしまう。
  アムステルダムの幼少時の出来事で、 彼は、 その光景を眼前で見ています。

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  その後、 孤児院に放り込まれますが、 辛くも 脱走
  以来 臥薪嘗胆 十六年間・・・。
  ビルへの復讐の念を胸に、 成長を続け、 ファイブ ・ ポインツへ舞い戻った訳です。
  彼は、 素性を隠し、 今は裏社会の顔役と成っているビルに接近。
  持ち前の才気と度胸で、 その信頼を勝ち得ていく。
  全ては復讐を果たす為です。

レオナルド ・ デカプリオ は、 貴種流離譚 の主人公にはピッタリなのですが、 復讐譚 と成ると些か迫力不足ですか。
  ハッキリ云って、 ダニエル ・ ディ ・ ルイス に喰われてしまっていますネ。
  それ程ルイス演じるビル ・ ザ ・ ブッチャーの印象は強烈です。
  悪役演技の強烈な人なら幾らもいるが、 是は類型的な悪役じゃない。
  人間としての深味を感じさせ、 この深味に、 アムステルダムも何時しか魅かれていく。

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  この作品の場合、 キャメロン ・ ディアス との恋愛模様は、 必ずしも重要では有りません。

  ビルとアムステルダム。
  男同士の緊張関係だけで、 押し通すべきじゃなかったでしょうか?
  女性を介在させて、 三角関係にする必要性は全く有りませんでした。









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