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今日は久しぶりにピアノの話題に触れようかと思います。ちなみに、これを書くのは非常に迷いました。おそらく、長くなるから(^^ゞ私がピアノを習い始めたのは、そもそも自分で希望したわけじゃなかったんです。ピアノは生まれた時から家にあって、遊びで触ったりしていたんですが、幼稚園に入ったあたりから音符の読み方から母に教わり始めました。そのうち、両手で弾けるようになるんですが、好きではなかった。もともとバレエが習いたくて、母と教室を見に行ったりしたんですが、いい教室は遠くて断念。そんな小学生のある日、学校から帰ったら母から突然「明日からピアノの先生につく事になったからね」と言われました。ピアノが好きではなかった私は「嫌だ」と泣きましたが、結局そのまま習う事になりました。習い始めて、ブルグミュラーとトンプソンとハノンとツェルニーをやり始めたんですが、曲数が多く、ハノンとツェルニーは全然面白くなくて練習する気ゼロ。それでも母に強制的に毎日1時間、ピアノの練習をさせられました。その練習とピアノの先生の上手い教え方のおかげかピアノの腕はめきめき上達し、小学校では全校生徒の合唱の伴奏をしたりしていました。中学に入り、中学でも合唱コンクールの伴奏を3年間弾き、音楽の授業ではこれまた伴奏をしていました。もはやピアノは私の特技となっていました。それでも、合唱コンクールの伴奏や授業の伴奏の練習は好きだったんですが、レッスンにもっていく曲の練習は相変わらず嫌いでした。そんなある日、レッスンで曲が上がって先生に「次の曲何にしよっか~??あ、そういえばショパンやってなかったよね。ショパンがいいかもね」と言われ、ショパンの曲をそれからしばらく数曲弾きました。皆さんのご想像では私はどういう演奏をするような感じにとられているのかわからないのですが、とにかく技巧的で速くて大音量で弾くような曲が得意なんです。器用なので指はかなり回り、門下で1、2番の指の回りだと言われるので、子犬のワルツなんか好きではなかったけど、凄い速さで弾いてました。ところが、ショパンを弾いて数曲目に、ある短調の曲をやってこいと言われました。それはとても哀しい雰囲気の曲で、私はせいいっぱい悲しみを漂わせて曲を持っていったんです。でも、弾き終わった後の先生の言葉は、「ん~~~やっぱり沙羅ちゃんにはこの曲は合わなかったね~ショパンってね、好きな人の髪の毛を日記に挟んでひっそりと持っていたような人で、やっぱりそういう部分が出て欲しかったんだけど、、、沙羅ちゃんのはやっぱり元気がいい感じに聞こえちゃうね~」。この言葉にとてもショックを受けました。私はとてもとても悲しみを出したつもりなのに元気に聞こえるなんて!結局、その次の曲は革命にされてしまいました。でもそれ以来ショパンを「苦手~~~!!」「感情がつかめない~」と意識するようになり、ピアノも嫌になり、受験も重なり、結局人生ではじめて、レッスンを3年休みました。ところが不思議なもので、あんなにずっと弾いていたピアノから遠ざかってみると、無性にピアノが恋しい!!嫌だと思ってたけど、私はやっぱりピアノが好きなんだ!と感じ、それ以来とてもピアノを愛するようになりました。最初は一人で練習をしていたんですが、やっぱり先生が必要だと思い、先生のところにも戻り、またレッスンしていただける喜び、またピアノが弾ける喜びをかみ締める毎日。でも相変わらず、ショパンは苦手で弾きませんでした。アシュケナージのコンサートやイングリット・フリッテルのコンサートはショパンばかりでしたが、「わ~凄~い」と思って聴いているばかりで「いい曲だな~」と思う事は殆どなく・・・。それからしばらくして、フランス・イタリアに旅行に行きました。以前にもイギリス・イタリア・ドイツに行った事はあり、バッハの生家まで行ったのに、その時は特に何も感じませんでした。ところが、今回のフランスは、妙に私に合っていたんです。秋でしたが、澄んだ空気、遅い夜明け、不思議な町並み、湿気がない事による花々の色の鮮明さ、美しい紅葉―。色々なものを吸収し、帰国してから、私はとてもフランス人作曲家の曲がわかるようになったんです。特にドビュッシー。もともと好きだったんですが、弾いていると、ああ、フランスのああいう感じ、、、と曲の中に入っていけて。。。ラヴェルの水の戯れなんかもとてもよくわかる。とにかくフランス人が作った曲は詩的。曲に限らず、私の好きな画家、ユトリロの絵も詩的。旅行でフランスの空気を感じた事により、とても身近なものとなったんです。きっとこれこそ、たくさんの音楽家・画家の卵達が海外に留学する最も大きな理由なんだろうな、と感じました。確かに有能な師につくため、というのもあるのだろうけど、やっぱりその作曲家が生まれ育ったり住んでいた町や国に行ってみるととても理解しやすくなるんだと思います。で、フランス人の描写がかなり理解できたのですが、その成果の最も大きな部分が、歌うこと。ガンガン弾く曲は少なく、逆に静かな曲が多いけれど静けさの中に陰影をつける、というか。。。これがとても得意になったんです。だからこの前弾いた版画の中の「塔」も凄くつかみやすかった。感情表現が自分でもかなり成長したと思うし、先生にも言われました。これがきっかけでショパンを弾く気になりました。ピアノを再開して、ピアノを愛しいと感じはじめ、練習が「やらされる」ものではなくなってから、ショパンの曲を「なんていい曲なんだろう」としばしば思うようになりました。昔はただガンガン何も考えずに弾いていただけの曲も、本当はダイナミックに弾く中に叙情的に歌い上げる部分が入るんだという事にも気付きました。長くなりましたが、今はまずショパンのエチュードから練習し始めています。長かったです。私のショパンを本当の意味で弾きはじめるまでの道。この調子でいつか最も苦手・理解不能なバッハも克服したいです。そして精神的に成長したらベートーヴェンにも手をつけたい。まあ、今のトコロ私が最も弾きやすく、本能的に合ってるな~と感じるのはラフマニノフとドビュッシーなのですが( ̄ー ̄;
2005年11月06日
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