ピッピの行くとこ!

その2~12:00以降~


12:00以降

さて、そろそろ第1部出演者が楽屋入りします。

ここで、今回の演目をざっと書いておきますね。

第1部
◇◆『白雪姫』◆◇

第2部
<バレエコンサート>
◇◆『レ・シルフィード』より◆◇
◇ワルツ
◇マズルカ
◇プレリュード
◇ワルツ
◇アダジヨ
◇グランワルツ
―――――
Aクラス~Eクラスまでの小品集(15曲)

第3部
◆『白鳥の湖』より第1幕パ・ド・トロワ
◆『ラ・シルフィード』
◆『スターズアンドストライプス』より

◇◆『パキータ』◆◇より
◇アントレ
◇バリエーション1~5
◇フィナーレ

第4部
◇◆オーロラの結婚◆◇
キャスト
オーロラ姫(ピッピ)
フロリマンド王子
王様・王妃
フロリナ王女・青い鳥
リラの精
妖精たち
宝石
白い猫・黒い猫
赤頭巾と狼
貴婦人


前リハ(うちのスタジオでは『前日のリハーサル』の意)のタイムスケジュールでは、13時より第1部の場当たりが開始ということで、その1時間前には出演者は楽屋入りしているはずです。

お昼を食べた私は、さっそく各楽屋を回って、「ポーズ写真」のポーズ付けをして回ります。

あっ、そうそう、前リハなんですが、私のパートナーの男性はきません(泣)
なぜなら、彼はこの日、他のスタジオの本番だったので…。
前リハでパートナーと組めないことなんてめったにないんですけれど…かわりにK先生が踊ってくれるとのこと。。。

そして、そして、時間はあっという間に13時15分前。
そろそろ、進行役のIKさん(ラ・シル踊る子のお母様で、以前は一緒にお稽古してました。私とも仲良しです)、袖付きのミサとミエ(ミサは高校3年生、ミエは中学3年生。二人とも受験のために今回の発表かは出ませんでした。ミサは本当はオーロラを踊る予定でした…)の3人と打合せをしたいんだけど…
IKさんはきてるのに、ミサとミエがきてなーーーい!!

まぁ、いいっか。打合せといっても、そんなにない。
「出はけ」はほとんど下手だし、上手から出る子はもうみんなしっかりしてる子ばかりだから問題ないし。

………なぁ~んて甘いことを考えてた私は、この後とてつもなくハードな展開になるとはまったく予想していなかったのでした~(苦笑)
そうなんだけどさ…実際問題として、二人が来てなかったんだから、仕方ないよね…。

さて、『白雪姫』の場当たり開始。

実は今回の発表会のハードルはたくさんありまして…その一つが 『作品一つ一つの時間が長い!!』 ということ!!
白雪姫だけで1時間強あるのです!!
一場一場出演者が変わるので…大人だったら袖で待っていられるだろうし、楽屋帰ったとしても出番を把握しておいてくれるだろうけれど、子供達はそうも行きません。
ここは進行のIKさん、楽屋付きの役員の方たちときっちり打合せしておく必要があります。

ピッピ「まず、袖にはいるのは、鳩、花、妖精、こまどり。鳩、花はお城の庭の場面が終わったら楽屋待機。お化けが出てくるあたりで、動物たち…りす、うさぎ、こじかは袖下待機。妖精の踊りで袖内待機。森の場面が始まったら小人が袖入り。森の場面が終わったら、小鹿以外は楽屋待機。継母がリンゴもって出たら、楽屋待機者全員袖下待機!カーテンコールに出るのとは逆順に袖入れていくから。楽屋でモニターをきちんとチェックしておくこと!」

その場で指示だして…みなさん一斉に( ..)φ( ..)φ( ..)φメモメモメモメモメモメモ

場当たりは忙しい…場当たりって音をかけずに立ち位置だけチェックしていくこと。
進行と袖付きは係の人に任せて、私は舞台で動かないといけません。
子供たちは…特に初めての子は…舞台に出るだけで固まって動けなくなってしまう子もいるので、ガナリ(客席からマイクを通して舞台上の人に指示をだすこと)にあわせて、立ち位置を直していかないといけないんです。
これだけならまぁ簡単な仕事なんですが…

順調に進んでいく場当たり。

今度は音を入れての通し稽古です。

『白雪姫』のハードルは、ずばり「場面転換」。
幕で仕切らず、場で仕切るので、場面転換をする際には「斜幕」を下ろすんですよね。
この斜幕が降りる位置を、小学生にもなればきちんと把握していてくれるんですが、就学前の子供達(初めての子が多い…)には難しい。
斜幕が降りるシーンには見ていてはらはらドキドキ…でも、うまくいきました。

10分間のインターバルを挟んで次は第2部。
この時点で私、2時間立ちっぱなし…どころか動きっぱなしって事実…。
問題は第2部のバレエコンサート…。
『レ・シル』の間はちょっとお休みできます。
場当りと音出しでだいたい40分くらいでしょうか。
今思えば、この間に打ち合わせしておけばよかったんですが、一番大変だと思ってた『白雪姫』が案外平気だったので、私は本部で少し休憩したあと、もう一度軽くバーレッスンをしました。

そして子供達の小品集。
・これは白雪姫の時と違って、一曲一曲、出はけの指示をしていかないといけない…。
・板付き(暗い中で舞台に出てポーズすること)の子の位置を決めなくちゃいけない…。
・最後「はけ」で終わる子達は、もう一度レベランス(お辞儀)で舞台に出さないといけないので、袖の浅いところでストップかけて、またださせないといけない…。
・しかもこの日初袖付きだったミサとミエにも指示をださなければいけない…。
・場当りは立ち位置なおさないといけない…。

これをぜーんぶ広い広いひろーーい舞台+袖(浅いところ~奥まで)の上で一人でやるのってけっこう大変なんですよ?

例えば、たいていの踊りはレベランスをするので、下手の前からはけてきます。
「こっちにはけてくるんだよー!奥までいって!最後まで!!」とかジェスチャーします。
けれど、次の踊りは下手の奥から出る!ということになると、急いで奥の袖まで行って指示!
この子達が踊っている間に、次の曲の子に「この幕からでて、出たらオレンジのライトがあるからそこまでいって止まるんだよ」などと指示。
そうこうしているうちに、舞台に出ている子たちがはけてきて…
袖と袖の間にいると、他の袖の動きがまったく見えないので、確認するだけでも一仕事!!
「出はけ」の指示だけでもミサとミエがきっちりやってくれればいいんですが、初めてなので上手くできません。。。初めてじゃね…仕方ないよね…
初めはいいけれど、だんだんと私の動きにもタイムラグが出てきます。

ガナリ(E先生です)「次の曲行きますよ~。あれ?でてこない?どうしましたか~?」

ピッピ「今でまーーす!!」

舞台監督(以下舞監)「ちゃんと出さないと、時間押すよ」

ピッピ「はい!」

ガナリ「ピッピせんせーい!!キャルショーツってみんなありましたか?あとタイツ、色の違う子がいるんだけれど?どうしたの?」

ピッピ「確認しまーす!続けてくださーい」
ここでさらに問題発生!!スタジオで貸し出したキャルショーツ(タイツの上に履くピンクのパンツです)もってない子がいたんです。
さらに、タイツがベージュの子がいる…普段、稽古ではいいんですけれど、舞台稽古ではNG!
進行のIKさんに、楽屋付き役員と副責に無線で問い合わせてもらう。
なかなか回答がない。
そうこうしている間に、場当りは続き…
IKさん「ピッピ先生。なんかみんな持ってないみたい。。。」
なんと6人も持ってない!「もらってない!」と主張している…。
ピッピ「えっ?うっそー配ったよ、確実に!私とE先生で渡したんだもん!なんでないんだろう…忘れたとしても、もらってないわけないんだけど…」
そうこうしている間に、場当りは進み、「ないないキャルショーツ事件」にちょっと注意を
そがれた私は出はけ指示がおろそかに…。
とうとう舞監がマイクで…
「助教師の人!!ちゃんと立ち位置なおしてしてあげないと!子供は言葉だけ言ったってできないんだから。ちゃんと集中して!」

かっちーん!!
あのね、マイクって、楽屋のモニターで聞こえるんですよ。
全生徒聞いてるんですよ…。
これじゃまるで私がボーっとして仕事してなかったみたいに聞こえるじゃないっ!!
それに、何で私にいうのよっ!一応、袖つきはミサとミエだっての!!聞いてないのか?!
だいたいE先生に言われるならまだしも、なんで舞監に言われなくちゃいけないのよ!!そんなこという舞監他にいないわよっ!!
と、後から怒りはこみ上げてきましたが、この時は自分の失敗で迷惑かけてしまったことのほうが悔しくて…必死でした。

怒涛の第2部が終わり、その後第3部、第4部へ行く前に全体の「カーテンコール」のリハーサル。
カーテンコールって、演目がぜーんぶ終了した後のお辞儀のことです。うちのスタジオは出演者が全員出ます。(お教室によっては、前半に踊る小さい子達は、終わった順から先に支度させて帰してしまうところもあるようですね)
このカーテンコールは、私の意見で、かなり前々からリハーサルしていたので、今までになくスムーズに済みました。

いよいよ、第3部…『スターズアンドストライプス』は私も踊ります。。。
えぇえぇ。。。この時点で6時間以上たちっぱなし、走りっぱなしの私の脚…大丈夫なのぉ~!!

しかも、これ書いてて思い出したんですが、この数日間、私は胃の調子が悪かった。
加えて気管支喘息もこじらせてた…
アーンド、腰の調子も悪かったんだった…。

胃薬、気管支拡張剤(吸入と錠剤)、痛み止め(バファリンだな)そして、リ○ビタンD!

これ全部胃に入れたんですけれど、ごめんなさい私の胃袋ちゃん!って感じです(苦笑)

自分の衣装に着替えて、髪飾りをつけて、袖へ入ります。

【私の袖待機の日需品】
・フリースの敷物(120cm×120cm)…床に敷いてそこに座ってストレッチできる!脚を休められる。お尻も冷えない!
・パーカー…私の愛用はナ○キのナイロンパーカー。薄手なんですがあったかい!しかも汗吸ってもすぐ乾く!衣装の上からはこういうバサーっときられるものの方が便利!
・レッグウォーマー…脚の付け根まである一番長ーいもの!これは出る直前までつけてます。脚を冷やすと、踊っている途中で、急にずどーんと重くなります。だから絶対に、下半身だけは冷やしちゃダメ!
・飲み物…私はいつも飲み物置いておきます。幕物の時は特にはけている袖にいる時間も長いので。でもトイレに行きたくなると困るので、飲みすぎは注意です。


「スターズ…」の前の「パ・ド・トロワ」「ラ・シルフィード」と演目が進み、私たちの番。
こんなにこの一日ずっと袖にいたし、舞台の上も駆け回ってたのに、トゥシューズ履いて舞台に出るのはこのときが初めて。
普段稽古しているスタジオは、床が板の間で松脂をつけて踊っています。
そのため、リノリウムの感覚をつかむまでに、時間が少しかかります。
「スターズ…」のコーダ…私とエリがタンルベアラベスク、グリッサード、アッサンブレで勢いよくでていく!!
が…


コケッ



なんと、なんと、リノにつっかかってつまずいちゃいました(汗汗汗)
んで思わず、踊りながら

「こけちゃった…てへっ」


とつぶやくと、その声がエリに聞こえたらしく

ぐふぅぅ


と吹き出しておりましたwww
あとで文句言われたけどね…ピッピちゃん笑わさないでよっ!!って(笑)

出来栄えはといいますと、まぁいいんじゃないですか?!

振付けたK先生からも「スターズ…」は「眠り…」のウォーミングアップのために作ったからって言われてたし、本当にそのつもりで楽しく踊ってしまいましたよ。


問題は最後の『オーロラの結婚』(いわゆる『眠り…』ですね)

相手の男性がいないってことで、代わりにK先生が踊ってくれます。
私としては、けっこう上手くできたつもりだったんですが、あとで客席でガナリしてたE先生にダメだしされました…
「力みすぎ!」
って…
もうずっとパートナーの男性としかあわせてなかったので、K先生とはタイミングが合わないところもたくさんありました。
K先生は「まぁ、クリ先生となら大丈夫だろうけども…」って。

しかし、板の間のスタジオと違って、リノは摩擦が大きい!!
つまり、プロムナード(日記の動画「ちょっとだけパート4」でしている動きです)や回転技が、いつもどおりにはなかなか行かない。
失敗はないもののやりづらい。
この感覚、なんとか早くなれないといけない…。

そんなことを考えていたらふとINさんと目が合いました。
INさんとは第2部の「レ・シルフィード」で主役の方です。
40代の大ベテランで、海外留学してたこともある方です。
INさんの旦那様は元力士。引退して接骨院を開業してます。
開業する前は、別の場所で雇われていたんですが、私が小さい頃何度かお世話になりました。
INさんとも、働いていた医院で知り合ったそうです。
私の曾祖母も、祖母も医院ではお世話になっているし、実は私の実家(理容店)のお客さんでもあるので、昔からよく知っている人なんですが…

ピ「やっぱりリノだと、体が回っていかないね…」
と、目が合ったのでなんとなく話しかけると…
INさん「そうだねぇ~。 ピッピちゃん体力なさそうだし…

本日2度目の かっちーん!!

この時点で、私、8時間以上たちっぱなしの、はしりっぱなしの、オドリッパナシデス。

かなり身も心もボロボロ…。
表情には出さないようにしようと思いつつも、出てしまってたんだと思う。。。

でもね、今日は出演者の中では誰よりも早く(先生なんだから当たり前なんだけどね…)楽屋入りして、仕事しながら頑張ってたわけですよ。
舞台監督にも怒られつつ…悔しい思いもぐっとこらえて…。

それでも、リハとはいえ踊りきった私。。。
自分の「責任」を今日一日きちんと果たした私。

体力なさそう?!そんなセリフ絶対に言われたくないっ!!

っきぃぃーーーーー!!悔しいわっ!


そうは言ってもINさんは、プライベートな付き合いをするととってもいい人なんですよ。
ただ、この舞台に関しては、E先生、K先生、Y先生の間でも評判のよくない行いが目立ってて…。
この日も前リハなのに、遅れてきてバーもしないでバレエシューズでパ・ド・ドゥ踊ってたし。
事情があるのはわかるけれど、主役で…芯で踊る人がそんなことではいけないと思う。
私も何度も主役こなしてきてるけれど、でも主役だからこそ、周りのソリストやコールドがついて来てくれるように、認めてもらえるように、誰よりも努力しなくちゃ、きっちりやらなくちゃって…思ってるんですけれどね…。
IN さんも以前は違ったんだろうけれど、今回はそういう「無責任」な態度がとても目立ってしまったんですよね。

そんな話も聞いてたものだから、なおさらカチンッ!と来たわけです。。。



すべてのリハを終え、実家の両親に車で迎えに来てもらい、(スタッフへ支給されたお弁当はお持ち帰り♪)自宅まで帰りました。

22時です。
次の日も早いので、お風呂に入ってすぐに眠らないといけないのですが…

この日は夫と一緒にお風呂に入りました。
お風呂で温まって体をほぐしているうちに、気持ちが少しだけ緩んで、どんどん弱音が出てきます。
とりわけ、舞監にいわれたこと、INさんに言われたこと…
その理不尽さ。

以下はその日の日記です。

『明日はいよいよ本番です。』

現在、もうすぐ午前1時。
本当なら早く寝なくちゃいけないところですが、どうしても書いておきたくて。いろいろあったりもして、こんな時間になっちゃいました…。

今日の舞台稽古。

主役を踊りつつ、そのほかにもう1曲作品もあり、1部と2部では袖付きという裏方仕事もあり、前日当日はハプニングも多々あって、E先生の片腕どころかE先生の次にすべてを把握しているのは私しかいないので、E先生の代役をも勤めなくちゃいけない。

舞台稽古は私自身生徒のために駆け回り、方々へ指示を飛ばし、いろんなことに対処して、自分のこともきっちりやらないといけません。


きっとありがたいことです。
これだけの大役を、手放しで私を信用していただいて任せてもらっているんですもの。
きっとありがたいことなのです。

しかし、力の及ばないこともたくさんあって、舞台監督には袖付きで怒られるし、レ・シルで主役踊る人(プロダンサーを目指して留学経験もある人だけど、結局普通の主婦になった)には、ものすごく腹の立つ一言も言われました。

正直、本当にすごく悔しくて、どちらの出来事もものすごく理不尽な思いでいっぱいになりました。
悔しくて、ついさっき、夫と一緒にお風呂入りながら、不覚にも泣いてしまいました。


自分の出番の前に、すでに疲れきった様子の私をみてE先生が
「試練だな」
と一言言って去っていきました(苦笑)


そう、試練です。

悔しい!
という思いに負けそうでした。

こんなに頑張ってるのに…と言い訳してしまいそうでした。





明日は、頑張ります。
精一杯、裏方も完璧に、踊りも完璧に。

人に言われたことで悔しいから頑張るのではありません。
悔しくてへこんで頑張れなくなるのも、悔しいから頑張ろうと思うのも、それは自分の感情に負けてしまうことです。

この数年、精神状態が悪くなってから学びました。
悔しさを衝動にすることは、結局、自分で自分をコントロールできずに、感情に負けてしまうことなんだって。


私は、自分のために頑張ります。
自分の気持ちに素直に、率直に。

自分を取り戻せる気がするのです。

以前、大事なものを、力ずくで、無理やり奪われてからわからなくなってしまった自分自身。
ずっと、自分ではどうすることも出来ない精神状態の中で、苦しんでいました。


でも、今回はやっと自分の踊りが出来そうなんです。
自分が取り戻せそうな気がするんです。

試練です。



一度はプライベートで自分を失い、その後の舞台で自信も失いました。
えぇーい。舞台で取り戻すしかないでしょー!!
待ってろよ~!


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