PR

×

コメント新着

masashi25 @ コメント失礼します☆ ブログ覗かせてもらいましたm(__)m もし…
美歩鈴 @ Re[1]:【アシュ千】 発熱 その3(終)(12/02) あやめのめさん  どうやって自分の感…
あやめのめ @ Re:【アシュ千】 発熱 その3(終)(12/02) アシュヴィンもっと素直にならないとダメ…
美歩鈴 @ Re[1]:【アシュ千】 発熱 その1(11/30) あやめのめさん  あやめのめさんが思…
あやめのめ @ Re:【アシュ千】 発熱 その1(11/30) 確かに、アシュが不機嫌になると一番の被…

キーワードサーチ

▼キーワード検索

2009年11月07日
XML
 あかねの異変を最初に気づいたのは友雅だった。
 寝む前はいつもと変わらぬほの温かい体が、目覚めたときにはぽおっと熱を帯びていた。息づかいも少し荒く、明らかにあかねは、病んでいた。

「あかね……?」

 額に手を当てれば火のように熱い。手を打って女房を呼び寄せた。

「いかがなさいましたか。」

 いつも側近くに控えている少納言の君がすぐさま駆けつけてきた。友雅が掲げた御帳台の帳から漏れる空気がただならぬことを、少納言はすぐに覚ったようだ。すぐに御格子を上げ、あかねの傍へ寄った。

「お熱でございます。すぐにお薬湯と冷たい水を。」

 お殿様はいかがなさいますかという問いに、文の支度をと答えた。出仕など休むつもりだった。

「友雅……さん?」


 苦しげに眉を寄せて目を開けたあかねを、友雅はそっと抱き寄せた。

「寝ていなさい。すごい熱だよ。」
「うん……」

 熱で潤んだ瞳を、あかねは友雅に向けた。友雅の顔が心配げにゆがんだ。

「お仕事……」
「今日は君の傍にいるよ。こんな君を一人で置いてはおけない。」
「ダメだよ、お仕事休んじゃ……友雅さんが休むと、中宮様にわかってしまうでしょ?」

 確かにそうだと友雅も思った。大事になるのは本意ではない。しかし、あかねのことも心配で堪らなかった。
 曇る友雅の頬に、あかねが手を触れた。じっとりと汗ばんだ熱い掌を、友雅はそっと外し、両手で包み込んだ。

「大丈夫だから……少納言がいるから。」

 言い出したらきかないあかねのこと、友雅は仕方なく起きあがった。その気配を察したか、外で控えていた少納言が帳の隙間から薬湯を差し入れてきた。あかねの背に手を添えて起きあがらせ、薬湯を口に含ませた。苦さにあかねはぎゅっと眉を顰めたが、友雅が優しく背をさするのに励まされて飲み込んだ。

 額に冷たい感触。少納言が冷やしてくれているのだろう。あかねはそのまま、また眠りに引き込まれていった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 促されて出仕はしたものの、仕事など手につくはずがない。
 幸いお召しもなかったので左近衛府に控えてはいたが、取り立てて何かすることもなければ、あかねの病状ばかりが気になるのは仕方のないことだ。
「北の方の容態は」は、文を出す。「お変わりございません。」と少納言のそっけない返事。変わりないのはよいことだが、文使いが往復する間に何か変事はとまた気になって、すかさずまた文を書く。返り事に無事を確かめて安堵し、また文を……



 文使いが悲鳴を上げた。さしたる距離ではないが、しきりの往復は人目に立つ。友雅は苦笑して筆を置いた。

(まったく、私らしくないと人が笑う。)

 龍神の神子を得てから人が変わられたと。よいのか悪いのかは未だわからぬが。

「お召しでございます。」

 御前へという使い。友雅は「仕方ないねえ」と腰を上げた。




「神子殿が病んでおられるとは本当か、友雅。」

 情報の早さに友雅は面食らった。間者でも放っておいでなのだろうか。
 御簾の向こうに静かに座しておいでなのは藤壺中宮だろう。おそらく、六条の女房の誰かから土御門へ、土御門から宮中へと、女房の情報網で伝わったに違いない。朝起き抜けにくしゃみをしたら、出仕した先で「お大事に」と労られたという冗談のような話があるほどだ。

「さすがでございます。隠し事などできませんね。」
「いかがなのか。お悪いのか。」
「安心できる者に任せておりますから。その者が『大丈夫』と太鼓判を押しております。」

 御簾の向こうで小さなため息が聞こえた。少納言はいつだかあかねについて参内したことがあったから、中宮も見知っていた。

「私と中宮から、見舞いの品を。そして、友雅はもう下がってよい。神子殿についていてあげなさい。」

 神子殿が本復されるまで出仕は必要ないと言われて、友雅は嬉しいような照れくさいような気分だった。広盆に山と積まれた薬草を押し頂いて、友雅は御前を辞した。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 体温計などない時空で、体温など測る術はないけれど、少納言が額の布を取り替える早さで、あかねは自分の熱を測っていた。

(すぐあったまっちゃうんだ……)

 なら、微熱どころではあるまい。神子の仕事をしていた頃、頼久の風邪がうつって一度だけ熱が出たことがあったけれど、今度はそれくらいでは済まないらしい。しかもあれは……

 思い出して、あかねは更に身内の熱が上がる気持ちだった。初めてのキス。友雅はそれを知っているからもう何も言わないけれど。

(だめだめ。)

 かなり熱が高いのだろう、横になっていても体がふわふわする。とろとろとした眠りがあかねを包む。心地よいような……どこかに引き込まれそうで怖いような。

「神子様……」

 懐かしい声が耳元で聞こえる。

「藤姫ちゃん、来てくれたんだ……」
「ええ、神子様がお加減悪いと聞いて。」

 友雅殿も間もなくお戻りですわと聞いて、あかねはふうっと力が抜けた。強がって出仕させたものの、やはり、あかねは友雅に傍に居て欲しかった。間もなく戻ってくるということは、藤姫の元から内裏へ知らせが行ったのだろう。中宮様に聞こえてしまったけれど、友雅を下がらせるためにと藤姫が考えてくれたのならそれはそれで嬉しかった。

「あかねちゃん、大丈夫?」

 厨から詩紋のプリンが届いた。それをお口直しにお薬湯をと少納言に言われて、あかねは渋面を作った。でも、藤姫にも見守られていてはがんばるしかない。永泉から届いたという薬湯を、あかねは顔を蹙めて飲み干した。詩紋のプリンが今までで最高に甘かった。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2009年11月07日 18時43分10秒
コメント(0) | コメントを書く
[遙かなる時空の中で] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: