直子の直筆

直子の直筆

2019年01月12日
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「家庭の事情で、退職することになりまして・・・」



と言ったとき、その場にいたパートの中で私一人だけ 「えっ!?」 と声を上げてしまった。

この一年、彼の言動を観察してきて、最初はその仕事のできなさに腹を立てていたのだが、あるとき「これは発達障害だ!」と気がついた。

周りだけが迷惑をこうむっていると思ったら、本人もまた悩んでいることがわかったからだ。

しかも子供のころから悩んでいるというから確定的だった。

しかし、医師でもないのに私が診断をくだすようなことは言えないし、かと言ってこのままでは周りも、そして本人も不幸になる一方だ。

そこで、店長にはそれとなく「一度、カウンセリングを受けたほうがいいと思いますよ」と言ってあった。

時を同じくして、私が本社に提出した質問状について、営業部長が店に回答にきてくれたことがあり、2人だけになったときに店長の障害の可能性について説明した。

すると部長は「発達障害」という言葉すら知らなかったが、かつて店長と一緒に仕事をした経験があったため、思い当たるふしもあってか「あとで調べてみるよ!」と言って帰って行った。

部長の話では「これが本当なら、来期の人事にも影響する」と言っていたので、私の中では高い確率で店長が異動になることを予想していた。

それが、いきなりの退職。

人事部から何か言われたのか、カウンセリングで障害の診断を受けたのか、ホントに家庭の事情なのか。

朝礼のあとしばらくして、仕込みをやっている私のところにやってきた店長。

何を言うのかと思ったら



「娘さんに支払わなくちゃならないバイト料なんだけど、今回はあなたの有給を使う形で合算して振り込むことにしていいかな?」



というので、



「どういう形でも構いませんよ」



と返答すると、いつもの2割くらいの笑顔で



「じゃ、それで」



と、店長室へ戻って行った。








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最終更新日  2019年01月12日 17時25分24秒


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