ナラティヴ ひとり語り

ナラティヴ ひとり語り

・・・「五味太郎の音の絵本」



 小学校の3年生より上の学年で絵本を読み聞かせる時は、子ども達に選んでもらうようにしていた。多数決で選ばれた方を読んで、時間のある時には選ばれなかった方も読む。そして2冊とも読み終えてから、もう一度「どちらが良かったか」手をあげてもらう。すると、最初の印象で選んだものより、選ばなかったものの方が良かったという結果になることもある。こんなふうに選んでもらうことで、最初の印象や多数の人の判断が必ずしも正しいとは限らないということを身をもって体験することができる。今回は、読む前と読んだ後の結果が全く逆になった2冊の絵本を紹介しよう。五味太郎の音の絵本『ビビビビビ』と『どどどどど』。
 『ビビビビビ』の表紙には電気に感電したワニの絵が、『どどどどど』には黒の地面にピンク色のブルドーザーが描かれている。この表紙絵と題だけで、どちらを選ばれるだろうか?この時、3年生の子ども達は全員『ビビビビビ』を選んだ。ところが、どちらも読み聞かせて「どっちが好きだった?」と尋ねると、今度は全員が『どどどどど』に手をあげたのだ。
 さて、『ビビビビビ』は電気が「ビビビビビ」と色んな動物をびっくりさせていく絵本だ。近頃は誰もが人に無関心になって、子ども達もあまり取っ組み合いのけんかもしなくなったのではないだろうか?そんな子ども達の間で、指先で「ビ」とお友達にふれる“ビビビビ遊び”なんかが流行ればいいなぁと、ひそかに期待してこの絵本を選択肢に入れたのだった。
 『どどどどど』の方は、ブルドーザーが石ころを運んで山を登って行く。表紙の絵は地味だが、途中の展開が面白いのだ。ブルドーザーが崖っぷちまで来たところで、「この後、どうなると思う?」と子ども達に尋ねると、「落ちる」とか「もと来た道を戻る」とか色々答えてくれる。実は、この後ブルドーザーは「みふぁみふぁそらそら」と空を飛ぶ。この全く思ってもみなかった展開に子ども達は大いに盛り上がる。ブルドーザーは今度は岩壁にぶつかる。「この後どうなる?」と又尋ねると、「力つきて、落ちる」等と答えが返ってくる。しかし、ブルドーザーは岩壁に穴をあけてまっすぐにつき進んで行くのだ。そして、おしまいに「どしらそふぁみれどじえんど」と小屋の中に入っていく。そう、この黒い地面は音符を書く五線紙で、ブルドーザーは音符だったのだ。
 “予測する”というのは高度な頭の働きだと言える。けれど、子ども達は頭を働かせることが好きだ。常識では考えられない答が待っているとなおさらだ。まるで、作者の五味太郎は子ども達と発想の豊かさを競い合っているように思える。
 選んだり予想したりすることで、こんな短い絵本の読み聞かせでも、とても楽しい時間になるものなのだ。

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