ナラティヴ ひとり語り

ナラティヴ ひとり語り

・・・『大おばさんの不思議なレシピ』



 柏葉幸子=作・児島なおみ=絵『大おばさんの不思議なレシピ』は中学1年のちょっと不器用な女の子、美奈が主人公だ。
 美奈が大おばさんのレシピに従って手作りすると不思議な世界へ呼び寄せられる。そして、作った物は本来の使われ方とは違った使われ方をする。例えば,クレープは魔女のパックに、ショウガ湯は姫君の目覚まし薬にという具合に・・。美奈が不思議な世界へ出かけるごとに一話、二話と話がまとまり、全部で四つの話が載っている。そのうちの「姫君の目覚まし」を中心に紹介しようと思う。
 美奈が母親の為にショウガ湯を作ると、不思議な世界の派遣人ドクムマからの呼び出しをくらう。今回の行き先は、“おとぎ話の舞台裏”。ここは,自分の出ているおとぎ話を子ども達が読んでくれるのを待っている登場人物達のいる舞台裏なのだ。美奈の任務は「眠りの森の美女」の主人公、寝起きの悪いオーロラ姫を起こす事。ところが美奈は、オーロラ姫の隣のベッドで泣いているアリサ姫とも関わってしまう。このアリサ姫は、悲しい結末で誰も読んでくれないというお話の主人公だった。
 作者の柏葉幸子という人は、子どもにはどんなお話が良いかという事をよく分かっている人だなぁと思う。このお話の中で、美奈にアリサ姫の登場する悲しいお話をハッピーエンドに変えさせてしまう。それで、めそめそ泣いて塔から身を投げるはずのアリサ姫はロープにしがみついて塔から脱出する事になる。
 一見、おとぎ話のお姫様達は何もしないで王子様が助けてくれるのを待っているだけの様に思えるが、実際はそう気楽ではない。白雪姫等も掃除、洗濯から料理まで一所懸命やらなければならないし、いばら姫にしても、いくら魔法をかけられたからといって、百年も眠り続けるのは容易な事ではない。ラプンツェルに至っては、塔に閉じ込められた状態で子どもを身ごもり、荒野で双児を産んでは育てるという強かさを持っているほどだ。このラプンツェルのお話で塔から身を投げるのは王子の方なのだった。
 この本の主人公の美奈も、不器用ながらも持ち前の負けず嫌いとおせっかいをフルに発揮して、不思議な世界の様々な問題を解決していく。小学4,5年生から中学生、大人まで。特に女の子にお勧め。
 同じコンビの作品に、
『ドードー鳥の小間使い』、『とび丸竜の案内人』がある。いずれも偕成社から。

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