*mypace*

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2007.06.19
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「じゃあ、獄寺君と山本は雲雀さんのこと頼むね」
「任せて下さい、10代目!」


切羽詰まっているこの状況は理解できている筈なのに、ツナの出発の合図と共に山本はぼんやりと昔のことを思い出していた。
昔と言っても、それはつい半年前くらいのこと――――





* * *




ふと見上げると、晴れ渡った青空が彼らを包み、眩しい太陽が道行く人々をじりじりと照らした。その満面の青の中に一際目立つ一本の線のような雲を見つけて、山本は優しく笑う。


飛行機雲は…獄寺みたいだと、咄嗟に感じた。


普段、夕日が完全に沈む頃校舎を後にする山本にはあまり味わうことの出来ない、空の色。朝ともまた違う、頬を焼くような空気、その中に小さく混じる風の音色。
あの時みたいにテスト前で部活停止、なんてことがない限りは、学校帰りにツナや獄寺と一緒にこの時間、この道を歩くなんて機会は与えられないだろう。
2日後にはテスト、部活も休みでグラウンドで走り回ることすらできない、そのことを考えると気分は盛り下がってはくるものの、そのお陰で帰りにこうして気の合う友人2人と肩を並べて歩くことができていると考えれば、低かった筈のテンションも右肩上がりだ。

汗を拭って少し顔を傾けると、同じく「あちぃ」と手のひらで顔を扇ぐ獄寺が横目に映る。


「ホント、暑いね…」
「ですよね!ハッ、10代目っ、扇いで差し上げます!!」
「えぇ?!そんな、いいよっ」


先立って言葉にしたはいいものの、獄寺は手ぶらだし、どうするんだと山本が疑問を口にすれば、獄寺は言葉に詰まって黙り込んだ。
それから続けて謝り倒す獄寺に、ツナは困ったように笑顔を返す。
そんな2人のやりとりを笑って見守りながらも、山本自身結構暑さを感じていて――――どうにかならないものかと、腕を組んで一人考えていた。



(う~ん。もっとみんな涼しくなるには…、……あ)



ちょうど立ち止まっていた場所の曲がり角からまっすぐ見ると、もう少し歩いた先に“アイスクリームあります”の文字があるのが目に入る。

「あそこ…」

昔馴染みの店という感じで、古びた建物が印象的だった。こんな場所にあんな古典的な店があったなんて…



「ツナっ、獄寺っ、アイス食おうぜ!」
「へっ?!山本??ちょっと待ってよ!!」
「え、10代目!!?」


突然走り出した山本を追いかけてゆくツナ。それに続き獄寺も、そのツナを視界から外すまいと追いかけ走り出した。






ソーダ味の棒アイスを買って満足そうに「く~っ、うめぇ!」なんて目を輝かせてる山本とツナとは裏腹に、むすっとした表情で煙草を吹かしながらその隣を歩く獄寺。「煙草吸ってっからいらねー」って言ってそっぽを向いてしまったから、てっきり食べたくないものだと思い込んでいたのに。
そんな機嫌悪そうにすんなら一緒に買ったら良かったのにな…と不思議に思ったところで、ふと獄寺の視線に気付く。視線の先は、山本の手にある…まだ買って間もないというのに暑さのせいで少し溶け始めていた、氷アイス。



「いらねーよ!!!」


山本と一瞬視線を交わした獄寺は、それに気付いてさっと目を逸らす。
どうにも彼は扱いにくい。少し言葉や行動は間違えるとすぐに猛スピードで走って消え去ってしまいそうな…そんな。


ああ、やっぱり――――


「やっぱ獄寺ってアレみたいだよな!」


山本が指差した先には、先程の彼が見たものとは多分違うもう一筋の飛行機雲。3人の視点は今、その一点に集中している。


「はぁ…?」
「ん?雲?」


2人が、また突拍子もないことを…とでも言うように山本に視線を送ると、山本はとりわけニコリと笑って説明を始める。感覚的すぎる説明に、獄寺は全くもってついていけてないようだったが、ツナにはそれとなく伝わっていたようで。ちらっと獄寺の方を見ると、すぐに山本の方に向き直って言った。


「う~ん…なんとなく、だけど…ちょっと分かる、かも」
「どこがスか?!!!」
「え、うーんと…ふわふわって浮かんでても、すぐ消えちゃいそう…ってとことか…」
「…ッ!オ、オレは、10代目を残して消えたりなんてしません!!」


どこか悲しそうな顔をするツナに、山本が失敗したかと頭を掻くと、獄寺はそんな彼を睨み付けた。
馬鹿なこと言ってんじゃねーと獄寺の目が山本に訴える。
苦笑いしつつ、山本は話を変えようと極力明るい声で呟いた。



「獄寺が雲ならさ、オレらは何だろう」


そう呟くと、不思議と本気で気になってくる。

(ツナは…花?うーん…何かそれもしっくり来ないし…街みたいな賑やかなもんでもねーよな?)

山本がそんな風に悶々としながら考えていると、獄寺が即答して返した。




「10代目は大空に決まってんだろ。オレらを正しい判断で導いてくれる10代目のでかさは空そのものだ」
「……ハハッ、そっか!そうだよな!ピッタリじゃねーか!」




「オレ達が雲と空なら…山本は…うん、太陽っぽいかも!」

山本や獄寺の話は早々に流し、そう呟いたツナは、もういつもの笑顔に戻ってて。大空のように優しい瞳で山本を見つめていた。うん、やっぱりツナは空だ。


「コイツが太陽ッスかぁ~~~?」
「ほら、すっごく眩しい感じしない?」
「オレにはそんな風には見えないッス…」
「他に例えるものも思いつかないし、山本は太陽ね!」



この頃はマフィアとかリングとか全然関係なくて、結局持ったリングは山本も獄寺も違う属性のものだったけれど――――きっとマフィアとか抜きにして3人でいる時は、この晴天の青空に属すかのような、暖かい役割をそれぞれに担っているのだろう。





* * *



その後、持っていたアイスの棒が当たっていることに気付いて、山本はそれを交換しに行った。ツナはもう一本食べるのかと怪訝そうにしていたけれど、山本がこそりと「獄寺の分だ」と言うと安心して笑った。
帰ってきた時には、獄寺は素直にアイスを受け取って…絶対跳ね返されると思ってた山本は面食らったように目を丸くする――――が、隣のツナの苦笑いを見て気付く。きっとあの時も、ツナが獄寺に上手く言って包めたんだろう。


彼らはその頃、確かに心から笑っていた。




(あぁやって皆が笑い合える日が、また戻ってくんのかな?)



いろいろあって、衝撃の事実を告げられて…何もなかったように今まで通り笑うことは、楽天的な山本にだってそう簡単にできることではなかった。

でも自分達は今、その笑顔を取り戻す為に動いているのだ。
未来のツナが、未来の獄寺が、未来の皆が、
未来の……自分が。

あの頃の笑顔のままでいられるように。




ツナは笹川や他の仲間が心配で、獄寺はそんなツナが大事で仕方なくて。


山本は……


そんな2人の力になりたい。


(その為には、進むしかねーだろっ)





「ほら、獄寺、行くぜ!」
「チッ、命令すんな!」





そう、前に、前に。

この先何があったって、後ろを振り返ったって。
前に進むことだけは忘れちゃいけないんだ。





***




最後の方だんだん飽きてきて文章適当になってきてるのが丸分かりだ…いつものことですが。
飽きるの早すぎだよね…絶対長編とか書けないタイプだあたし(苦笑)
ついでに言うと、獄寺さんがアイス買わなかったのは、お金がなくて買えなかったからです(爆)
常に金欠なイメージなんですよ、あの子。「げ、65円?!」が印象的で忘れられなくて…(笑)
一人暮らしは大変!





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xxx那由xxx @ wave&riverさんへお返事 お久しぶりです~~~!!! コメントあ…
wave&river @ お久しぶりです! お元気そうで何よりです~(^^) あち…
xxx那由xxx @ masashi25さんへお返事 訪問&書き込みありがとうございました(…
xxx那由xxx @ のんのんさんへお返事 そうなんですよ~! や、通路側じゃなか…
xxx那由xxx @ のんのんさんへお返事 でこ出し確かに可愛かった…!!(^◇^) …

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