りらっくママの日々

りらっくママの日々

2007年04月01日
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カテゴリ: 自作小説
ショートストーリーで、自作小説を書きました。
前編と後編に分けてあります。
前編は 昨日の日付 に書かれていますので、先に読んで下さい。
後編は、二つに枝分かれしてみました。
まずはA、次にBのエンディングにお付き合い下さい。



ブログ物語:後編
********************

(後編A)
ルパンのブログもそうだが、自分が見るブログは、
どこかしら、自分が興味を持っている内容が書かれているものが多い。
コメントも、どこかしら優しい。
ブログを書いている人はたくさんいるが、
やはり、類は友を呼ぶではないけれど、
自分の周りにも、自分と気が合う人が集まっているということなのだろうか?

ネネがそんなことをフッと考えた時、ブログの画面が揺れた気がした。
何?
ネネが更新のボタンを押すと、そこは自分の管理画面ではなかった。
良く見るとそれは、いつも行く、
家を建てていることを書いている男性のハンドルネームが書かれた、
ブログの管理画面だった。

「ママ、オナカすいた~。」
リンが服をひっぱっている。
「はーい、今作るからねぇ」
もう一度画面を見ると自分の管理画面だった。
何だろう、さっきの?
管理会社の不具合とか?
ネネは気になりつつも画面を切った。

昨日のアレは何だったのだろう?
そう思ったものの、自分のブログを書いているうちに忘れた。
そうそう、薬を飲むの忘れていたなぁ。
ネネは、持病の薬を飲んでいた。
でも、最近は調子が良いような気がする。
これも、ブログを始めたせいからか。

もう飲むのめんどくさいし、調子も良いし、お金もかかるし、やめちゃおうかな~。
ネネは薬をいきなりやめるのも怖かったので、夜だけ飲むことにして、
徐々にやめていくことにした。

今日のブログを書き込み、楽しみにしている他のブログへ行こうとしたその時、
いつもと違う、自分のものではない管理画面が現れた。

そこは、ネネに優しいコメントをくれる、女性の管理画面だった。
ネネが更新を押すと、
次に表れたのは映画の紹介をしてくれる男性の管理画面、
次は子供とのことを書いているお父さんの管理画面。
次は料理が上手なお母さん、
ゲームが好きな男の子、
音楽を紹介してくれる高校生、
写真が好きな男性、
小説が好きな女性、
面白い画像を紹介してくれる男性…。

様々なブログ管理画面が表れ、最後にルパンの管理画面が表れた。

今日の日付の日記が書かれている。
”ネネさん、もう大丈夫でしょう?”

「ああ、そうだったっけ…」
ネネが呆然として振り返る。
後ろには、リンをダッコした夫が。
「どうした?ネネ?
…それとも 今はルパンなのかな? それとも違う誰か?」

「ううん、今はネネよ。
もうきっと、誰にもならないわ。」
うつむく夫。
「ごめんな。オレがあの時あんなに仕事が忙しくなければ…
4年前のオマエが一番大変な時期に…。」

「大丈夫だから。ルパンもそう言ってるわ。
今日、お別れの管理画面が出たの。」

ネネは夫と息子にそっと抱き寄った。
夫が涙を流していた。
ネネも涙がこぼれた。
でも、もう大丈夫。
みんなが大丈夫だって言っている。
外には桜のつぼみが開き始めていた。

終わり


(後編B)
ネネは、ルパンにメッセージを送った。
「ルパンさんは、私の夫の若い頃と似ています。
うまく説明できないんですけど、感想とか、考え方が。」

ルパンから返事が来た。
「そうなんですか?じゃあきっと面白い人なんでしょうね!(笑)」

ますます昔の夫のようだ。
ネネは、あの頃のドキドキした気持ちを思い出していた。
夫から誘いの連絡が来ると、仕事が終わるのが待ち遠しかった。
携帯のショートメールでは、冗談が絶えなかった。

「実は私も遠距離恋愛してたんです。今の夫と。
7年前に、夫と結婚することになり、今に至っています。
ルパンさんの恋愛が成就するといいですね!」


ネネはルパンとのやり取りを楽しみにするようになった。
夫には悪いが、ドキドキした気持ちが昔に返ったようで嬉しかった。
ネネはどうやら恋をしてしまったらしい。
でも誰に?
会ったことのないルパンが、若い頃の夫とダブる。
最近、夫は息子に夢中だ。

ルパンはそのうち彼女、クラリスとのことを書かなくなった。
でも、最初のうちは、こんなことが書いてあった。
「neneさんと話していると、彼女といるみたいです。」

その夜、ルパンからメッセージが来た。

「ネネさん、どうやって旦那さんは、neneさんのハートをゲットしたんですか?
実は、先程、彼女と久しぶりに会って、帰り際、彼女が泣き出してしまったんです。
でも、電車のドアが閉まってしまったので、どうにもできなくて…。
ショートメールをすぐに出したんですが、返事が来なかったんです。
以前もこんなことがあって、その時は返事が来たのに。
このままでいいのか迷っています。」


ネネは、自分と夫とのことを思い出していた。
あれは、結婚を決めた日だった。
ホームにいた。
自分は帰りの電車に乗りこんだ。
また離れるのがつらかった。

思わず涙がこぼれてしまったけど、心配をかけるのが嫌で無理に笑顔を作った。
「どうして泣きながら笑うの?」
と、心配そうに夫が言った。
「ううん。何でもないの。」
その瞬間にドアが閉まった。
電車が駅から離れていくと、携帯が鳴った。
夫からのメッセージだった。
”ダイジョウブ?”

”ダイジョウブダヨ”
そう書いて送った。
”モウ、ハナレテルノガツライ”
次に、そう入力したものの、送るのを迷った。
消そうとした時に、乗客がネネにぶつかった。
「あっ。」
その拍子に送信ボタンが押された。
自分の駅に帰った時、ネネは電話をしてみた。
「…ごめんね。」
「何で謝るの?」
「何となく…」
「…」
「どうしたの?」
「オレさ…、電話じゃ嫌だったんだけど。 …結婚しよう。

これがきっかけだった。
あの時に乗客がぶつかっていなかったら、ネネは間違いなく電話をしなかった。
ルパンの彼女が自分のように思えた。

「私も、同じようなことがあったんです。
あの時、返事を出したので、夫から電話が来て結婚することになりました。」

うまく書けたかわからなかったが、ネネは返事をすぐに書いた。

数日後、ルパンからメッセージが来ていた。

「結婚することにしました!
neneさんのメッセージが来なかったら、今頃すれ違ってしまっていたと思います!」

ネネは自分のことのように喜んだ。
が、続く文を読んで驚いた。

「実は彼女の名前は ネネ っていいます。
なので、neneさんとメールをやり取りすると、
彼女の気もちを教えてもらっているような感じがしてました。
30歳になる前に結婚を迷っていた時期があって、
それが、neneさんの結婚を決めた時期と同じです。

neneさんは今、旦那さんと幸せそうな感じですよね。
僕もあの時に結婚をしていれば、そんな家庭が持てたのではないかと思いました。
今、決めてみて本当に良かったです。ありがとうございます。」


ネネは、不思議に思った。
あの時、ぶつかっていなかったら、私も結婚していなかったかもしれない。
でも、結局は遠距離恋愛を続けて、夫と結婚することになったのかもしれない。

しばらくして、ルパンからメッセージが来た。
結婚したらしい。
「5月25日に結婚しました。」
ネネは驚いた。
それはネネが結婚したのと 同じ日付 だった。

偶然って、あるものなんだ~。

ルパンのブログは相変わらず、感想や面白かったことの紹介、
仕事で思ったことが綴られていた。
しばらくしてまた来たメッセージに驚愕した。
「息子が生まれました。リンって名前です。4月15日生まれです。
あの時のメッセージのやり取りがなかったら、授かってなかった命です!」


ネネはリンと言う本名を ブログに載せていなかった 。誕生日も。
恐る恐るメッセージに返事を書く。
「おめでとうございます。私の息子もリンって言うのが本名なんですよ。
誕生日もいっしょです。
まさかと思いますが、ルパンさんの本名は、ユウヤって名前じゃないですよね?」


返事はすぐに来た。
「そうです…。」

ネネは数日迷って、メッセージを書いた。
「では、お願いがあります。どうか、息子さんを大事にするのと同じように、
奥様のことを大事にしてあげて下さい。
そうじゃないと…」

ここでネネは書いて良いのか、また迷った。
「奥様の気持ちは貴方から離れます。」
リターンボタンを押そうか迷っていた時に、リンの蹴ったビーチボールが手にぶつかった。
「あっ。」
送信されてしまった。

いつもそうだな、私。
ネネはため息をついた。

その夜、夫が花とケーキを買って帰ってきた。
「何で?今日って何の日だっけ?」
「結婚を決めた日」
日付はネネ自身も忘れていた。
ルパンには、その時の出来事を送ったくせに。
ちょっと涙が出た。

ネネはその晩珍しく、夫と映画を観た。
付き合っていた時のように、手を握りあった。
以来、ネネは夫と映画を観るようになった。
心の空虚感は、いつの間にか無くなっていた。

ネネはルパンのブログを覗く。
今日は珍しくルパンの家族のことが書いてあった。
向こうの世界でも夫は幸せらしい。
そして私も。

ネネは微笑んで、今日も自分のブログを書いた。

終わり。

************************
実は、後編のAはフィクションなのですが、Bは、ほぼ実話です。

最近、ふと思いついて、
ルパンさんに、私たちに起こった、この不思議な話を載せてもいいか、メールしてみました。
ルパンさんは快く了承してくれたので、
この小説をブログに載せることができました。

最後まで読んで下さってありがとうございます。





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最終更新日  2007年04月01日 02時12分17秒
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