りらっくママの日々

りらっくママの日々

2009年08月25日
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今日の日記



「ある女の話:アヤカ6」



珍しくタカダくんが絵を描いていた。

先生が自由に絵を描くアトリエみたいにしてる教室で、
モチーフを置いたり、
テーマを言ったりするだけで、
後は生徒の感性に任せていた。

先生は今は美大の受験生のフォローが忙しいらしくて、
受験さんたちの部屋へ行くことが多い。
私とタカダくんだけが今日は小さな一般用部屋で絵を描いていた。

「う~ん。いいね、いいね!いいよ~!
はい、追求!」

そうオジイサンに近い先生はカメラマンのように言って、
足りないとこはもっと影と光を見るように…と言って去って行く。

私はだんだん光が変化していってしまったことで、
今日はもう無理だと判断した。
外が暗い。
や~めた。

「あれ?帰るの?」

「うん。もう今日はこれ以上は無理そう。」

「俺もそう思ってた。
ねえ、良かったらいっしょに帰んない?」

「うん、いいよ。」

正直ちょっと驚いてた。
タカダくんがそんなこと言ってくると思わなかった。

「相変わらず、タカダくんはすごい絵描くね。」

「そう?俺はアヤちゃんの色の感じが結構好き。
何でこういうセツナイ感じ出せんの?」

「何?何かセツナイ?」

私は片付けながら笑った。
タカダくんの筆の使い方とか、センスのがよっぽどスゴイんだけど。
タカダくんは専門に入ってから、もっと技術も身につけた感じがした。

でも、何だろう?
何か惹かれるものがある。
うまく説明できないのがもどかしい位だ。

あ、でも多分、
私は上手く口にできないことを、
絵で描いてるような気がする。
それをタカダくんもしているのかもしれない。

そう思ったことは話さなかったけど、
絵や学校の話をしながら自転車を押して帰った。
学祭の感想とか。

途中で自動販売機があって、
飲物をタカダくんが奢ってくれて、
川辺のベンチで飲むことにした。

「あ~。何か同じ女でもアヤちゃんといると楽。」

「何ソレ?失礼じゃない~?」

ははってタカダくんが笑って、私も笑った。

「ね、彼女できたんだって?」

私がそう言ったら、タカダくんが赤くなった。

「え、あ、うん…。
何?ヨッちゃんから聞いた?エリちゃん?
まーいいけど…。」

「そんなのさっきの発言でバレバレじゃん。」

「あ、そっか。
あ~、何か俺ダメだ。マジで。」

「何言ってんの?
何がダメなの?」

「うん、あのさー、誰にも言わないでよ?
何か最近彼女がさ、
俺が彼女のことホントに好きじゃないとかってウルサイんだよ。
俺そういうの、よくわかんねー。」

「淋しいんじゃないの?
ちゃんと構ってあげてる~?
って、彼氏がいない私が言うのも何だけど。」

「ウッソだ!
ヨッちゃんが言ってた。
アヤちゃん、エリちゃんと同じバンドのメンバーとどーこーって。
俺のことばっかズルイじゃん。
教えてよ!」

「えー?!
何で私のことになるの~?
だって、たいしたこと何も無いし~。」

「ホントに無いの?
何にも?
デートとかしてない?
いろいろあるでしょ?」

「じゃあ、タカダくんが教えてくれたら教えてあげるよ!」

「うわっ!ズリぃよ!それ!

ホントに、教えてくれる?」

「タカダくんがいろいろ教えてくれたらね~!
何?何?彼女とどこまで行ったの~?」

「えー、あー、あのさー、
上手くできなかったんだよね。」

はい?

私は一瞬固まってしまった。
てっきりデートどこに?って話かと思ったのに。
そんなの私より先輩じゃん!

「あ、何だよ?引かないでよ!
俺だって、マジで困ってて…。
ってか、やっぱ嫌がったらやめた方がいいよね?
友達がさ、そんなの根性無しだって言うんだよ。
でもさ、俺、そんなムリヤリみたいなのヤダなーって。」

「わー!わー!ごめん!ストップ!ストップ!
わかんない!
私マジでわかんない!」

「え…」

タカダくんが固まった。

「ホント?だって、彼氏いたでしょ?」

「いたことあったけど、そこまでしてないって言うか…」

顔が火照ってるのがわかった。
ってか、なぜ私はそんな話をタカダくんにしているのでしょう?

「あ…ゴメン。
ほんと、ゴメン。
変なこと言っちゃって。
でもさ、アヤちゃんがどこまで行ったとか言うから…」

「え、あの…
デートどこに行ったかなって。
ごめん。紛らわしい言い方した…」

ぶはは!ってタカダくんが笑い出した。

「やべー、アヤちゃんカワイー!お子チャマ?」

「ムッカつく!デートくらいするでしょ?」

「するよ~。どこまで行ったの?アヤちゃん?」

「…ゆうえんち」

タカダくんがゲラゲラ笑ってた。

「何よー!行かないのー?」

「行くよ!行った!行った!
でもさ、思い出したけど、それって、俺たちも行ったよね?」

「あー、行ったね。
みんなで自転車に乗って。
エリんちがフリーパス持ってて。」

「そうそう!ヨッちゃんがトイレに行ってる隙にさ、
呼び出しアナウンスしてもらったじゃん?」

「あはは!迷子です~!ってやつね?
覚えてる!覚えてる!
あれ、可笑しかった~!
ヨッちゃんがキョトンとしてて!」

二人でその時の思い出をしゃべって、ゲラゲラ笑った。
ふとタカダくんが私の顔を見て止まった。
私も何だか止まった。

でも、タカダくんはすぐに目を逸らした。

「帰ろっか。
アヤちゃん、進展あったら教えてよ。」

「えー。もうヤダよ~!
タカダくんこそ、上手くできたら教えてね!」

タカダくんがバツが悪そうな顔をした。
私はとりあえず、何か女の子の立場を考えて言った。

「嫌がったらやらなくて正解だと思う…。」

「でも、我慢できなくなったら?」

「知らない~!自分で考えて!」

「わかんないから聞いてんじゃん!」

「好きだったらやっちゃっても許してくれるよ!
きっと!多分!どうかな?」

タカダくんは少し嬉しそうに笑った。

「ありがと、アヤちゃん。言いにくいこと教えてくれて。ごめんな!」

「貸しね!貸し!
今度何かもっといい物奢ってもらおうっと!
でもやっちゃったら、フォローしないと嫌われるよ。多分。」

「きっと?」

「どうかな?」

二人で顔を見合わせて、照れ臭くて笑った。

でも、こんな会話できるようになるなんて思ってもみなかった。
ちょっと楽しいし、面白かった。

でも、ちょっと帰ってから、あ~あって。
タカダくんの彼女が羨ましくなった。
あんなふうにいろいろ彼氏が考えてくれてて。

聞いてた通りだ。
ホントだ。
ラブラブじゃん。

それだけなのかな?
そうなんだと思う。
あと、置いてかれたような淋しさ。

きっと。
多分。
どうかな…









続きはまた明日

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最終更新日  2009年08月25日 23時20分47秒
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