りらっくママの日々

りらっくママの日々

2009年09月06日
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今日の日記




「ある女の話:アヤカ19」



付き合ってた…ってした方がいいのかな。
俺、もう逃げちゃうんだし。
向こうもそれわかってるし。」

「は、ハードそうな話ですね。」

「あ、やっぱ引いたね。
んじゃ、やーめた!」

「あ、嘘嘘!聞きます!聞きます!
どうしたの?」

先を促したら、
今度は話すのを躊躇し始めた。
私は話すのをじっと待ってて、
タカダくんはまたビールを飲んで、
勢いをつけたのか話し出した。

「いやさ…。
最初はそんなつもりなかったんだけど、
たまたま課題出しに行ったら泣いてて、
で、話聞いて、
そのうち気付いたら好きになっちゃってて、
子供がいるのも、結婚してるのも知ってたんだけど。」

「うん…それで?」

「彼女が俺にのめり込んできちゃってるのがわかって、
俺も彼女にのめり込んじゃって、
でも、彼女がそのせいで、
子供や家をちょっとないがしろにしちゃってて、
俺はどうしていいのかわからなくなって、」

そこでタカダくんは大きくため息をついて、
またビールをゴクゴク飲んだ。
これ下さい~!って、通りかかった店員に、
何かまたお酒の注文をした。

「彼女が泣くと、どうしていいのかわからなくなる。
まだ学生だし、
逆の立場なら、奥さんにそんなことされたら嫌だし、
やっぱ、ちょっとビビッてきたんだよ。
好きなのか、同情なのか、愛情なのか、肉欲なのか、
この気持ちが冷めちゃったりした時に、
子供は一体どうすりゃいいのかとか、
いろんなことが回っちゃってさ。」

私はそんな話を聞いてたら、酔いが回らないよ。
追加した食べ物とお酒が来た。
今度は熱燗。
もしかして、強いな…。

「そっか…。
それは確かにヘビーだよ。
どうしていいのか、わからないね。
かなり真剣だったんでしょ?
その感じだと。」

「そうかもしれない。」

「でも正直重たいんだ?」

「うん…。」

「仕方無いって思ってもいい?」

「そう思う?」

「うん。思う。
状況聞くだけで逃げたくなる。
でも、好きな相手のためならガンバりたくもなるだろうし。
なってみないとわからない。
好きになっちゃうと、どうしようも無いから。」

「そうだね…。」

私もチューハイをゴクゴク飲んだ。
何だか飲んでるのに頭が冴えてる。

「アヤちゃん、俺怖いよ。
人好きになって、
気持ちをコントロールできなくなるのが、すごく怖くなった。」

「うん。
そだね…。」

私はそこまで好きになってたんだっけ…?
でも、
自分が自分じゃなくなっちゃったような、
ドロドロした嫌な自分を見たことならある。
だから、そういうこともあるだろうと思った。

「だから、この街離れる。
卑怯だってわかってるんだけど、
俺やっぱりまだ…」

「うん…。」

タカダくんが顔を上げて、
気遣うように私を見た。

「アヤちゃん…
引いてない?
俺のこと嫌いになったでしょ?」

「ううん…。
大丈夫。
ちゃんと終わらせるんでしょ?」

私はタカダくんを元気づける言葉を探す。
その女の人にとってはヒドイかもしれないけど、
私には関係無い人だし、
恋しちゃったら、世の中のルールが通用しないこと、
薄々わかってきてた。

「何でタカダくんは、
そんな重たい恋ばっかしちゃってんだろねぇ。
まだ21でしょ?
ムリだよ…
本気になる前に何とかできなかったのかな…って、
何だか気の毒になってきた。」

「同情でもしてるの?
ってか、同情されるような立場じゃないよね。
でもさ、モラル的に間違ってたとしても、
心に響かないようなら、こんなことしてないよ。
俺やりたいこと他にもあるし…
正直、こんなことに悩みたくない…。
でも、止められなかった自分に自己嫌悪だよ。」

タカダくんはうつむいて、
酔ってるのか何か考えてるのか、
テーブルを眺めた。

私も何て言っていいのかわからなくて、
そんなタカダくんを眺める。
そしてタカダくんが言葉を続ける。

「めんどうだよね。
こういうの。」

「楽しい恋するんじゃなかったの?」

「う~ん。
そのつもりだったんだけどね。
バカだな。
あ~暗いな。暗い。
でも、聞いてもらって、スッキリした。
ゴメンネ!」

タカダくんは結構ヘロヘロになってきてた。
あ、コレはすぐに帰るのマズイかも…って思った。
親が心配しないように適当に理由つけた電話をかけて、
トイレから戻ってきたらタカダくんは突っ伏してた。

そのまま寝かせておいたら、
そろそろ閉店なんで…って店に言われた。
コラコラ、帰るよ~ってタカダくんに声をかける。

「ん…」
って、タカダくんはフラフラ。
仕方が無いから自転車を置いて、
肩を貸して、歩くことにした。

でも重たい。
どうしよう。

「家あっちの方だよね?」

「ん…」

タクシー乗るつもりだったのに…。
どうしよう。タカダくんの家、ちゃんと知らない。
ヨッちゃんかエリを呼ぼうかと思ったけど、
結構遅い時間だったので躊躇する。

「置いて…帰って。」

「そんなワケ行かないよ。」

私は悩んだ。
このままだとタカダくんは道端で寝る勢いだ。
寒い中捨てておけないし、
ホント悪酔い。

ああ~、もういいか。
重たい。
私も酔ってるし、めんどくさい。

ピカピカと、
ラブホテルの看板が目に入った。








続きはまた明日

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最終更新日  2009年09月06日 19時08分38秒
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