りらっくママの日々

りらっくママの日々

2009年09月15日
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今日の日記




「ある女の話:アヤカ28」



何をしていいのかわからないらしく、
タカダくんはお母さんに、
「何か手伝いましょうか?」って言い出した。

「タカダくん、お嫁さんじゃないんだから~」
「座ってなよ~」

照れたように、
お父さんの側でチョコンと座ったタカダくんは、
お父さんの勧めでビールをお互いに注ぎだした。
タカダくんが結構飲めるとわかって、
お父さんはちょっと気を良くしている。

会社はどう?
デザインの仕事なんだってね?
いつか戻ってくるんだよね?

ようやく慣れてきました。
でも先輩の補助って感じです。
はい、5年ほどで戻れるって話です。

二人でそんな話をしているところに兄夫婦がやってきた。
2歳になる兄の子供は、今がヤンチャ盛りで、
緊張した場を和ませてくれた。

歳が近い兄が加わったことで、
話も男同士で盛り上がる。
同じ小中学校だったから、先生の話とか。
タカダくんは質問に答えつつも、
兄の子供と目を合わせて遊んでいた。

子供が好きなのかな~って、
その様子を見て思った。

やっぱりいきなり結婚の話は言いにくいんだろう。
お父さんとタカダくんはガブガブ酒を飲んでいた。
タカダくんを気に入ったのか、
「泊まっていけば~?」って言い出した。

いや、流石にそろそろ…って感じで、
私が助け舟を出して、帰りを促した。
初詣行ってくるね~とか言って。

玄関までお父さんとお母さんが私達を見送ってくれた。

「また気軽に来て下さい。」
お父さんがタカダくんに声をかける。

「はい。
宜しくお願いします。
あの…」

「うん?
ああ…。
いいよ、いいよ、わかってるし。
俺堅苦しいの苦手だから。」

「あ…。
はい。
ええと…。
でも、なかなか来れないんで、
やっぱりちゃんと。」

タカダくんはキチンときょうつけの姿勢をとった。
みんなその雰囲気に呑まれて、
真面目な顔になった。

「アヤカさんと結婚させていただいても、よろしいでしょうか?」

あはは、酔っ払ってるくせに堅い日本語、
って私は思いながらも、
深々とおじきをするタカダくんの姿は嬉しかった。
お父さんが笑う。

「あはは~。
ちゃんとした子だね~。
参ったな。
うん、まあ、アヤカのことヨロシクね。
いつ持ってってもいいから。
アヤカ、俺が止めても勝手にキミのとこ行くって言ってるし。」

今度は私が赤くなった。
お父さんの肩を叩いて、
あはは、って笑って誤魔化す。

タカダくんはホッとした様子で笑った。
また飲みましょうってお父さんが言って、
タカダくんがお願いしますって頷いた。

家から離れて角を曲がると、
タカダくんがふう~って息を吐いた。

「ゴメン、脱力。
公園で休んでいい?」

私は笑ってタカダくんの肩をさすった。

「次はアヤちゃんの番だよ。」

タカダくんが私の目を見て言った。


タカダくんちは弟が二人いて、
流石にタカダくんと言うと弟二人も振り向いてしまうので、
「ヒロト」と呼んだ。

「兄ちゃんがこんなに早く結婚するとはねぇ~。」

「オマエのが早いじゃん。」

真ん中の弟にヒロトが小突いた。

「まあ、うちはこんな感じで男ばっかだし、
私もまた一人娘が出来て嬉しいから、
気楽に仲良くなって行こうね。」

サバサバした感じのお母さんが言った。
うちの母親といっしょで、まだ仕事している人ならではの、
慌しい感じを漂わせていた。
お父さんは口数が少ない。

次男のお嫁さんは髪は茶色だけど、おとなしい優しい感じの美人で、
私の方を見て、ニコリと笑った。
1歳ちょっとの女の子をダッコしている。
デキちゃった結婚だそうだ。

う~ん、緊張。
ヒロトが言った手前、私も覚悟を決めた。

「あの…
ヒロトさんと結婚させて下さい!」

みんなが目を丸くして、
笑い出した。
ふつー男が言うんんじゃない?
とかって言って。

「私の代わりに、この子の尻叩いて、
バンバン真面目に働かせてちょーだいね!」

お母さんはそんなことを言って、
私の肩を叩き、つまみを出してくれた。
ここのお寿司は美味しいんだよ~とかって言って、
食べて食べてと勧める。
お父さんが笑ってビールを注いでくれるので、
一杯だけ付き合った。

アヤカは弱いから、あんま飲ませないでよ、
って、ヒロトが言うと、
アヤカだって!アヤカだって!
と、下の弟がからかう。

これからもヨロシクね~って、弟たちも私のコップに注ぐ。
私はお母さんたちにビールを注ぎ、義理の弟にジュースを注いだ。

体育会系の部室のようで、
とても賑やかだ。
この下の弟のお陰で、
気分的に助かったことが多いって、
ヒロトが言っていた。

お互い、家庭の内情を聞いていたけど、
明るい雰囲気に拍子抜けした。
うちもだけど、
ヒロトの家も子供が気を遣ったりして何とかなったのかもしれない。

こっちでは、ちゃんと結婚の具体的な話が出た。
私のボーナスが出てから辞めるとか、
お互い親戚が遠いし、お金もそんなに無いから、
身内だけでささやかな式にしようとか、
そんなこと。

お互い親が一度は結婚式経験があるからか、
どちらもそんなに自己主張してこなかった。

うちの親は、座らせてくれて、
ちゃんとしたもん食べさせてくれればいいって言ってた。
この前イトコの結婚式が立食パーティーだったので、
懲りたらしい。

そんなんでいいのかね?
ちゃんとした披露宴とかは?
って、タカダくんの母親が言ってたけど、
私はいいですって言った。

会社で友達に呼ばれたキチンとした式もステキだったけど、
私は、お祝いさえされれば何でもいいと思っていた。

それともちゃんとした式をやった方が離婚したりしないのかな?
でもまあいいや。

うちの親だってちゃんと式してないけど、
何とか険しい山をくぐりぬけてる。
形じゃないと思うけど、
形が必要だからするってことみたいだから。

タカダくんが帰る前の晩は二人でホテルに泊まった。
結婚情報誌なるものを買ってみた。
とんでもなくお金がかかることにビックリした。

「そっちの会社の方ではやらなくていいの~?」

「下っ端だから、もう地元でやっちゃいましたでいいよ。
どうせ、こっちに戻るんだから、こっちだけで。
お互い、親も仕事あるしね。」

「何だかメンドーだね。籍だけ入れちゃうんでいっかー。」

「俺はそれでもいーけど…
アヤちゃん、それフツー男が言うんじゃないの?」

「男から言われたら怒るけどね!」

あはは~って二人で笑う。
でもドレスとか見たら気が変わるかも~とかって言って。

二人で雑誌の式場や店をピックアップする。
多分一人で見に行くことになるだろう。
会社の仕事より張り合いあるかも。

でも、式が終わったら、
今年は私はこの街から出るんだな…。
そう思うとしみじみした。










続きはまた明日

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最終更新日  2009年09月17日 18時21分38秒
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