りらっくママの日々

りらっくママの日々

2009年09月20日
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今日の日記




「ある女の話:アヤカ33」



メニューを開く。
パスタでいいかと聞かれて頷く。

「何か飲む?
グラスワイン一杯くらい大丈夫?」

「車ですよね?」

「まあ一杯位だから」

もう勝手に飲むことに決めたらしい。
私は安易に車に乗ったことも、
夕食をいっしょにすることも後悔し始めていた。

すぐに店員がワインを持って来る。
いっしょにウエノさんが水もオーダーしていた。
一応、考えてるのかもしれない。

ウエノさんは眼鏡をはずした。
外すと少し若く見えた。
堅い雰囲気がやわらかくなる。

「ずっと眼鏡してると肩凝っちゃってね。
仕事と運転の時しかしないから。」

軽く笑うので、私も何だか笑ってしまった。
雰囲気変わりますね、って言って。

「こんなところはカップルが来るんだろうね。」

「そうですね。
雰囲気いいし。」

「僕も昔はカミさんと、こんなとこまわったんだけどね、
もう子供が生まれちゃうと行かなくなるもんだね。」

「そうなんですか?」

店員がワインを運んできて、
ウエノさんが一口飲む。

「うん。子供が生まれるとやっぱりね。
外食しなくなっていって、
大きくなったらファミレスだな。
気を使っちゃうから。
タカダさんのとこは?
まだ子供は?」

「うちは、まだ考えてないって言うか…。」

「そっか、うちはすぐに子供ができちゃったからなぁ。
赤ん坊の頃は大変だったけど、
大きくなると、あの頃が懐かしいね。
まあ、付き合ってる期間が結構あったから、
あちこち行けたし、いいんだけども。」

「付き合ったのって、どれ位ですか?」

「大学からだから…5年かな~。」

「大学で知り合ったとか?」

「そう。同じサークルで。
タカダさんは?」

「うちは絵画教室かなぁ…」

「かな?あいまいな表現だね。
絵描くんだ?」

「子供の頃からちょっと…。
上手くは無いんですけど、描くのが好きで。」

サラダやパスタが運ばれてくる。
なかなか美味しい。

何だか変な感じだと思った。
会社の面談、食事付きみたいだ。

向こうがプライベートを聞いていいって空気を出してくる。
その代わりこっちにも聞いてくるけど、
相手が自分のこと話してくれてるせいなのか不愉快じゃない。
ウエノさんは商談が上手かもしれないと思った。

それにさっきから思っていたけど、
デートって感じの緊張感も無い。

大人って、こんな付き合いができるんだ?
子供扱いでもなく、女扱いでも無く、
一人の「人」に対して話してもらってる気がした。

それとも私が一回りほど上の男は男として見ないせいなんだろうか?
妻帯者も男として見ること無いし。
子供がいるなら、男じゃなくてお父さんだ。

こんなに年上と対等に話してもらうなんて、
思ってもみなかった。

「週末はどう過ごしてるの?」

「うちは~、
そうですね、疲れちゃってテレビ見たりゲームして転がってたり、
ちょっと美味しそうなとこに行ってみたりしますね。
雑誌に載ってるような。」

「へえ~、新婚さんでもそんなダラけちゃうんだ?
あ、新婚さんだからかな?いいね。
うちは、前までは遊んで遊んでって子供が起こしにきてね、
寝てるとこにドスンって乗っかってくるから、死にそうだよ。
ゆっくり寝てられないし…。
まあ、今はそんなことしないけどね。」

ウエノさんは子供が乗ったかのように顔を歪めて、
オナカを抑えた。
あははって私が笑う。
何となく想像できて。

「それなら、
また奥さんと、こういうとこ来ればいいじゃないですか?」

「うん、そう思って行ったことあるんだよ。
そうすると今度は、子供がいないと特に話すことに詰まるって言うか…。
今まで何話してたんだっけな?って感じ。」

うなずきながらも、
そんなものなんだ?って私は思った。
まだ未知の世界。
うちの親はどうだったっけ?

それからウエノさんは自分が料理することなんかも少し話した。
新婚さんだといっしょに料理しない?とかって。
会話をふるのが上手だった。
職場の雰囲気と違って、
同じ歳位に見えたのはワインのせいだろうか?

デザートにコーヒーまで御馳走してくれて、
ウエノさんは私の家の近くで車を止めた。

「今日はありがとう。
たまには女性と食事するのも悪くないですね。
いい時間過ごさせてもらいました。
あと少しの時間、仕事宜しくお願いします。」

ニコニコしながらウエノさんが言った。

「こちらこそ御馳走様でした。
運転、気をつけて下さいね。」

私もそんなに悪く無い時間だったので、
ありがたくお礼を言う。
ウエノさんはププッとクラクションを鳴らして去っていった。

家の明かりはついてなかった。
まだヒロトは帰ってないらしい。

お風呂を沸かして入る。
たまにはこんなのもいいか~なんてお湯に浸かってると、
ヒロトが帰ってきた。

「ごめんね~、遅くなって。」

「ううん、私もさっき帰ったとこ。」

「いっしょに入っちゃおうかな~。」

「うん。いいよ~。」

髪を懸命に洗ってるヒロトに向かって言ってみた。

「今日さ~、上司にご飯オゴってもらっちゃった。」

「え?そうなの?男?」

「ふふ、気になる?男だよ。」

「何だよ、モテるじゃん。」

「何それ?ちょっとはヤキモチ焼かないの?」

「焼いてるよ~。」

「あんま、そう見えないなぁ~。
せっかくヤキモチ焼かせようと思ったのに。」

ヒロトが笑う。

「何か変なことされた?」

「されない。」

ヒロトが湯船に入る。
後ろから私を抱き締める。

「こんなに魅力あるのに、オカシイねぇ~。」

「普通、ダンナがそういうこと言うかなぁ?」

「結婚してる人?」

「うん。子供もいるよ。」

「じゃあ、無いかもね~。多分。」

「何かあった方がいいみたい。」

「あったら困るよ。」

「ホントに困る?」

「うん。」

ヒロトが私にキスをする。
言って良かったかもしれない。
今日はヒロトが私に興味あり。

うふふん。と私は思う。
たまには刺激があった方がいいのかもね。

でも何だかウエノさんの話は気になった。

子供ができると、共同作業をしているような感覚になるんだよね。
カミさんのことも、女って言うより同士って感じかな。

それがいいことのようにも感じたし、
普通なことなんだろうと思った。

なのに、ちょっと淋しいように思ったのはナゼだろう。
私もいずれヒロトのこと、
そう思うようになるのかな…

なりたいような気もしたし、
なりたくないような気もした。

ウエノさんがちょっと懐かしそうに語ったのが、
淋しそうに見えたからかもしれない。






続きはまた明日

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最終更新日  2009年09月20日 19時24分54秒
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