りらっくママの日々

りらっくママの日々

2009年11月16日
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今日の日記




「ある女の話:カリナ14(イジメのゆくえ)」



私は今までのグループの子たちと行くのをやめて、
マッシーと学校に通うようになっていた。

寒くなってくると、クラス替えが待ち遠しくなった。

終業式が終わった時、

ああ、このクラスともようやく別れることができるんだ…

って、ホッとした。

マッシーのクラスが終わるのを教室で待っていた。

ボソボソとグループの子たちが、
私の方を見ているなんて気付かずに。

「ねえ、カリナちゃん、この後ちょっとこっち来てよ。」

グループの女の子が微笑みながら言った。

私に性格を直せって手紙を渡してきた子。

後ろにはスギタがいた。

クラスの子たちがいなくなるのを確認して、
彼女たちは椅子を円を描くように並べた。
まるで会議でもするかのように、
そこにみんなで座る。

「ねえ、カリナちゃんはどう考えてるの?
どう思ってるの?」

「何が?」

私はワケがわからなくて聞いてみる。
その返事がかなりマヌケに聞こえたらしい。

「何が…って。
自分が悪い事したからこうなったとか思ってないの?
クラス替えすれば、終わることだとか言ってたらしいじゃない?」

ああ、あのことかな…。
と私は思った。
最近ちょっと私が離れたことで、
逆に声をかけてきた子がいた。

その子に、今ってお弁当の時間誰とも話してないよね?
って聞かれた。
私は、その子が私のことを心配して聞いてくれたのかと思った。
だから、そう言ったのだけど。
どうやら嫌な意味で取られたらしい。

そんなこと言うことも気に食わないんだ?
だって、ホントのことじゃない?

「うん。そうだね。」

って私が言った。

「何が終わるの?
そういう考えでいいと思ってるの?」

私とそんなに口をきいたことも無い子が、
うすら笑いを浮かべながら言う。
いかにも私は正義の味方なんだって感じで。
あなたが悪いことをしてるんだよ。
みんなを不愉快にさせてるんだよ、って感じで。

私は黙った。
マッシーのことが頭をよぎった。
助けに来てくれないかな…と。

でも、そんなテレビドラマみたいなことが起こるはずも無かった。

教室のドアは閉まっていたし、
ガラス越しに見る私達は会議をしているか、
和やかに談笑をしているか、
何かしら話し合いをしているようにしか見えないだろう。

よそのクラスの子が入ってこれる空気じゃない。

一瞬、スギタを見た。
スギタは何も言わずに足元を見ていた。

ああ、アナタもなんだね…。

もう自分の手には追えなくなっちゃったんだね…。

そんなことをボンヤリと思った。

ちょっと漏らした不満が、周りの手によって増幅される。
坂道を転がる雪球みたいに。
どこまで大きく膨れ上がるかわからないけど、
もう大きくなった雪球を壊すことなんて、
誰にもきっとできないんだ。

雪球を大きくしたくなる気持ち、
わかるような気がした。

刺激が無い毎日。
どこかで、不満があったら同調することの結束感。満足感。
自分は独りじゃないんだって安心感。

きっとそれが欲しいんだ。

そうじゃなければ、
何かをすることで、
自分は何か人の役にたってるって、
まるでテレビドラマの配役みたいに、
自分を特別なものにでも仕立てたいのかもしれない。

私は、いかにも正しいことを言ってます、とばかりに、
私に向かって話す女の子のパクパク動く口元を見ていた。

あなた、関係無いじゃない?
私あなたに何かしたっけ?

私は心の中で返事をする。

でも、この返事を彼女たちは待っている。
そして私の言葉尻を攻め立てようとしていることもわかっている。

彼女たちはわかってない。
私が彼女達に謝ったところで、
何も変わらないってこと。

お互いスッキリなんてしないこと。

私にも、彼女たちにも、
何もメリットなんて無いこと。

長引けば長引くほど、
どうにもならない溝が生まれるってこと。

もう宇宙人と話をしているような気分になった。

バカバカしいよね…


「ごめん、帰るね。」

私は席を立った。

信じられないって顔をして、
私を責め立てた女の子が私の背後から言う。

「まだ話は終わってないんだけど。」

「うん。でももう別に私には話すこと無いから。」

オナカもすいたし…。

私はカバンを持って、扉に向かう。

後ろから、何言ってんの?何あの態度
…って、ゴチャゴチャした声が聞こえる。

何が怖かったんだろう?

謝ったって、謝らなくたって、
ここにいたって、いなくたって、
私は独りだ。

群れてても独りだし、一人でいても同じなんだ。

群れの中に入るために何度自分の気持ちを殺してただろう。

独りでいるのは怖い。
こうして群れで攻撃してくるから。

群れの中にいると、
どうしてこんなことしてるのか、
よくわからなくなってくるんだと思う。

もういいや。
攻撃されても、
今までだって、ずっと無言の攻撃を受けてきたよ。
どうみたって、いっしょにいても独りだったもの。

もういいんだ。
もうこれが私の普通なの。

それに、
私には友達が待ってるし。
頭を下げてまで入れてもらう友達なんて、
もういらない。

扉を開けた。
グランドに向かう。
先生は今日も走ってるだろうか?

多分、マッシーはグランドに来るだろうと思った。

歩いてるうちにスッキリした気持ちになった。

終わったんだと思った。

嫌な終わりだったけど、
これからクラス替えした時に何かあるかもしれないけど、
まあいいやって思った。

しばらくするとすぐにマッシーがやってきた。

「おおい!カリナー!」

私はいつものように手を振る。

何であんなことされなきゃいけないんだろう?って、
ちょっと怒りも含んで泣いちゃってたけど、
マッシーを心配させたくなくて、
涙を拭いておいたし、笑顔も作った。

「教室にいなかったから、ここにいるかな~って思ってね。」

マッシーは無邪気に言う。

「ごめんね、教室で待ってようかと思ったんだけど。」

「ううん、こっちこそ遅くなっちゃってゴメン。」

「先生、走り終わっちゃったよ。
オナカ減ってない?」

「ねえ、1年最後だしさ、
どっかでお昼食べてかない?」

「いいね。賛成!」

私たちはフフフと笑った。


そんな苦い一年の終わりだったけど、
私は高二になり、新学期が始まった。

マッシーとは同じクラスになれなかったけど、
私はこのクラスでは友達と呼べる子が数人できた。
マッシーの繋がりもあって、
楽しくしゃべれる子たち。

しばらくして、
あのグループの中で、一番何も言えずに輪に加わっていた子が、
ある日私に話しかけてきた。

終業式の日はごめんね…って。

カリナちゃんが出て行った後、
すぐに隣のクラスの女の子が来て、
何してたの?!って聞いてったよ、
いっしょに行き来してる子だよね?
いつも二人で楽しそうに歩いてる…と。

私は驚いた。
マッシーは、そんなこと微塵も私には言わなかったから。

ただ、その子が言うには、
カリナちゃんのこと、今出てったよね?って、
マッシーがすごい怒ったような顔してた…と。

慌てて私を追いかけるマッシーを見て、
客観的に自分達がやってることが変だった気がして。
自分が悪いことをしたな…ってずっと思っていた、と。

しどろもどろでしゃべり、
こうして話す機会があって良かったって、
彼女はホッとした顔をしていた。

だから、私も、いいよって言った。

もう雪球は無いんだ…。


「マッシー、あのさ…」

私は帰り道にマッシーにその事を聞こうかと思った。

でも春休みに会った時も何も言ってなかったし、
時間もずいぶん経ってる。
それに、
マッシーから何か聞いてくることもなかったのを思い出した。

「ん?何?」

私を見るマッシーの顔。
頼もしく感じる、
無邪気な顔。

ありがとう。

そう言おうと思ってたのに、言葉がうまく出てこない。

マッシーは私が次に何か言うのを待っている。

「今日…
いつものフードコートでお茶してかない?
私聴きたい曲があるんだよね。」

私はいつもの調子で言った。

何だか今更照れ臭くて、
それが私からのお礼だって、
言わなきゃわからないだろうけど…。

マッシーは嬉しそうに、
いつものように、オッケー!と答えた。





前の話を読む

続きはまた明日

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最終更新日  2009年11月16日 17時40分55秒
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