りらっくママの日々

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2009年12月14日
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今日の日記





「ある女の話:カリナ42(マッシーとのバレンタイン2)」



こんな気持ちじゃなかったけど…

私は電車の中で、今日一日のことを思い出す。


うちに泊まったマッシーと、
午後から最後の走りのランニング同好会に出るために、
いつもと違ってすいた電車にドキドキしながら乗った。

マッシーと、昨夜メッセージカードをいっしょに書いた。

「どんなこと書いたの~」

「ん~、渡してから教える~」

そっかそっか。
最初に先生に伝えたいもんね。

私は頷きながら、自分もメッセージを書いた。


  スギモト先生へ
  今まで本当にどうもありがとうございました。
  先生のお陰で楽しく走ることを知りました。
  これから人生で何かあったら、
  こうして何も考えずに走って行きたいです。


人生なんて大袈裟かな?
そして続ける


  マッシーのこと、
  これからもどうぞヨロシクお願いします!


娘を嫁にやるお父さんみたいだな。
いや、お母さんか?
まあいいや。私はマッシーの家族なんだもん。

そう思った。


  義理の愛をこめて…

  カリナ


そう書いてハートマークをつけた。

冷たい風の中、
走り終わると少し体が温まった。

「オマエら、休みなのにワザワザ走りにくるなんて、
暇なんだな~。
まあ健全で先生としてはイイけどね。」

先生は笑いながら言った。

私たちは示し合わせて、
カバンからゴソゴソとチョコの袋を出した。

「先生、はーい!」

「お!何だよコレ~?
くれるって言ってくれたら、内申上げてやったのに~!」

先生はチョコの袋を開けながら、
嬉しそうに言う。

「えー!そんなこと可能だったの?!」

「うんうん!」

先生は冗談なんだか本気なんだか、
とにかく嬉しいノリでそんなことを言っていた。

いずれにしても、もう点数を上げることなんて無理だから、
調子のイイことを言ってるんだと思った。

まず私のメッセージカードを見て、
ブッと笑って、
「ありがとなー!オマエもがんばれよ!」って言った。

「明日で最後なんだよな…
じゃあ明日は奮発しなくちゃな~」

そう言いながらマッシーのメッセージカードを見た先生の顔が、
真剣になっていて、
表情が固まった気がした。

私がマッシーの顔を見ると、
マッシーの顔も真剣で、
先生の表情をジッと見ていた。

先生は顔をあげてマッシーの目を見た。
マッシーもずっと先生の目を見ていた。

二人しかいないような空気が流れて、
自分がこの冷たい風の一部になったような気がした。

それ位、二人の目の会話が自然だった。

一瞬だったのか、結構そうしてたのかわからないような、
時間が止まったような気がした。

「コレ…」

先生が言って、

「…うん。」

マッシーが頷いた。

「カリナ、帰ろう。」

「え…?
あ、うん。」

「じゃあ、タッチャン、また明日~!」

「おう…」

先生はボンヤリしながら手を振った。

マッシーは、何か決心したような、
さばさばした顔をしていた。

私たちは着替えて、
学校を出ることにした。

何か聞けない空気を感じて、
私はマッシーから話すのを待った。

マッシーは門を出ると、ふーって深呼吸をした。

「やっちゃったな~。」

私はマッシーのその様子を見て、
ホッとしたような、
不安なような、
複雑な気持ちになった。

「何を?何をやっちゃったの?」

「メッセージに書いたの。
私は本気でタツヤが好きです。
子供の頃からずっと、男として好きです。
タツヤがそういう気持ちで私を見れないなら、
ちゃんと断っていいです。
時間はかかるかもしれないけど、
ちゃんと幼馴染に戻るようにします。
…って感じのこと。」

私はハァ~ってため息をついた。

ホントに直球だ。
先生は受け止めてくれるんだろうか?

私までドキドキしてきた。

「明日…
返事聞くの…?」

「うん。聞くよ~。
ダメならダメでいいって思うかどうか、
自分の気持ちも知りたいし。」

「ダメで…いいの?」

「あきらめられないかもね~。
でも、想ってるのは自由でしょう。
いつかあきらめられるかもしれないし、
卒業しちゃえば、行かなければ今みたいに会えなくなるし…。」

私は何とも言えない気持ちになった。

「強いね…
強いね、マッシー。」

「ん?
ううん、強くなんか無いよ。
仕方無いじゃん、心がそう思っちゃったら。
できれば断られたら踏ん切りつけたいけどね。」

マッシーは無理だって思ってるようだった。

先生の目の中に、
何か見てしまったんだろうか…?
断られるような何かを…

私はドキドキしながら明日が早く来て欲しいと思った。
こんなソワソワした気持ち、ずっと持ってられない。

マッシーも同じかそれ以上の気持ちだと思うと、
今日もいっしょに過ごせて良かったと思った。

せめて側についててあげたい。
それとも一人でいたいだろうか?

二人で無言のまま電車に乗る。

傍から見たら変かもしれないけど、
私はマッシーの手を握った。

マッシーも私の手を握り返した。

それで、やっぱり側にいて良かったと思った。

マッシーの手は、細かく震えていた。

大事な何かを失くしてしまう恐怖に、

きっと震えていた…


大丈夫…

大丈夫だよ。

何もできないけど、
私はマッシーの手を、震えないように包み込んでいた。




前の話を読む

続きはまた明日

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最終更新日  2009年12月14日 20時42分52秒
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