りらっくママの日々

りらっくママの日々

2009年12月16日
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今日の日記





「ある女の話:カリナ44(嫌な予感)」



またいつもの公衆電話からだった。
昼間時々ある電話。

一度だけ取ってみたら、
無言だったり、すぐ切れたりした。

何だろうコレ…。

バイトの昼休み。
私が携帯を眺めてると、
ミッチャンが話しかけてきた。

「どしたの…?」

「ん、何か電話かかってきてたんだけど、
公衆電話からだから誰かわからないや~って思って。」

「そういうのって気持ち悪いんだよね。」

「ね~。」

私とミッチャンは顔を見合わせて頷いて、
スタッフルームで店のハンバーガーを食べていた。

「あのさ…ミゾちゃんて、
オノダさんと付き合ってたりする?」

「え?!」

私は驚いて声をあげた。
正直、バイトの誰にもオノダさんと付き合ってることは言ってなかった。
ミッチャンは二人でいる時を見計らって聞いてきたみたいだった。

「なんで?」

「うん、ケンちゃんが、
ミゾちゃんとオノダさんが車に乗ってるの見たって言うんだよね。」

あ~、いつかこんな日が来るんじゃないかと思ってた。
ミッチャンには打ち明けなくちゃな…。
私はどこから話そうか…って、
ちょっとハンバーガーを飲み込んでから返事しようと思ってた。
でも、ミッチャンの言葉の方が先だった。

「でも、そんなことないよね?
だって、オノダさんて結婚してるんでしょ?」

一瞬、頭の中が真っ白になった。
ハンバーガーをゴクンと飲んで聞いた。

「え…
バツイチじゃないの…?」

「ううん、別居してるってケンちゃんが言ってたけど…。
え?何?ホントなの?
もしかしてホントに付き合ってるの?」

「あ、待って…
ゴメンネ、ちょっとその話待って…」

私の様子にミッチャンが黙った。

私は何も言えなくなってしまった。
ミッチャンは間を持たせるために食事の続きを始めたので、
私も手に持っていたハンバーガーを口に入れた。

何だか味がよくわからなかった。
とりあえず、目の前の物を食べちゃわなくちゃ…って、
それだけしか考えられなかった。

「うん…。
付き合ってるけど…
まだ結婚してるなんて知らなかったって言うか…」

沈黙が申し訳無くて、
思ったことを口にした。

「嘘?!信じられない!
オノダさんって何考えてるの?!」

「待って、ミッチャン、待って…。
私も、
私も混乱してて…。」

ミッチャンは私の気持ちを気遣ってくれたのか、
言いたいことがあるのを呑み込んでくれているようだった。

「大丈夫?」って、仕事に出る前に私の肩を抱いて、
思い切ったように言った。

「もしかしたらミゾちゃんの言うように、もう別れてるかもしれないよね。
でも、確認した方がいいよ…。
でも…
もしまだ結婚してるなら、
やめた方がいいよ、そんな付き合い…。」

私は頷いて、ありがとう…って返事をした。
ミッチャンが心配しないように笑顔を作って。
仕事をすることで気を紛らわせた。

明日から私は旅行の予定だった。
今ミツルは帰郷してるから、その間の連絡はミツルからするって言われてた。
友達と会ったり、親がいたりするから話にくいとかで。

今夜聞いてみよう…
そう思うのに、何となく怖くてしょうが無い。

ミツルは本当のことを話してくれるんだろうか?
そしてもしもまだ結婚してるとしたら…

私は一体どうしたらいいんだろう?

私はバイトが終わってすぐにミツルに電話をしていた。
でも、電源が入って無い。
とにかくミツルからの電話を待つしかないらしい…。

嘘。

嘘だよね?


でも、心のどこかに、
それは有り得る話のような気がした。

事故を起こした日、
繋がった電話の不気味さ。

以来時々かかる無言電話。

故郷に帰ったら電話しちゃいけないって、
もしかして…


怖い…。


その日のバイトは早上がりだったので、
帰りに旅行で必要な物を買ってから家に帰って荷造りをした。

電話が鳴る度にドキリとしたけど、
オノダさんからじゃなくて、
明日の確認のために、マッシーやユウからだった。

私は旅行に行けることがありがたかった。
こんな気持ちで、バイトや家にいたくない。

マッシーやみんなといっしょにいて、
何もかも忘れたい。

ようやく荷造りが終わって、お風呂も済ませて、
いつもの時間にミツルから電話がかかってきた。

「よお。」

「うん…。」

別に用も無いのに帰郷してから毎日かかってきてた電話。
それがこっちからかけると都合が悪いからってことだなんて、
今まで一度も疑ったことなんてなかったけど…。

「あのさ…
変なこと聞いたの。」

私は冗談っぽく笑いながら言った。

「何?」

「ミツルがまだ結婚してるって。
そんなこと無いのにね。」

携帯の向こうから返事は無かった。
それが答えのような気がした。

「別居してるって…
ホント?」

「誰から聞いたんだよ?」

すぐに否定をしてくれないことで、
嫌な予感が確信に変わった。

「誰からじゃなくて、ホント?
ホントに別居なの?」

向こう側から、車の音なのか雑踏の音なのか、
外にいる空気が伝わってくる。
でもミツルからの返事は無い。
私はミツルが返事をするまで待つ。

「帰ったら…
帰ったら話しするから…。」

「じゃあ、やっぱりそうなのね?!」

「そうだったらどうすんだよ?
離婚したらオマエすぐに俺と結婚するか?
できるのか?
無理だろ?」

「離婚するってこと?」

「俺は離婚するつもりだ。」

今度は私が黙った。

そんな…
それは私が聞いたからなの?
本気なの?

「私のせい…?」

「うん…
今すぐってワケにはいかないけど…」

「待って、ちょっと…それって…」

「待つって何だよ?
俺と結婚する気無いの?
遊びなワケ?」

「そういうんじゃないけど…」

あまりにもいきなりな話で、頭がついていかない。
どうしてこういう話になっちゃうんだろう?
ううん、こうなる話なんだろうけど、
現実感が無い。

ただ、私の返事次第では、
ミツルが離婚してしまうってことが、
人の人生を変えてしまうことが、
とても恐ろしいことなんじゃないか?
って思った。

そこへ誰か部屋に来る気配がした。

「あの…
考えさせて。ちょっと頭がついていかないし…。
帰ってから、
帰ってから話したいんだけど…。」

「それでいい?
別れたいとかって言うんじゃないよな?」

「考えたいの…」

ミツルが息を呑むのがわかった。

「今すぐ帰ってそっち行く。」

どうしてそうムチャクチャなことを言い出すんだろう。
私はそうさせたくなくて、慌てて返事をした。

「帰ったって、私旅行に行っちゃうし…」

「旅行とこの話とどっちが大事なんだよ?」

ミツルが怒ってるのがわかる。
でも、引くワケにはいかない。

「みんなに迷惑かけるワケにいかないから。
来てもいないから。
ね、帰ってからにしよ。
そんな急にこんな話されても…
急になんとかなる話じゃないでしょ?」

「うん…」

どっちが年上なんだかよくわからない…。
でも、もう年齢なんて付き合っちゃうと関係ないんだってことは、
この付き合いでよくわかった。

「ねえ、俺のこと嫌いになった?」

ミツルが哀れそうな声で聞いてくる。
ここで、ウンって言ったら、また来るだの何だのって話になるだろう。
後ろには部屋に戻った妹がいた。

「ごめんね、今妹がいるから…
帰ってから…、ね?」

ミツルはまだ何か言いたそうだったけど、
これ以上何か言っても無駄と判断したらしい。
ようやく電話を切ると、
ため息が出た。

「どうしたの?お姉ちゃんダイジョブ?」

「うん…何とか…ね。
もお…寝るわ…。」

そう言ったものの、なかなか寝付けなかった。
ミツルとの電話のやりとりが蘇る。


  俺は離婚するつもりだ。

  俺と結婚する気無いの?
  遊びなワケ?



離婚…

結婚…

私とはまだ縁が無いと思っていた言葉が、
目の前に迫っているような気がする。

そして、私には気がかりなことがあった。

ようやくウトウトしたら、目覚ましが鳴った。

まさかこんな気持ちで旅行に出るなんて…。

私はとにかく出かける支度を始めた。




前の話を読む

続きはまた明日

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最終更新日  2009年12月16日 21時03分33秒
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