りらっくママの日々

りらっくママの日々

2009年12月24日
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今日の日記




「ある女の話:カリナ52(再会デート)」



すぐに会う約束をした。

以前会ってた時みたいに、
まずは映画を見て、
ちょっとゲームセンターでエアホッケーしてみたり、
ファーストフードでお茶にしたり。

青山くんとは話が尽きない。
これは青山くんが聞き上手だからなのか、
それともやっぱり相性があるのかな?

…そんなことを思った。

ミツルといい、ケンちゃんといい、
楽しいって言うよりも、
女扱いされている緊張感がいつもどこかしらにあって、
話が合うとかって言うのは、
女扱いされてない友達にしか無いものかと思っていた。

私はイメージと違うとかよく言われる。
女らしく無いことで嫌われたくなかったのかもしれない。
私が思ったままのことを言うと、
アレ?って顔をされるので、
付き合う相手には口数がつい減っていたような気がする。
それが楽しいって思うことから遠ざけていたのかもしれない。

でも、青山くんは違うって言ってた。
私はいつも思ったことをそのまま言えたし、
そんな私のことを好きだったから会いたいって言ってくれた。

それが私の気持ちをとても楽にしていた。

でも以前とは違う、
何か青山くんが告白してきて会ってるってことで、
自然と付き合ってる空気が二人の仲に微妙に入っていた。

家まで送ってくれた帰り道、
青山くんは、いきなり立ち止まり、
私の方を向いたので、
私も足を止めた。

どうしたの?って、
目で訪ねると、
青山くんは真っ直ぐに私を見て言った。

「ボクのこと…好き?」

「え…?」

茶化せないような、真剣な目だった。
だけどどうにも照れてしまう。
私は目を下に逸らせた。

私が目を上げて青山くんの顔を見たら、
青山くんは、まだ私の返事を待ってるように、
私のことをみつめていた。

「うん…。」

「ちゃんと口に出して言ってくれる?」

「恥ずかしいから…」

「ちゃんと聞きたい。
はぐらかさないで…」

そう言われると、ますます言いづらい。
私が口篭っていると、青山くんが続けた。

「今、こうして会ってることが、夢みたいな気がするんだよ…。
何か…
不安なんだ…。」

「そうなの?」

「うん…。
また、いきなり誰かのものになっちゃいそうな気がする。」

「そんなこと無いよ。
そんなにモテないって。」

私は軽く笑う。
青山くんも私に釣られて笑顔を見せる。
ちょっと淋しそうに。

「じゃあ…
今度は来週会える?」

「うん…。」

早く会いたい…って続けそうになって、
また照れてその言葉を呑み込む。

「また電話するから。」

青山くんは手を振って、そのまま帰ろうとした。

「…あの!」

「何?」

「私も…」

私は足元を見て、ちゃんと言葉にする決意を固めた。

「私もアオヤンのこと好き。」

青山くんは一瞬ホッとしたような表情をして、
それからとても嬉しそうな笑顔で頷いて手を振った。

私も青山くんの後姿が見えなくなるまで、ずっと手を振っていた。
青山くんは角を曲がるまで、何度も振り返って手を上げた。

こんな気持ちで、3年前の最後の日、
私を見送ってくれたのかな…

今別れたばかりなのに、
またすごく会いたくなった。
走って追いかけたいような…

そうしたら、きっと帰りたくなくなる。

次に会ったら、もっともっと欲が出そうな気がした。

もっと、ずっといっしょにいたい。

少し怖かった。
焦り過ぎて終わってしまったらどうしよう…って。

青山くんも、寝てしまったら変わってしまうんだろうか?

変わってしまって、終わっちゃうんだろうか?


それが無性に怖かった。



次のデートは遊園地だった。

日が暮れてきた遊園地は寒くて、
私は手袋をしてても冷たい自分の手をこすり合わせる。

「手袋してても寒いの?」

「うん。私冷え性なの。」

「ふーん。」

青山くんはそう言うと、自分の手をポケットから出して、
私の手袋をはずして手を握ってきた。

心臓がキュンと音を立てる。

私の好きって言葉に自信を持ったのか、
大胆な行動をしてくれるのが嬉しかった。

「ホントだ。」

私の手を離さないで、
青山くんは自分のポケットに私の手を入れた。


  手を繋ぐと、その人を愛せるかわかる


久しぶりにそんな言葉を思い出した。

「アオヤンの手はあったかいね。大きいし。」

手から伝わるぬくもりが心地いい。

手を握ることがこんなに心を和ませるなんて、
こんなに感触に心が震えるなんて…

私の方こそ、こうしてるのが夢みたいな気がする。

「こうしてればすぐにあったまるよ。」

青山くんは優しそうにそう言って笑った。

もう片方の手もあたためて欲しい。

私も大胆なこと言ってみようかな。
やらしい女だと思われちゃうかな…。

そんなことを考えて、私の頭の中は邪心でモヤモヤし始めた。

青山くんとそうなることを望んでるくせに、
そういう関係になったら、今と違ってしまうんじゃないか?
って、怯えが入って口をつぐむ。

でも、心のどこかで、
ダメになるならダメになるで早い方がいいんじゃない?
って気持ちも起きる。
傷は浅い方がいいんじゃないかな…なんて。

次のアトラクションに行こうとする途中で、
高校生っぽいカップルが暗がりでキスしてたのがわかった。

結構気付いた人はチラチラ見ていて、
私もつい、大胆だな~なんて見てしまう。

彼らに比べたら、私達の大胆なんてたいしたことない。

「行こ。」

私が見ていたせいでトロトロしてたからか、
青山くんが私の肩をいきなり抱いて、
その場から離そうとした。

くっついた体から青山くんの体温が伝わってきてドキドキする。
私もあのカップルみたいに抱きしめて欲しいな…なんて思う。

でも、青山くんはそういうの苦手かもしれない。
サッサと行こうとしてたし…

そう思うと、
ますます女の自分の方がスケベなような気がしてきた。
だからすぐやれる女とかってケンちゃんに言われたのかもしれない。
ずっと忘れてた心の傷が蘇ってきて痛い。

素の私を出したら嫌われるかな…

青山くんの腕の中にいるだけでいいはずなのに、
自分がもっと多くを望んでることに気付いた。

「次何に乗る?」

青山くんが空気を健全なものに変えようとしてる気がしたので、
ちょっとイタズラ心が働いた。

「観覧車、乗りたいな。」

「えっ?」

あ、やっぱり、さっきのカップルを意識してるんだ?
って思った。

「チューしちゃダメだよ?」

真面目な少年をからかってるような気分になって、
可笑しくてつい笑って言ったら、

「言うかな~、そういうこと~」

と、青山くんが呆れたように笑った。

それでもそのまま観覧車の方に行くので、
もしかしたら…
って思った。

でも青山くんが向かい側に座ったので、
ふーん、余計なこと言っちゃったかな?って思った。
青山くんって真面目な好青年って感じ。

一方私はどうだろう?
さっきから変に意識してる気がした。
どうして彼といると、こんなことばっかり考えてしまうんだろう?

夜の観覧車から夜景が見えて、
キレイなんだけど、密室ってことが息苦しく感じて集中して見れない。
私はワザとムードを壊すようにハシャいであちこちを見回した。

「あれって、私が勤める方のビルかも?」

「ふーん、どれが?」

青山くんは何てこと無いように私の隣に席を移ってきた。
そのことにドキリとするけど、
私は振り向かないでそのまま窓の方を向いていた。

後ろから青山くんの声が聞こえると妙に緊張する。
触れられてもいなにのに、
さっき肩を抱かれたぬくもりが蘇ってきて、
落ち着かない気持ちになった。

「あのビルが沢山あるやつ…」

自分から誘って観覧車に乗ったくせに、
こんなに近くにこられると逃げ出したいような気持ちになる。
それなのに抱きついてしまいたくなるような…。
自分の気持ちを抑えるのでイッパイイッパイだった。

「ああ、アレ?一番高いやつ?」

青山くんが冷静に聞いてくる。

「ううん、あの緑の光が見える?」

私が青山くんの方を振り返ると、
思ったより近くに青山くんの顔があった。

目が合った途端、
自分の気持ちが恥ずかしくなって、目を逸らそうとしたのが引き金になった。
青山くんが強引に私の体を抱き寄せてキスをした。

私が逃げないように、
腰と首の後ろ側に手がまわされていて、舌がからめられた。
その舌の感触で、
やっぱり青山くんも初めてじゃないんだな…って、
ボンヤリと思った。

「ん…」

だんだん気が遠くなって、
声が漏れてしまったことが恥ずかしい。
青山くんは唇を離すと、
ギュッと私を強く抱きしめた。

「キスしちゃダメって言ったじゃん…」

「そんなの、守るワケないじゃん。」

青山くんが私を抱きしめたまま言った。

キスした位でこんなに体が高揚してしまうなんて思わなかった。
こんなこと今までなかった。
こんなに相手が欲しいと思ったことが無い。

  「もっとキスして…」

そう言いそうになった。
自分が変わってしまいそうで怖い。
欲しいと思う相手が自分を求めてくれる安心感に溺れそうになる。

心臓の音が聞こえてきた。
大好き大好きって言ってるような気がする。

「あったかいね。アオヤン…」

「うん…。
カリナもあったかいよ。」

青山くんは言い慣れたように、私を「カリナ」って呼んだ。
その響きがあまりにも自然だったので、
懐かしい気持ちになった。

ようやく出会えた気がした。

人を本気で好きになるって気持ちに。




前の話を読む

続きはまた明日

目次





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最終更新日  2009年12月24日 20時53分30秒
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