りらっくママの日々

りらっくママの日々

2010年01月11日
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今日の日記




「ある女の話:カリナ70(酔いの悪夢1)」




心配した声で青山くんから電話が来たのは、
12時頃だった。

「ううん。たいしたことじゃないんだけど…。
ちょっと声が聞きたくなったって言うか…。」

携帯の向こう側から軽く笑った声が聞こえる。

「ごめんね。今家?」

「うん。さっき帰ったところ。
これから風呂入って寝るよ。」

「ごはんは?」

「さっき食べたとこ。
ごめんね。
夜遅かったから、先に電話しようか迷ったんだけど。
食欲に勝てなくてさ。」

「ううん、そんなの、いいの!
食べて!食べて!」

私は申し訳なく思った。

  早くアオヤンに会いたいです。

こんなメールを寝る前に送ったから、
心配したのかもしれない。

心のどこかで、
イシタニくんといっしょにいた時間を怖いと思う自分がいた。

彼といっしょにいたことで、
いろんなことが蘇ってしまった。
ミツルが言った、
初めての男を忘れられるのか?って言葉さえも。

ヒドイ言葉と同時に思い出すのは、
彼がそんな言葉を口に出すほど私に傷つけられたってことだ。
今思い返してみても、
あれほど私に執着した男はいまだかつていないと思う。

正直、
青山くんは私のことをあんなに乞うことは無い。
もう付き合って5年も経つけど、
甘い気持ちはあっても、
お互い激しく感情を揺さぶるようなことは、
今までも無かったし、
これからも無いような気がした。

もう二度と会いたくも無い男なのに、
あの不安定さと強引さが私を惹きつけていたのも確かで、
それを懐かしく思ってる自分がいることが怖かった。

「あのね、
土曜なんだけど、金曜に出張が入って、
帰りに飲みがあるかもしれないの。
上の人が飲むの好きだから、
行くことになるかもしれないって言われた~。」

「へえ~。珍しいね。
じゃあ飲みすぎないようにね。」

心配するってことは…
無いんだろうな。青山くんは。
それは信頼に通じてるんだけど、
ちょっと淋しかったりもする。

「飲みに行っても心配じゃないの?」

「何かあるの?」

「何もないけど…。」

「行きたいの?」

「ううん。全然。」

「じゃあ大丈夫でしょ。」

いや、そうじゃなくてね…
って、私は青山くんに何を言わせたいんだろ?

「でも心配しないなら沢山飲んできちゃおうかな~。
どうせ奢りだしね~。
もっと飲もうって誘われたら行っちゃおうかなぁ~。」

つまらないことを言ってみる。

「誘われるって誰に?」

うん、そうそう。
ちょっとは不安に思ってちょうだい~。

「わかんないけど~。」

「ダメだよ。行っちゃ。
仕事じゃなきゃ嫌だよ。」

「嫌なの?」

「うん。」

「たくさん飲むと心配?」

「うん。」

嬉しくて顔がニヤける。
やった~って、ちょっと思う。

「じゃあ、誘われても行かない。」

「うん。
あ、大丈夫かな?映画そんな状態で観れる?
そう言えば赤木くんが、
カリナもいっしょに釣りにどう?って言ってたんだけど…」

あ、せっかく甘かったのに逸らされた。

ちぇっ、て思う。

電話を切った後、メールして良かった~って思った。

安心した。
幸せ。
私、大丈夫。

って思う。


「なんか…
今日すっげー飲むかも。
またケンカした。
マジムカついた。」

言われていた通り、開発部と飲みに行くことになって、
みんなにくっついて飲み屋に向かう道の途中でイシタニくんが呟いた。

「え?何何?
何で~?」

私が聞く。
すぐに彼女のことだってわかった。

イシタニくんは前や後ろを歩いてる人たちに聞こえないように、
ちょっと声をひそめながら言った。

「今日の飲み。
ホントは楽しいんじゃないの?
とかってさ、
仕事の延長だって言ってんのに。
友達と飲むワケじゃないんだから、
それなりに気だって遣う飲みなのにさ…。
自分だって行ってるくせに、
何だよ一体とかって思ったりして…。」

その時のことを思い出したらしくて、
イシタニくんの顔が険しくなった。

「あ…ゴメン、変なこと言って。」

我に返ったらしくてイシタニくんが謝った。

私はその様子が何だか可笑しくて笑った。

「いいんじゃない?
ヤキモチ焼いてくれるうちが花だよ~って私は思う。」

「え?彼氏焼かない?」

「ん~。あんまりね。
付き合い長いし。
信用され過ぎるのも淋しい。」

「そっか~。寛大だな。
俺、結構ヤキモチ焼きだよ。
あ、でもあんまり出さないようにしてるけど。
心の中では嫉妬メラメラ。」

「だから彼女心配しちゃうんじゃない?」

「そうかな~。」

そんなこと言ってたら、お店に着いた。
予約されてたらしくて座敷に通された。
開発の女の子が甲斐甲斐しく働くのに私も便乗する。

「あ、すみません。」
って、年下だろう彼女は嬉しそうな笑顔を見せた。
今回、女性は私と彼女だけらしい。

私達がせっせと飲物の追加をしたり、
お酌をしてまわっている間、
男性たちは、すっかり酔っ払っていた。

おいでおいで~って、その開発の子が呼ばれたので、
私はとりあえずモリタさんたちのいる自分の席に戻った。
ふ~っ。

「お疲れ~。」

モリタさんが瓶ビールを私のコップに注ぎ足す。

「あ!ダメですよモリタさん、上司なんですから!
私が注ぎますって!」

「いいから、いいから!
俺そーいうの苦手~。」

「じゃあ、俺が~。」
足が治った後輩のヤマベくんが、
モリタさんのコップにビールを注ぐ。
モリタさんに言われて、何杯かウーロンハイを注文して、
私もそれに便乗した。

「イシタニ、結構飲んでるなぁ~。」

開発部の先輩社員とイシタニくんは何かしゃべっていた。
頷きながらも、ガブガブ飲んでいて、
顔が赤いのがわかる。

「飲んでますか~?」

しばらくすると、
ヘロヘロになった感じでイシタニくんが私の隣の席に戻ってきた。

「ダイジョブ~?」

私が言うと、イシタニくんは、まーねー。と答えた。
目が据わってる。

「ウーロン茶頼んでおいたよ。
ちょっとお酒ストップして飲んだ方がいいんじゃない?」

「え?あ~、ミゾグチさん気が利くなぁ~。
ありがとう。」

イシタニくんはウーロン茶をガブガブ飲んだ。

席の向かい側で開発部の人がモリタさんと何か仕事の話をしてた。

この企画で大丈夫なのかな~?とか何とか。
私も滅多に聞けない男の人たちの仕事の本音を、
笑ったり頷いたりして聞いていた。

その時、
置いていた右手にイシタニくんの足がぶつかったような気がした。

ううん、足じゃない。
手の小指…

思った途端に私の右手の上に温かい感触が乗った。

私はビクリとする。

それは、イシタニくんの手だった。




前の話を読む

続きはまた明日

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最終更新日  2010年01月13日 19時55分18秒
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