りらっくママの日々

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2010年01月17日
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今日の日記




「ある女の話:カリナ76(ケンカ)」



嬉しそうに青山くんの肩を叩いた。

カワイイ子。

青山くんもそれを笑って受け入れている。

とても楽しそうに…

鼓動が早くなった。
目の前で起こってる光景が何なのかわからなかった。

自分だって、
青山くんのことを裏切ったくせに、
さっきまで、
青山くんを自分に縛り付けておいていいのかな…
なんて思っていたくせに、

いざ、こうして楽しそうに女の子と話している青山くんを見たら、
私だけの青山くんじゃないんだ、って。
青山くんだって、他の女の子と楽しくできるんだ、って。
苦しくて、悔しい気持ちが沸きあがっていた。

視線が青山くんと女の子で固まっていると、
青山くんが私の方を向いて、
目が合った。

青山くんが慌てたように、
女の子に何か謝るような仕草をして、
道路のこちら側へ来ようとしてるのがわかった。

嫌だ。
何やってるんだろう、私。

私はようやく事態に気がついて、
青山くんから逃げるように反対側に歩き出した。

最悪だと思った。
こんな私、みっともない。
でも何だか止まれない。

ただの、会社の同僚と、しゃべってただけだと思うのに、
それでも嫌だと思った。
そんな自分が無性に嫌だった。

私だって。
私だって。
私だって。

心の中にイシタニくんとB子のメールが蘇る。

あんなふうに青山くんが私を思ってくれることなんて、
この先あるの?

だって私、
そんなこと望んじゃいけないんじゃないの?

イシタニくんのキス

楽しそうに女の子といる青山くん

頭の中がグチャグチャになっていた。

「待てよ!カリナ!」

青山くんが私に追いついた。

「どこに行くつもりだよ?」

「わかんない。
わかんないけど…」

「とりあえず止まってよ。」

「嫌よ。」

「何で?」

説明できない思いに、足はどんどん前に進んで行く。

青山くんが無言で私の隣を歩いていたけど、
いきなり腕を強く掴まれて、
引っ張って行かれた。

「離してよ!どこ行くのよ!」

「どこだっていいだろ別に。
道路で言い合いするよりマシだ。」

腕を握った力の強さとは逆に、冷静な声で青山くんが言った。
それが私をゾッとさせた。
本気で怒っているのがわかった。
こんな青山くんを見るのは初めてだ。
でも、私の感情も止められない。

「痛いってば!」

公園の中に連れて行かれて、
青山くんの手の力が緩んだ隙に、
腕を振り払った。

「ごめん…。」

青山くんに謝られて、
バツが悪くて、
外灯が照らした足元の影を見ていた。

「何だよ、一体。
急に来て、何怒ってる訳?」

「怒ってないよ。別に。」

「怒ってるじゃないか。」

青山くんに怒ってるワケじゃない。
自分に腹が立つだけ。
それを青山くんにぶつけてる自分が、
心底嫌になっていた。

でもそれを説明できない。

「よくわかんないよ。
定時だって言うから、私今日、出張で直帰だったから、
会社の前で待ってたら出てくるかな…って思っただけ。
驚くかなって思っただけ。」

「充分驚いたよ。」

脱力したように青山くんが言った。

困らせてるんだってわかったけど、
自分の中にある何かが止まらない。

「そしたら、女の子とイチャイチャしながら出てくるじゃない?
どうしていいか、わからなくなっちゃったのよ。」

口から出た言葉に恥ずかしくなった。
イヤミっぽい口調。
責められる立場じゃないのに…
バカみたい。

「そしたら逃げるんだ?」

「逃げたんじゃないわ。
足が勝手に動いたのよ。」

「怒ってるんじゃないの?」

「わかんないわよ。
何だか、楽しそうにしてるアオヤンたち見たら、
イライラしちゃって…。」

言いながら、
ああもう!って思ってた。

青山くんのせいじゃないのに…
こんなこと言うつもりじゃなかったのに…

そんな私の気持ちを見透かしたように、
青山くんの顔から笑みが漏れていた。

こっちがこんなにグチャグチャな気持ちなのに、
余裕を浮かべる態度に、ついムッとした。

「何よ。何が可笑しいワケ?」

「そんなにボクが好きなんだ?」

カッと頭に血が昇った。

「もういいわよ!帰る!」

「帰るの?」

「そうよ!もうアオヤンなんか嫌い!」

私は何をしてるんだろう。

元はと言えば、自分が悪いのに、
子供みたいな捨て台詞を吐いて、
帰ろうとする自分を滑稽だと思った。

同時に、青山くんの前で、
ここまで感情を高ぶらせてしまったことなんて、
今までなかったんじゃないかと思った。

心のどこかで本当に、
もういいって思う。
嫌われたって、もういいって。
もう、こんな私、嫌っちゃってよ!
って。

「そうか。いいよ。わかった。」

呆れたような青山くんの声に、
私は傷ついたような気持ちになって振り返った。

「ボクのこと、嫌いなんだね?」

「そうよ。大嫌い。」

「ほんと?」

「ほんとよ。」

青山くんは大きく息を吸って、
真っ直ぐに私を見て、言った。

「じゃあ、カリナ、ボクと結婚してよ。」




前の話を読む

続きはまた明日

目次





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最終更新日  2010年01月17日 21時42分24秒
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