りらっくママの日々

りらっくママの日々

2010年04月26日
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カテゴリ: ある女の話:サキ
今日の日記







赤木くんが私の手をギュッと握る。

すっかり秋になった冷たい夜の空気の中で、
包まれた手だけが温かい。

そして、その手をふりはらえない自分がいた。

「オマエの男がどんなヤツか知らないけど、俺は下心あるから。
オマエのこと友達として見て無いから。
友達じゃねーし。」

赤木くんは一気にそう言うと、


いきなり離れた手が、寒い。

「行こ。帰ろう。」

赤木くんがこっちを見て言った。

私は立ち上がらなかった。

このまま帰りたくない。

自分で自分がよくわからない。

私は…
いわゆるチキンってやつだ。

いざ、気になってる人が自分に来たら、ビビってしまっている。

どうしよう?!って思ってる自分がいる。

頭の上から赤木くんの声がする。


何か言ったらスッキリしたわ、俺。
だから…」

赤木くんは、ためらうような息を吐いた。

「もう、来んなよ。
俺、勘違いすっから。」


無理に笑顔を作ったのがわかる。

”来んなよ”って言葉が頭に響いて、
胸の奥がズキンと痛んだ。

心が痛むって、表現だけじゃなくて、本当に胸が痛むんだって思った。
手が微かに震える。

そして、それが、もう私達の微妙な関係の終わりを告げている気がした。
赤木くんが背を向けようとしている。

どうすれば?
どうすれば、この仲をまだ続けられる?

どうすれば、彼を引き止められる?

「赤木くん…」

ようやく声をふりしぼった。

行かないで欲しい。

でも、そう思う自分はズルイ。

わかってるけど…

「もう…
口…きいて…
くれなくなっちゃう…?」

言葉といっしょに涙が出てきた。

いきなりのことで頭が回らない。

泣くのを止めなきゃって思うのに、
出ない言葉とは逆に、涙がこぼれる。

「え?
何言ってんの、オマエ?」

「友達じゃなくなったら…
もう、口きいてくれなくなっちゃう?」

「そんなことねーよ。」

赤木くんは座ってる私の目線に合わせてしゃがみ、
無理やり笑顔を作って、私の頬の涙を指でぬぐった。

「良かった…
困る。赤木くんとしゃべれないと…
私…」

自分が自分じゃ無くなったみたいだ。
こんなことで泣き出すなんて。

もっと自分は強いやつだと思っていた。
こんなことは初めてだった。

カッコ悪いって思って、急いでハンカチをカバンから出した。
でも、なんだか止らない。

どうしよう…。

「泣くなよ…」

ベンチの隣にまた座った赤木くんが、私を抱き寄せた。
温かい彼の胸に、そのまま身を任せる。

こんなことをしちゃいけないと思う。
そんな立場じゃ無い。

だけど…

赤木くんの温かい手の平が私の頬を包む。
彼の唇が頬に触れた。

顔を離すと目が合った。
私をじっとみつめる目。

顔が近付いてきた。
唇と唇が触れる。

柔らかい唇。

カズユキとは違う。
頬にあった手が頭の後ろ側にまわった。

抱きしめられた腕で腰を引き寄せられる。

柔らかく舌がからまる。吸われる。

拒めない。

私は、彼を拒めない…。

赤木くんは顔を離すとギュッと私を抱きしめた。

「好きだ…」

聞こえるかどうかのかすれた声が耳元に聞こえた。

今度は胸が締め付けられるように、キュンと音をたてた気がした。

赤木くんは、私を立ち上がらせて、肩を抱き寄せて歩かせた。

私の寮の方へ歩く。

何か言わないと…

でも言葉が出ない。


「でも、
俺は、都合がいい男になる気ねーから。」

赤木くんはそう言うと私から離れた。

「友達なら…側に来るなよ。
泣いてもダメだ。
じゃな…。」

淋しそうに言って、駅に向かって行く赤木くんの後姿を見てるだけで、
私は何も言えずに道に立っていた。

呼び止めたいのに…。

頭が真っ白になるって、
こういうことなんだと思った。





(続く)

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最終更新日  2010年04月26日 20時16分11秒
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