りらっくママの日々

りらっくママの日々

2010年05月11日
XML
カテゴリ: ある女の話:サキ
今日の日記






お店を出ると、赤木くんがスタスタと早足で人混みの中を歩いて行くので、
私は赤木くんの後を急いで付いて行く。

そんなに、私と早く離れたいの?
そんなに急いで戻りたいの?

酔っぱらいがぶつかってくる。

私も酔っぱらいだから、息が上がってきた。

酔いがまわっちゃう。

赤木くんと距離をつめることに、だんだん腹が立ってきた。



これ以上は、もうこんなに早く歩けない!
私は赤木くんの腕を引っ張った。

「あ…ゴメン。」

赤木くんは、ようやく気付いたって感じで立ち止まった。

私は溜息をついた。
泣きたい。
さっきまでの私の決意は、歩いてるうちに吹き飛んでしまった気がする。

「もう…
急いでるなら、ここで戻っていいよ。
帰れるから。
避けてるみたいだし…」


それに、避けてるのはオマエだろ?
ただ…ちょっと…
何て言っていいか、わからなかったから…」

ようやく赤木くんが立ち止まってくれたのに、
ようやく話ができる状態になったのに、


どこから?
何から話せばイイんだろ…

早足で歩いたせいか、思考が上手くまとまらない。

「何で来たんだよ。
オレ…
誤解するだろ…?」

赤木くんが私の目を覗き込む。
苦しそうな顔をしてる。

そんな目で見ないで欲しい。
私、そんなふうに想われるほどの人間じゃない。
でも…

やっぱり嬉しかった。
赤木くんの言葉が。

なのに、
こんなふうに私の心をグチャグチャにしてしまう赤木くんに腹を立てている自分もいた。
赤木くんが側にいると、どうしてこんなにメチャメチャになっちゃうんだろう?

「何で、何も言わないんだよ?」

「だって…
アンタが悪いんだもん…」

赤木くんがキョトンとした顔をした。

「は?
何でオレが悪いんだよ?」

「もう!
赤木くんがあんなことするから悪いんじゃない!」

もうダメだ。
私はこの人の前ではどうも子供になってしまう。
言葉が素直に言えない苛立ちが声になってしまう。

「ごめん…
悪かったよ。」

私と違って赤木くんは本当に悪かったとばかりに素直に謝るので、
こんな時に限って、大人になるなんてズルいと思った。
私はますますバツが悪くて、思わず目を逸らした。

「そうだよ…
お陰で私…頭の中、赤木くんのことでいっぱいになっちゃって…
赤木くんのことばっか、考えるようになっちゃって…」

ああ、もう、私、何言ってんのよ?

想いがグルグルまわる。
本音がグルグルまわる。

感情が口からあふれ出て抑えられない。

「別れた。
もう、サイテーでしょ?
私なんて、すごいサイテー!」

私は、顔を上げた。
赤木くんが戸惑っているのがわかる。

「でも、ちゃんと言うよ?
赤木くんが好き。すごい好き!
どうしてくれんの?
もう、アレで気が済んだとか、言わないでよね!」

こんなサイテーな私を好きになれる?
私は赤木くんの目をジッと見た。

赤木くんの驚いた顔。

いきなり視界が暗くなった。
体を強く抱きしめられる感触。
赤木くんの腕の中だ。

彼の鼓動と呼吸の音だけが聴こえる。
涙が出てきた。

ようやく安心できる場所をみつけた。

私も抱きしめ返す。

好き。
大好き。

彼の中に包まれた私は、
もう何も見えない。



(一章完)

(二章へ)

前の話を読む

目次





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2010年07月16日 19時33分09秒 コメント(6) | コメントを書く
[ある女の話:サキ] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

プロフィール

りらっくままハッシー!^o^

りらっくままハッシー!^o^

カレンダー

コメント新着

ゆうけんのまま @ Re:アカデミー賞授賞式(03/11) お久しぶりです。 お元気ですか。 私は何…

バックナンバー

2025年03月

キーワードサーチ

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: