りらっくママの日々

りらっくママの日々

2011年04月29日
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カテゴリ: ある女の話:サキ



「赤木くん、時間だよ。電話かかってきたよ。出ないとお金かかるよ。」

自分は身支度をバッチリ済ませて、
グッスリ眠ってるシンヤの体をゆすった。

目をつぶって無防備に寝てるシンヤはカワイイけど、
全く起きる気配が無い。

さっきフロントから電話がかかってきてしまっていた。
あと10分。

ほん、とにもう。。。
と寝顔を見て、ほっぺたをつつく。


「シンちゃん、朝ですよ。起きて。」

シンヤの顔がニヤリと笑って、
いきなりガバっと抱きしめられた。

「キャー!」

「おはよ。。」

「何よ~!起きてたの?」

「うん。今起きた。
俺、人に起こされることがあんまりないから、何か嬉しくなった。」

「え?そうなの?」

「俺んち親共稼ぎで、帰ってくるの遅くて、朝は俺とねーちゃんのが早いから。
ねーちゃん、絶対起こしに来ないし、


「そっかぁ。。」

心のどこかで、シンヤは大学生の自宅組お坊ちゃんって思ってたところがあった。

親元から出てきてるってことで、
私の方が絶対大人値が高いって思っていた。

けど、私は家を出るまでは、お母さんが起こしに来てくれていたし、


いっしょに朝を迎えなかったら、知らなかったことだったな…
そんなこと、ふと思った。

素早く身支度をしたシンヤはコーヒーを急いで飲んで、
歯ブラシだけもらってこーって、ちゃっかりしたことを言い、
さっさと車でホテルを出た。

二人で遅い朝食を兼ねた昼食にしたのはファミレスだった。

「赤木くんは自宅だから、起こしてもらってるんだと思ってた。」

「意外?」

「うん。」

「その言葉、よく言われる。」

「私も。目つきが悪いみたいで、よく誤解される。」

「だと思った。」

シンヤがハンバーグを頬張った。

「俺と似てる気がした。」

そんなこと思ってたんだ?

シンヤは親しくならないと、感情を顔に出さなかったり、
黙ってると、不機嫌なように見えるからなぁ。。

私は何となく、シンヤがハンバーグを食べる姿をジッと見てしまう。

私がシンヤを見ていたように、
いつから私のこと、そんなに見ていてくれたんだろう?

「何?」

「ううん、美味しそうに食べるな~と思って。」

「美味いよ。ハラ減ってたし。運動沢山したしね。」

「バッカじゃない!」

「サキってさ、結構現実的だよな~。
さっきも、お金かかるとかって~。
萎えるよな~。」

「朝なんだから、萎えて丁度イイじゃない。」

「うっわ!冷た!」

あはは!とシンヤは笑った。

私も笑った。

お互い講義をサボっちゃったけど、今日は特別だと思った。


結局夜までいっしょにいて、
帰り際に寮の近くに車を止めて、シンヤが言った。

「昨日、あの月が綺麗だったから、
サキに言いたいなーって思ってた。」

私も、同じことを思っていたので、驚いた。

「どこに行ってても、そんなこと思ってるよ、俺。
だから…
どこにいても、オマエが俺といっしょにいると思ってるから。」

シンヤが私の手を強く握った。

「うん。」

そんなことを言われると、また離れたくなくなる。

泣きそうになった私は、シンヤの手を強く握り返して、
降りたくなかったけど、車から降りて、手を降った。

シンヤが手を振り返す。

小さくなっていくシンヤの車を、
いなくなるまで、ずっと見ていた。

ガンバるから。

もしも、私が就職できなくて、
故郷に帰ることになったとしても、きっとイイ思い出になる。

でも、別れたくなんか無い。

とりあえず先の心配をするのは、やめようと思った。

今の積み重ねが未来への積み重ねだから。


年上の一人暮らしの彼とは家にいるばかりで、
まるで万年夫婦みたいな付き合いに、
付き合うってこんなものだろうと私は諦めていたんだと思う。

シンヤといつもいた学生生活は、
まるでドラマに出てくる恋愛モノみたいだった。

好きな音楽がいっしょだったから、二人で行って騒いだライブ。

ずっと行ってみたかった遊園地のパレード。

バイト仲間とみんなで行った遠出。

ボーリングにビリヤードにドライブ。

全てが夢のように楽しかった。

いつも、いつも、シンヤと手を繋いでいた。


就職活動のことでフリーターのワタナベくんが、
年上の功とばかりにアドバイスを授けていてくれたのに、
(じゃあナゼあなたは就職しない?と心で思っていたけど)
割って入ったかのようなシンヤの行動は、
後から聞いたら、ちょっとしたヤキモチみたいだった。

この前は、私の方がヤキモチみたいになったのにね。



本格的に別居したという姉のことで実家はバタついていた。

就職試験も落ちまくっていた。

ヤケクソ気味に試験を受けて、もっと思い出作ってやろう!
と、夏に帰省することをやめた途端、
あきらめかけていた就職がようやく決まった。

こっちでは有名じゃないけど、
地元では有名な大手の会社が支社を出すことになって、
私の出身地が影響して採用されたんだと思う。

ダメモトで受けた会社だったけど、
寮付きで、一般職でも総合職になれる可能性があること、
仕事の遣り甲斐など、
説明会を受けて良かったと思わせた会社だったから、
思いがけない嬉しい内定だった。

私は、本当に飛び跳ねて喜んで、
親でも友達でも無く、真っ先にシンヤに報告した。

その頃には、初めてシンヤと結ばれた朝に呼んだように、
赤木くんからシンちゃんと呼び方が変わっていた。

これで、ずっとシンちゃんといっしょにいることができる!

だけど、本当にドラマに出てくる恋愛モノのようなハプニングが、
私の身に振りかかった。



続く(多分5月3日更新)

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最終更新日  2011年05月03日 22時48分03秒
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