NIJIの夢

NIJIの夢

第5章:補 足


第5章:補 足 = 通信制高校(高校で習ったろ?) =


「どうしてココに中卒がいるワケッ!?」

耳に突き刺さる言葉・・・。
若い女子社員が放った言葉である。
それは紛れもなく私を指していた。

息子の手術が一段落ついて、ある会社の資材部にいた時の事である。

同じ間違いでも彼ならOKで、私だと 「中卒がっ・・・!」
私は毎月の棚卸の度に味わう、屈辱感を何とか払拭しようとしていた。

考えたあげく、通信制高校に通うことを決めたのである。

4年間は1日も休みが無かった。
仕事から帰ると机に向かう。
おまけに、日ごと会社の仕事を持ち込んでは恥をかかぬよう、密かに計算業務をしていたのだ。
棚卸に備えるためである。

夜中の3時4時になる事はざらだった。
目が極端に悪くなり始めたのはこの頃からである。
とは言っても、車の運転が出来ないほどではない。

土曜日はスクーリングに備えて、リポートの最終チェックと予習。
日曜日ごとのスクーリング。
手に持ち切れない程、各教科のリポートを提出するのである。
勿論赤点もある。
授業形態が違うだけで、全日制(3年制)と何ら変わりはないのである。
高校は単位制だから、全日制と同じ単位を取得しなければ卒業は出来ない。

無我夢中だった。
これを乗り越えないと ≪次の人生はない≫ ぐらいの勢いだったような気がする。

年に1回、通信制の全生徒が参加して ≪体験発表大会≫ というのがある。
いわゆる、生活体験であるが、私は2年生の時に優勝した。
タイトルは 「私の通信制」 である。
息子の奇病との闘い、職場のイジメを絡めて書いた。

審査委員長のコメントが今でも耳に焼き付いている。
「他の人に比べて郡を抜いています。」
「NIJI さんしか知り得ない苦悩が良く出ています。」
「この高校で人間不信が回復した・・・おめでとうございます。」
「優勝です!」


優勝を受けて、学校を代表し県大会に出場した。
ここでは準優勝だった。
私は人間らしい生活に戻れるならば何でもしようと決めていた。

いじめ抜かれて、悲惨な生活を送るのはもう沢山である。

通信制高校の入学もその一環である。
お蔭様で、無事4年間(最短)で卒業が出来た。
同期入学で、いまだに卒業をしていない人がいる。

会社の昼休み。
食後に皆でコーヒーを飲んでいた。
女の子のマグカップに 〔You are loved〕 と書いてあった。
何と訳すのだろうという事になり、それぞれが翻訳を始めた。
一人は「あなたは愛した。」と訳し、またもう一人は「あなたは愛された。」と訳した。
次々に「・・・・・。」 「あなたは愛する。」などと訳した。

誰からも正解が出てこない。
私はおもむろにマグカップを取り上げた。

「こ・れ・は・ね・・・ 〔あなたはみんなに愛されている〕 と訳すんだよ。」
「この場合の〔ed〕は過去形ではなく、 〔~されている〕 という受動態なんだ。」
「〔e〕が重なる場合は1つの〔e〕は省かれる。」
「そして、本来ならば 〔You are loved by us〕 となるが、 〔loved〕 の後は不特定多数を表すので省略されるんだ。」
「例えば、 〔by everybody〕 でも良いし、 〔by student’s〕 でも良い。」
「特定の場合は 〔You are loved by me〕 になる。」
〔君は私に愛されている〕 とね。」


「また、3角形の、Aの2乗+Bの2乗=Cの2乗でね・・・」
「君・た・ち・高・校・で・習・っ・た・ろ・・・?」

初めての、そして静かな静かな反撃であった。

私は次の日の朝礼で話した。
「私は中学校しか出ていません。迷惑を掛ける事があったと思います。」
「でも、皆さんに追いつくために、今、通信制高校に通っています。」


以来、彼女たちの私を見る目が一変した事は言うまでもない。
言葉のイジメを連発した女子社員が寿退社をする時の事である。
「NIJIさんは何でも知っていそうだから、これからも相談に乗ってくださいね。」
と、婚約者の前で言い放ったのである。

また、同僚として同じ資材部に籍を置いた○○君は、結婚式の媒酌人を頼んで来た。
断る理由はなかったが、彼の将来を考えて会社の上司を媒酌人に立てるようアドバイスした。
仲人は断ったが、事あるごとに相談が舞い込んで来る。

私は自分自身に勝ったと思っている。
例え、耐え切れないと思える試練を与えられても、乗り越える方法は必ずある。
どんなにイジメられても、 ≪必ず逆転をしてみせる≫ という決意があれば・・・。

どんな嫌な敵でも、必ず味方にする方法もある。
いや、必ず見つけ出す。
≪その場のTPOにおいて・・・≫
これが私の心情である。
争うこともなく、喧嘩をすることもなく、またオベンチャラを使う訳でもなく。

私は常に ≪人を愛する≫ という、強い意思を心の根底に持っている。

以下は、自作の拙い詩である。
悩みの底で書いた命からの叫びかも知れない。
身に降りかかる問題は、全て自らの責任であると自覚した時、口を吐いた詩である。

例え笑われてもかまわない。
私の心情であるから・・・・・。

人は 悠久の 時の流れの中で
耐え切れない 幾多の試練に 遭遇する
しかし NIJI は知っている
耐え切れないと思われる 幾多の試練の
あれもこれも 自らを成長させるために
すべて自らが願ったことを!

人は時代や国や そして親
環境さえも 選べずに生まれ来る
しかし NIJI は知っている
生まれ来た この国のこの時代
取り巻くその環境も それらのすべては
すべて自らが願ったことを!

そして NIJI は知っている
この国の この親に生まれ
与えられた試練が  いかに大きかろうと
それらのすべては 幸福と出逢うために
用意されて いたのだということを!

そしてそれらを 必ず乗り越えると
遠い昔に 約束したことを!
人を愛するために 自らが願い
この世に 生を受けたのだと!



第6章:御 礼〔ありがとうございました!〕につづく。





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