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サンガンピュールの物語(女科学者)6話



-6-

 翌朝のこと。寝苦しかったせいか、朋美は寝起きが悪かったようである。もう7月中旬である。本来ならば学校では1学期の終業式が行われており、子どもたちが楽しみにしている夏休みが始まる時期だが・・・。

 「んなああ・・・、朝からイライラするよ・・・」

 彼女の目の前には県道が通っているが、交通量は少なめだ。ドライバーが彼女に気づかないのも無理はない。
 「あっ、そうだ。母さんからもらったウィルスはと・・・。うん、まだ大丈夫だと思う。母さんの指示通り、男が多くいるところでそれを垂らせばいいんだよね。でもできるかなあ・・・」
 ウィルスのことはまだ忘れていなかった。

 その頃、サンガンピュールは警察署の判断で、他の署員と手分けして朝から県内を捜索することにした。彼女はジェットパックで空を飛び、県内北部を重点的に回っていた。何か重要な手がかりを見つけるためである。だが夏真っ盛りであるためかなり気温が上がっていた。軽く真夏日になっているだろう。

 「うわぁ、暑いよ、ほんとに。もうイライラしちゃうよ!」

 彼女はいつも、上下がつながっている1枚の茶色い服を着ている。しかし彼女の服は汗でビショビショになる気配だ。
 ところがその時だった。福島県方面に向かっていた彼女は、国道の道沿いで怪しい少女を発見した。

 「何か動きが挙動不審だなあ・・・。ん!?何かを大切そうに持ってる。もしかしたら、あの子が・・・!」

 彼女が見つけた少女は久米朋美だった。そしてサンガンピュールに気づいた朋美は逃げ始めた。そしてジェットパックの勢いで先回りして地上に降り、強引に取り押さえた。そしてサンガンピュールは言った。

 サンガンピュール「ちょっと、あんた!聞きたいことがあるんだけど」
 朋美「げっ!空から変なヤツが降ってきたよ!」
 「悪かったね」
 「そんなあんたに急に聞かれたくはないよ!」
 「あんたは久米朋美なの?ちょっと調べさせてほしいことがあるよ」
 「そうだよ、久米朋美だよ。・・・よく見たらサンガンピュールじゃん。やばいよ、これは!」
 「やばいって、どういうこと?それに確認するけど、あんたのお母さんはテロリストなんだよね?」
 「そ・・・そうだよ」
 「だったら、あたしに教えるんだね。そのテロリストのありかを」
 「お前なんかに教えるかっての」
 「はぁぁ!?今、何て言ったんだい?」
 「だから、お前なんかに教えるわけねえだろ」
 「このクソガキ・・・!」

 頭に血が上ったサンガンピュールはとっさにライトセイバーを取り出し、刃を朋美の胸に近づけた。
 「殺されたくなければ、テロリストの情報をあたしに教えな!教えるまであたしはこのライトセイバーをしまわないよ!」
 「う・・・」
 朋美はプレッシャーに負けたのか、目に涙が見えてきた。そして震えるように・・・
 「ふ・・・ふ・・・福島県の・・・」
 と言った。しかしサンガンピュールは
 「声が小さいよ!聞こえないよ!!」
 と怒鳴った。ついに脅しに屈した朋美は大きな声で
 「あたしのお母さんは、福島県の矢祭山に逃げました!」
と白状した。
 「よし、分かったよ。ありがとう」
サンガンピュールは自分のライトセイバーをしまった。

 そして携帯電話で土浦の警察本部長に連絡した。
 「本部長さん、あの女科学者の長女を捕まえました」
 「本当か!大したもんだな!で、場所はどこだ?」
 「えーっと、大子町で長女を捕まえました。彼女によりますと、テロリストたちは福島県の矢祭山に逃走しているそうです!」
 「矢祭山・・・?福島か!あっちゃ~、うちの管轄外だなあ。サンガンピュール君、君が現地に行くことはできないかね」

 なおもやり取りは続く。
 「う~ん、ジェットパックの燃料のこともありますし、残念ながら厳しいですね」
 「今、考えたことなのだが、その少女を一番近い警察署まで送ってくれないかい?こっちから詳しい話を聞きたいんだ」
 「はい、分かりました。確かあたしがいる場所は・・・里美村だそうです」
 「里美村というと・・・、常陸太田警察署になるな。」
 「常陸太田警察署ですか・・・、分かりました。あたしは運良く地図とコンパスを持っていますので、方角などを確かめて常陸太田に行きたいと思います」
 「そうか、分かりました。では常陸太田警察署に連絡しておきます。それと福島県警察にも協力を要請しよう」

 サンガンピュールは朋美を抱えたまま、ジェットパックを噴射させて東に向かった。朋美の発見と、母親の久米奈緒美のグループがどこに逃走しているのか、よく情報をつかむことができた。事件は一気に解決に向けて進展していったかに見えた。

 ( 第7話 に続く)

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