「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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15話 【花一匁】
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15話 (犬) 【花一匁】―ハナイチモンメ―
初めてのキスはとことんロマンチックに。
そう考えていたのに、昨夜は感情が昂ってしまい、行動が先になってしまった。
本当はもっと潮さんと一緒に居たかったし、触れたかった。
とはいえ秘密を打ち明けられた後では彼女を怖がらせるだけだったし、手腕に訴える真似など出来るはずもなく、引き下がるよりなかった。
そしていまの自分には課せられた使命があった。今日はそのために奔走しなければならない。
女傑四人衆は八女芙蓉、馬渕名子、香椎寧、黛八千代で構成されているが、今回に限っては八女さんから直接話を聞くことは出来ない。
そもそも素直に語ってくれるかどうかも怪しいので、まずは外堀から埋めていくことにして、3人の中で一番アクの弱い人物が誰かを考えた。
中でも香椎さんは別名『歩く辞書』とも言われ、知りたいことを訊くには打って付けだろう。比較的『人格者(まとも)』とも聞いている。
「……僕は香椎さんを呼んだはずですが」
12時のフードコート内。平日とあって客もまばらだ。
指定された席に着くと、香椎さんの姿はなく、代わりに社内でダントツ苦手な馬渕・黛の両先輩がいた。
馬渕さんは人気のドーナツ店で「憧れの箱買いをしてみたの!」と喜び勇みながら4人掛けテーブルの上に30センチ四方のそれを広げた。
視覚と嗅覚が『このドーナツ、甘さMAXにつき要注意』と警告を発している。
1ダースの迫力に尻込みをしかけている僕と違い、馬渕さんはうっとりと目を細め腕を伸ばす。その手が躊躇わずチョコレートドーナツを掴んだ。
「香椎は接客で抜けられないから、代わりに私たちが来たの。それとも私たちでは不服かしら?」
馬渕さんは特有の物言いで僕に威圧をかけつつ、ドーナツを頬張った。僕は無言で首を振る。
「まぁ美味しい! ほら、不破クンも遠慮せず食べて。男の子なんだから、たくさん食べなね?」
指し示された箱の中には生クリームがコーティングされたものやら、黒糖やざらめがまぶしてあるものまであり、とにかく甘そうだ。
見ているだけで胸やけを起こしてしまいそうだが、親切で言ってくれてるのは分かったので、オーソドックスなプレーンドーナツを掴んだ。
1口齧ってはブラックコーヒーを飲む。そんな僕を意味深に眺めているのは、好奇心の塊である黛さんだ。
「不破君が香椎に面会だなんて、何かあったのね。これは面白い話が聞けそうよ、馬渕」
潮さん情報によれば、黛さんは自分の興味ある範囲でしか動かないという話だ。
話術次第では味方にも成り得るし、情報も引き出せるだろう。ツマラナイと判断されれば情報は引き出せないし、警戒されてしまう相手でもある。
その黛さんの手が生クリームドーナツを掴む。
「あん。それ、不破クンの分なのにぃ」
「こんな甘いの食べないわよ、カレ」
さて、どこから尋ねていけばいいのか……。でも僕には時間がない。回りくどくならないよう、尋ねたいポイントを押さえながら質問した。
「潮さんと伊神さんの事件を聞きました。問題が起きた時、ソマさんと八女さんも同じ場所にいたんですよね?
いの一番に突っ掛かりそうな八女さんが都築に対して尻込みしてしまったのは何故ですか? 何か理由でも?」
「あぁ……。その話なの。……そう。……理由ですって? 勿論大アリよ。その経緯も知ってる。でも、キミに言っていいものかどうか」
八女さんのプライバシーを盾に、黛さんはそっけない返事だ。向かいでドーナツを頬張っていた馬渕さんが、柔らかい声音で窘めた。
「あら待って、黛。待ってってば」
気付けば半ダースが既に空っぽになっている。馬渕さんは唇の端についたドーナツの欠片を舌でぺろりと拭うとふわりと笑った。
「何を待つの、馬渕。あれは芙蓉にとってのトップシークレット。教えるわけにはいかないでしょう」
「だって。不破クンには借りがあるもの。まゆ、あなたにもあるはずよ」
一瞬『まゆって誰だ?』と思ったものの、あぁ、黛のまゆかと思い至る。馬渕さんが黛さんをそう呼んでいるなんて、初めて知った。
次に、『借りって何だ?』と新たな謎に遭遇する。貸し借りなどした覚えはないのだが。
(……あぁ。ひょっとして……)
社員証を作り直す折、女傑らに証明写真を奪われた過去がある。馬渕さんはそのドタバタ劇の一件を詫びようと言っているのか。
だとしたら、なぜあれしきのことが貸しに相当するのか分からない。件の暴挙には唖然としたが、目くじらを立てるほどのことでもなかった。
ひょっとして女傑たちは、僕がいつ困ってもいいように、わざと貸し借りの機会を与えてくれていたのだろうか。
(……いや、まさかな。そんな殊勝なことをする先輩方とも思えないし。単なる偶然だ)
「あのね、不破クン? 教えてあげたいのは山々だけど、さすがに個人情報は漏洩できないわ。分かってくれる?」
「それは……えぇ」
女傑が拒むのも当然だ。一緒にいるからには仲間思いの4人なのだろうし、友情を育んできた大切なひとをおいそれと売れない気持ちはよく分かる。
「だから、ね? こうしましょう?」
馬渕さんのあとは、黛さんが引き継いだ。
「私たちが、芙蓉の口から直接君に語らせる努力をする。これでどう?」
黛さんの宣言に、馬渕さんは「ふふ、さすがまゆ。そうこなくっちゃ!」と女神のような慈愛に満ちた微笑みを零す。
僕は目を瞠った。果たしてそんな奇跡は起こるのだろうか。
「ね、不破クン。あなたが動いてるのは……誰のため?」
そう尋ねてくる馬渕さんは無邪気そのものだ。まるで、どう答えても受け入れてくれそうなほどに。
でも僕は何となく『八女さん』と答えてはいけないような気がした。
八女さんの心配をしているようでいて、その実、野次馬根性が1%もないとは言い切れない僕の心など、彼女たちにはお見通しだろう。
「自分のためです」
「……あらぁ。そうなの? 芙蓉のためじゃないの」
「潮さんを振り向かせるために、点数稼ぎしたいんです」
「芙蓉の過去を知ることが、どう潮ちゃんと繋がるの?」
「潮さんから伊神さんとのことを聞いて、おかしいと思ったんです。
本部の、権力を振りかざした無茶振りが横行してることとか、八女さんがサービスカウンターから異動したこととか。
ユナイソンで何が起きてるんだろうって。『良くないこと』が起きてるなら、それが何か、本当のことを僕は知りたい」
「あのね、不破クン。おねーさんから忠告よ? 入社3年目のあなたが出しゃばることじゃないわ」
驚いたことに、馬渕さんはまだ例の微笑みを湛えていた。僕はぞっとする。さすがに肝が据わり過ぎじゃないだろうか、このひと――。
「ですが」
「好奇心というものは厄介ね。突っ走っちゃって……。見るに耐えられないわ。どうせ私が止めたって聞かないんでしょう?」
「……はい」
「甘ちゃんね。コネもない、情報もない、力もない、味方もいない。ないない尽くしのあなたはとてもじゃない、痛々しくて見ていられないわ」
「情報と味方を、あなた方に期待していたのですが……」
鼻で笑ったのはどちらの先輩だろう? それとも僕の気のせいだろうか。いや、聞き間違いなどではない。
相変わらず馬渕さんは女神の微笑みを維持したままだ。でもなんとなく、ふんと鼻を鳴らしたのは彼女のような気がした。
「私たちは芙蓉の味方であって、あなたの味方じゃないわ。貸しは返すけど、『芙蓉の口から直接君に語らせる努力をする』ことでチャラよ」
「……不破君。馬渕を責めないであげて。当時は私たちも動いたのよ。でも……駄目だった」
「それで馬渕さんたち3人は諦めたんですね」
「そうよぉ。芙蓉に気付かれないように頑張ってはみたけれど、何をしても無駄だと思い知らされたから諦めたの」
その言葉に、やっと馬渕さんは人間らしい感情を表に出した。このひとの悔しそうな顔は初めて見た。……なんて悲し気なんだろう。
「下手に藪を突いて蛇が出てきたらどうするの? それこそ取り返しがつかないわ。次の標的になりそうだったから、引くしかなかった」
溜息混じりに黛さんは言った。口では『諦めた』と言っても、心の方では納得できていないことがありありと分かる物言いだった。
「悔しくないんですか?」
僕のことばにハッと顔を上げたのは馬渕さんだった。いまや女神の微笑みを完全に放棄した顔で、彼女は言う。
「……悔しいに決まってるじゃない? 大切な親友を傷付けられて、復讐も出来ずにいる。その上何が起きているのかを知る術もないんだから」
「僕がその役を担います。だから力とコネを貸してください。あと、『歩く辞書』の香椎さんも」
「馬渕の話、聞いてなかった? あなたが動いたって無理よ。やめておきなさい」
「それでも僕は……諦めません。真実を突き止めたい。そうすれば潮さんも安心するだろうから」
睨み合いは、馬渕さんが苦笑した時点で終わった。
「……やれやれ、潮ちゃんも大変ね。こんな頑固な子に好かれちゃって。……ねぇまゆ。私ね、いっそ、この子のこと、信じてみようと思うの」
「馬渕」
「だって~~~。この子ってば、なんだか伊神クンを相手にしてるみたいで、どうも苦手なのよ~~~。私のペースが乱されちゃう!」
「だからって――」
「まゆ。私たち4人、あの日から大人しかったじゃない? そろそろイイ子を続けるのも飽きちゃったわ。
情報も少しずつだけど集まってきたし、本気で挑めば、もしかしたらいいとこまでいけるかも……」
「だからって……。私はまだ迷ってるわ」
「じゃあ、芙蓉に決めて貰いましょう? それならどう?」
「……そうね。流れを見極めてからにするわ」
「決まりね。――不破クン。私たちは結局、4人でひとつなのかもしれない。芙蓉の出方に従うことにするわ」
「それで構いません」
どうやら鍵を握っているのは八女さんのようだ。
どちらにせよ、僕も八女さんの出方を待つしかない。吉報を待つことにした。
2008.10.23
2019.05.24
2023.02.17
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