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2016.11.08

『三蔵、妊娠したってよ』シリーズ第百十五段　～増幅～　映画『西遊記之孫悟空三打白骨精』によせて

カテゴリ： ◆映画・TV・華流・韓流・ショービズ

↓前回です♪
第百十四段～髭そり～

★☆★☆
第百十四段

シアンの浴室は薄暗くて広い。

高いドーム型天井にステンドグラス。

いくつかの、形状や大きさの違う湯船。

いくつかの、形状や大きさの違うシャワー。

いくつかの、形状や大きさの違う浴室に必要と思われるあれやこれや。

あるいはまた不必要かもしれないあれやこれや。

、、、、、、、、、、、、、、いかがわしげな装置類。

それらのいくつかに取り付けられた手枷足枷を見て、ジョンは

胸が悪くなった。

ここのドールはそれの持つ目的に相応しい使用をされていたらしい。

享楽のための玩具。

どちらが吊るされていたかは別として、

それがそもそもの正しいドールの取り扱い方なのだ。

しかしなんでまたシアンは、これらを

このままにしておくのだろうか？

ん？放置しているのはホワイトか？

どちらにしても、

ジョンははたと、その意味ではアレクは一般的でない主人であることに

思い至った。

シアンの母親アズールはアレクの正室だった。

アレクは彼女を片時も自分の傍から離そうとはしなかった。

アレクにとってのアズールは女神のように崇拝する対象だったのだ。

『兄はアズールに触れる時、指がいつも震えていた。

アズールの肩を引き寄せる時、まるで壊れ物を扱うように

用心深くしていたわ。

実際アズールはガラス細工のように繊細で弱々しかったの。

彼女の素顔はこの世のものとは思われない美しさで

兄は自分の他には私だけにしかその顔を見ることを許さなかった。

もちろんドールはそうしたものだけれど。

私もすっかり彼女の美しさの虜になったものよ。』

後宮には側室も置かず、いつも空っぽ。

今でもそうだ。

純情なアレク。

アズール亡き後、彼女のクローンを宮殿に迎えた。

普通なら、そのクローンは後妻にするのが順当だ。

だが彼はその子を自分とアズールの息子とした。

アレクは、亡き妻に生き写しの息子を得ることで、

悼むことを決して忘れることのない残りの人生を選んだのだ。

果たして

ドールを息子にしている主(あるじ)はアレクの他にもいるのだろうか。

しかし

ドールはドールだ。

アレクはシアンに、劣情を抱いたりしなかったのだろうか。

ジョンは頭を強く振った。

俺はどうかしている。

いやな想像を脳から追い出した。

ぐるりと周囲を見回し

寝室の家具同様、手の込んだ装飾が施された姿見や

壁や床の色とりどりのタイルをしみじみと見た。

ジョンの見たことの無い知らない世界の景色を模しているようだった。

ここの屋敷の元主は、大金持ちのご多分にもれず懐古趣味。

しかも出所の定かでない古書や

お伽噺の中の時代考証のいい加減な挿絵に影響された珍妙な

地球もどきのどこかなのだろうか？

うっそうと広がる熱帯雨林、巨大シダ類の黒々とした緑。

そして極彩色の毒々しい蘭の群生。

ところどころに獰猛そうな

猫科の美しい猛獣が隠れ潜んでいる、

その金色に光る目。

ペイントされビジューや金銀で装飾された煌びやかな象の群れの、

荘厳なる行進。

辿り辿っても何処にも行きつけないだまし絵。

眠る悲しげな孔雀たち。

遠い星座。流れ星。

彼方のラビリンス。

油断するとこの世界に吸い込まれて

永遠に終わりの無い旅を続ける巡礼者になってしまいそうだ。

こんな淋しい悲しい場所で、シアンはひとり湯あみをしているのか。

ここは死の世界だ。

黄泉の国だ。

生きた人間には耐えられない。

初めは胸が締め付けられ、

次に床が溶けだしたように足下がおぼつかなくなった。

底なし沼になった床に呑み込まれ落ちていくような感覚。

淋し過ぎる。悲し過ぎる。恐ろしいほど。

制御できない。

なぜだ？

この描かれた景色のせいか？

あるいは見つけることのできない何かの装置が

人の心の特定の思いを捕えて巨大化させるのだろうか？

増幅。増幅。そして増幅。

見る見る間に膨らんで襲いかかってきた感情の波に

ジョンは翻弄されそうになっていた。

シアンの底知れない孤独。

自ら望んだこととはいえ、主人と切り離されて寄る辺ないドール。

心ない男のための分化。

彼の途方途轍もない不安や淋しさが、

ジョンの心に凶暴なエネルギーとなってなだれ込んで来た。

ドールは、アレクがアズールを愛したように愛されるべきなんだ。

盲目的に狂ったように溺愛されるべきなんだ。

たとえ主(あるじ)が変態であろうとも。

それがドールの幸せなのだから。

つづく

↓次回です♪
第百十六段　～哀しきオリッシー～

『三蔵、妊娠したってよ』シリーズ早見表
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からどうぞ♪

ウィリアム・フォン、馮紹峰、フォン・シャオフォン、ペン・シャオペン　William Feng 以上全部同じ人（笑）

『三蔵、妊娠したってよ』シリーズ早見表ってことでヨロシク♪

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Last updated 2016.11.14 23:42:47

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すみれゆきの

いつのまにか母娘でやることになったブログです。娘は主に音楽関係を2017.04あたりから担当。 '17.07.22現在『アジアの音楽』『アジア以外の音楽』の両カテ以外の音楽の記事は娘です。私は映画やドラマなどを中心に気功や太極拳などの情報ファッションや猫や人間の健康に関することなどを発信してます。混乱します？そうでもない？娘は几帳面。私はイイカゲン。そんな感じの見分け方で(笑)

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