可愛いに間に合わない(ファッションと猫と通販な日々)

< 新しい記事

新着記事一覧(全43961件)

過去の記事 >

2016.11.25

『三蔵、妊娠したってよ』シリーズ第百十八段　～パラノイア～　映画『西遊記之孫悟空三打白骨精』によせて

カテゴリ： ◆映画・TV・華流・韓流・ショービズ

↓前回です♪
第百十七段～誰を観客に踊ったのだ。あの煽情的なダンスを～

★☆★☆
第百十八段

シアンは首に食い込むジョンの手の指を懸命に外そうとしながら

その目はジョンの目を食い入るように見ていた。

視線を反らしてはならなかった。

"彼に僕を信じさせるのだ。"

そして困難な呼吸にあえぎつつ

『僕は今までずっと街中の監視カメラのデータをチェックしていて

だから

一度も君に会ってないよ。』

と言った。

ジョンは怒鳴った。

『私を騙すな。

アバヤ姿のドールをコテージで見た』

『ああ』

シアンはやっと謎が解けたようなほっとした声をあげた。

『あれは違うよ。

多分、ニールのところに持ち込まれたドールだ。

僕はまだ会っていない。

それより

苦しいよ、ジョン。痛い。』

『信じろと？』

『うん。だって、僕じゃないもの。

そのドールはシアンタイプだけど。

シアンの声はすすり泣きのようだった。

彼は懸命に続けた。

『それに、逃げているのは僕の方じゃなくて君だろ？ジョン。

追いかけてるのは僕さ。

ほんとに痛いよ、ジョン。』

『長官のドール？』

『うん。』

『それがどうして殿下の庭に？』

『この屋敷にはドール専用区域が一ヶ所しかないからだよ。

ドールには人間とは違うものが色々必要なんだ。

照明をはじめとして、ね。

ここだとそれが全部そろってる。

僕らが居るのは冬の部屋。

彼女は夏の部屋に居る。

中庭を挟んで、それぞれが同じ設備を持って独立している。

彼女はニールの警告を忘れたんだろう。

庭には出るな、という。』

シアンは矢継ぎ早ではあるものの用心深く丁寧に説明し、

ジョンの強い不信と激しい怒りがおさまるきざしを彼の目の中に

探った。

自分の心配より、ジョンが心配でならなかった。

ジョンのパニック。

明らかに自分を失いかけている。

彼の目の奥についに見つけたものをシアンは恐れた。

パラノイア。

シアンは呼吸が満足にできない状態が長く続いて気が遠くなって来た。

なけなしの力を振り絞りぐいっと身体を振った。

思いがけずジョンはあっさり彼を離した。

シアンの喉がひゅーと鳴り、次の瞬間激しく咳き込んだ。

屈むとえづいて透明の液が床に流れ落ちた。

ジョンはそれを見てぞっとした。

俺はシアンを殺すところだった？

身体中の血が冷えてきて、

呆然とジョンは

咳き込みつつ喉をさすっているシアンを眺めた。

『信じて、ジョン。僕は君から逃げない。

君から逃げ出す時点で偽物だって判らなきゃだめだよ』

シアンはあえぎながら少し責める口調になってそう言い、

ジョンを捕まえて幼子にするように胸に強く抱き締めた。

シアンの胸はまだ大きく動いていた。

ジョンも呼吸は荒かったが、じっとしていた。

抱かれていることに気づいてもいない風だった。

自分の思いに囚われているのか固まっている。

『怯えないで、ジョン。僕は君を裏切らない。

君を愛しているんだ。絶対に逃げないよ。』

怯える？俺が？

ジョンは混乱した。

怯えるべきはお前だろう？

今だって手加減しなければ死んでいたんだぞ。

畜生。

何をやっているんだ俺は。

ジョンは次第にまともな神経になって来た。

冷静になって来て、自分を取り戻しつつあった。

それと同時にたった今の記憶が次第に曖昧になっていく。

ただ、これだけはハッキリとしている。

このドールを無傷で父親に会わせなければ、

何が起きたか気付いていない首なしの自分を

床から見上げるはめになる。

しかも、もうひとつ問題がある。

こちらのほうがもっと"大問題"だ。

分化。

こんなデリケートな時期に俺はこの男を締めあげた。

どうかしている。相手はガラス細工女の息子だぞ。

唐突に戻った正気が彼に早急にすべきことを悟らせた。

這いつくばって許しを請うのだ。

だがシアンはそれを許さず、彼を抱きしめる手を緩めなかった。

『いいんだ。いいんだよ、ジョン。こうしていよう。』

ジョンは薄れ行く記憶を定着させるために自分の暴発について

時系列を整えながら思考を巡らせた。

はじめはシアンの孤独を自分の孤独のように感じた。

まるでシアン自身であるかのように、

彼の気の触れそうなまでの

苦しみがジョンを苦しめた。

やがてひとりの男が現れた。

シアンに似た死んでいるかも知れない男がもうひとり。

そして今は生きている本物のシアンが、目の前に居る。

いったいどうなっているのか分からない。

俺はどうなってしまったのだ？

この浴室のろくでもない絵のせいだ。

いや、違うかもしれない。

何のせいなのか訳が分からない。

『あなたがひどく淋しがっていると思ったんだ。』

ジョンは押し付けられているシアンの首元に向かって

呆けたように呟いた。

言い訳にもならない言葉を。

シアンの首には妙な具合の皺が寄っていた。

剥がれかけた人工皮膚。

その今だに活発に上下している喉仏の辺りを凝視しながら言った。

『あなたが淋しさのあまり泣いていると』

するとシアンは少し顎を引きジョンの前髪にキスをした。

彼の熱い息がジョンの汗に濡れた額にかかった。

その途端に緊張したジョンの筋肉が弛緩した。

『泣いているのは君さ。』とシアンは言った。

『淋しくて泣き叫んだのは、君。

淋しくて悲しくて怒り狂ったのは、君だよ。

僕が淋しがり屋なのは、その通りだけれどね』

その言葉を理解できていない目がシアンを見上げた。

そこには狂気はもう無かった。

シアンは優しく微笑んだ。

『でも今は淋しくない。君を手に入れたから』

そしてジョンの額にもう一度キスして囁いた。

『バスタオルが落ちたね』

シアンは両手をジョンの腰に回していた。

『すてき』

彼はその手に力を込めた。

つづく

↓次回です♪
第百十九段　～愛に属するもの～

『三蔵、妊娠したってよ』シリーズ早見表
↑
からどうぞ♪

ウィリアム・フォン、馮紹峰、フォン・シャオフォン、ペン・シャオペン　William Feng 以上全部同じ人（笑）

『三蔵、妊娠したってよ』シリーズ早見表ってことでヨロシク♪

[堀込兄弟/ｷﾘﾝｼﾞ/小田和正/鈴木康博/ｵﾌｺｰｽ] カテゴリの記事

『可愛いに間に合わない』新着記事一覧
↑ここから目的の記事を探して頂く方が早いかもしれない？
もしもお気ににして頂けるならば、その時もここのほうが、、

お気に入りの記事を「いいね！」で応援しよう

Last updated 2016.11.28 18:37:27

[◆映画・TV・華流・韓流・ショービズ] カテゴリの最新記事

【毎日開催】

15記事にいいね！で1ポイント

10秒滞在

いいね! -- / --

次の日記を探す

おめでとうございます！
ミッションを達成しました。

※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。

Profile

すみれゆきの

いつのまにか母娘でやることになったブログです。娘は主に音楽関係を2017.04あたりから担当。 '17.07.22現在『アジアの音楽』『アジア以外の音楽』の両カテ以外の音楽の記事は娘です。私は映画やドラマなどを中心に気功や太極拳などの情報ファッションや猫や人間の健康に関することなどを発信してます。混乱します？そうでもない？娘は几帳面。私はイイカゲン。そんな感じの見分け方で(笑)

フォローする

Keyword Search

▼キーワード検索

Calendar

スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧