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2017.01.08

『三蔵、妊娠したってよ』シリーズ第百二十三段　～微笑～　映画『西遊記之孫悟空三打白骨精』によせて

カテゴリ： ◆映画・TV・華流・韓流・ショービズ

↓前回です♪
第百二十二段　～美しい男～

★☆★☆
第百二十三段

ホワイトはロバートの承諾に心から安堵したような微笑を

浮かべた。

ロバートはその微笑に微笑で応え、密かに考えた。

俺にはこの男が解かっている。

ニール・ホワイトという男は一見、無害に見える。

理想に燃えているだけの怖いもの知らずの正義の徒。

だが、俺は騙されない。油断ならない奴だ。

今は大人しく火星長官に収まっているが、

果たして今後もずっとそうだろうか？

あの度胸とこの頭の良さで。

二年前の思いがけない休戦。

そして直後の和平交渉の席に

たった今棺から出て来たばかりのカビ臭い

ミイラのような長老連中をぞろぞろ引き連れ

土星の大統領官邸に現れたうら若き指揮官は輝くばかりの美貌、

そしてその女のような外見に似合わぬ堂々たる交渉ぶりを見せて、

政府側の列席者たちを驚愕させた。

しかし、これほど若いとは誰も想像していなかった。

どう見ても二十代半場だ。

それ故当時、王子の誘拐の噂があり

ホワイトが若いばかりでなくあまりに美しかったため

政府側交渉委員の全員が彼を

総帥以外一部の人間しか王子の声や素顔を知る者はいなかったので。。

もちろんある意味ロバートも知っているひとりではあったが。

声は喉にボイスチェンジシートを貼り付ければ

どのようにも変えられる。

そしてまたドールは人工皮膚で身体全体を覆う処置をする時に

在る程度は自由に顔形を変えることもできるから

その疑いは無理からぬことだった。。

まあ、人工皮膚を溶かす薬剤をかけてやれば

すぐに解決する話しではあったが

かける薬剤がほんのちょっとであろうとも

もしも中身が本当に殿下であった場合

皇帝からどれほどの怒りを買うことになるであろうと思うと、

誰も実行できなかったのだ。

人工皮膚がなければ、特殊な照明以外の下では

ドールの身体は焼けてしまうのだ。

シアン殿下を例え一ミリでも傷つけることは、決して許されない。

彼は皇帝の生命そのものだから。

ホワイトに化けたシアン殿下かもしれない。

その疑いの消え去らないまま会議は始まり

皆の思いに符合するように

交渉の進み具合は、まるで、あらかじめアレクとホワイトの間で

すでに既定路線がさだめられており、それに沿って全てが

ジオラマを流れる川の水のように

不自然なまでにスムーズに運ばれているようであった。

実際にはホワイトは直接アレクと交渉することはなく、

総帥に代わってオブライエン大統領が委員たちとともに

席についていた。

むろん公にはされていなかったが宮廷でことのなりゆきを総帥が

スクリーンを通して見守っていたに違いないが

ほんの時たまオブライエンはアレクに連絡をとり了承を取り付けたり

簡単な報告をしたりして見せるほかは

首を傾げたくなるような図々しい要求にも

淡々と大統領判断で応じていた。

どちらの交渉委員たちも出る幕はほとんどなかったと言ってよい。

人質の王子が自らを盾に

世界政府側に無理難題を突きつけているのではと

誰もが確信しはじめていた。

期せずしてその疑念が晴れることになったのは

交渉の席に一度だけ顔を出したアレクが

ホワイトを臣下のように扱ったからだった。

アレクはホワイトに手を差し出し、ホワイトが跪くのを要求した。

その瞬間、皆の疑いはさっぱりと晴れた。この男はシアンではない。

アレクは、シアンに対しては、自分の方が跪くほどの溺愛ぶりなのだ。

それほどアレクはシアンを崇め奉っていた。

ホワイトがシアンではないとすると

つまりアレクは和平交渉中の相手に喧嘩を売ったのだった。

敵方の代表に対して拝跪を求めた。

こちらも総帥なら向こうも総帥である。

その息詰まる瞬間の皆の予想はこうだった。

当然ホワイトはプライドからその要求をはねつけるであろう。

アレクは無礼を許さず、彼を手打ちにする。

休戦協定は取り消され、ミイラたちは全員その場で処刑。

トップを失った反政府軍は遠からず殲滅。

なるほどそういう手もあったか、と世界政府側は溜飲を下げる。

だがその甘い予想は裏切られた。

なぜなら誇り高いはずの反政府軍の総大将ニール・ホワイトは

何の躊躇いも見せずしずしずと進み出て優雅に跪き、

アレク・コーネリアスの手をとり口づけをした。

その時、敵味方の人々の間に言葉にならないどよめきが広がった。

それは屈辱的な服従ディスプレイとはいえ、

一幅の名画のように見えたからだった。

その若武者の神々しいばかりの風格と度量を全員に見せつける

絶好の舞台をアレクは提供したようなものだった。

『面(おもて)を上げよ』

もちろんアレクはそのような空気にびくりともしない。

役者が違うのだ。

彼は厳かに命じた。

ホワイトは、はいと言って跪いたまま、ゆっくり顔を上げ、

アレクに端正な面差しを見せた。

アレクはキスされたばかりの手でその青年の顎を掴んで

さらに上を向かせた。

無防備に細長い首が晒された。

少しの間、アレクは値踏みをするかのようにホワイトの顎を

上下左右に動かし、若武者の顔の隅から隅までを眺めまわした。

その後、彼の目を鋭い眼光で睨みつけると

『そなたのこの身命は誰のものだ？』

抑えた低い声でそう訊ねた。

『御身様のものでございます。』

ホワイトにはやはり躊躇はなかった。

いさぎのよい即答だった。

『そうだ。

朕が望めばいつでもそなたを亡き者にできる。

夢々そのことを忘れるでない。』

『承知いたしております』

ホワイトはかしこまりそう答えたが、直後その唇にふっと笑みが

こぼれたように見えた。

そのせいか一瞬アレクは表情を凍りつかせた。

だがそれだけだった。たちまち冷淡さを取り戻し

塵を払うように手を動かすと

『下がれ』と言った。

ホワイトが手を胸に俯き、背中を見せずに下がるのを見届けてから

壮麗な緋色のマントをくるりと翻し、

巨人は大股で大会議場を出て行った。

その様子は大山が移動したようで、その場に居た全員が

しばらく時が止まったかのごとく無言で動けなかった。

つづく

↓次回です♪
第百二十四段　～曲者～

『三蔵、妊娠したってよ』シリーズ早見表
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からどうぞ♪

ウィリアム・フォン、馮紹峰、フォン・シャオフォン、ペン・シャオペン　William Feng 以上全部同じ人（笑）

『三蔵、妊娠したってよ』シリーズ早見表ってことでヨロシク♪

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すみれゆきの

いつのまにか母娘でやることになったブログです。娘は主に音楽関係を2017.04あたりから担当。 '17.07.22現在『アジアの音楽』『アジア以外の音楽』の両カテ以外の音楽の記事は娘です。私は映画やドラマなどを中心に気功や太極拳などの情報ファッションや猫や人間の健康に関することなどを発信してます。混乱します？そうでもない？娘は几帳面。私はイイカゲン。そんな感じの見分け方で(笑)

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