主婦は、夜の商売に足を踏み入れてみて初めて、自分が勘違いしていたことに気付く。
働いている女の子たちは皆、真面目でプロフェッショナルだった。
主婦は、我慢して5時間座っていれば、帰りには現金がもらえる~くらいの軽い気持ちだったが
女の子たちは皆、お店のために努力をしていた。
た~だお客さんとしゃべって酒飲んでタバコ吸って・・・と思っていたのだが・・・
まず、お店の売り上げのためにお客と一緒にお酒を飲み、高いボトルを入れてもらう。
そして、お客さんの喜ぶ話題を提供し、その場を盛り上げ、楽しくお酒を飲んで、満足して帰ってもらう。
主婦は、夜の商売を軽蔑していた自分が恥ずかしくなったが、なかなかみんなのように努力ができなかった。
お客さんの種類?はさまざまで、いっつも1人で来る人、いっつも大勢で来る人、いっつも同じメンバーで来る人、酔っ払っても紳士な人、酔っ払うと人が変わる人、酔っ払うと眠っちゃう人、酔っ払うと説教する人、結婚相手(彼女)になってくれる人を探しに来る人、ナンパ(遊び)をしに来る人、エッチなことをする人・・・
女の子たちは皆、「自分のお客さん」をいっぱい持っていた。
主婦にも一応数名ほど、できたようだ。
「類は友を呼ぶ」の言葉通り、うれしいことに主婦の「お客さん」は真面目でジェントルマンな人ばかりだった。
・・・が、真面目ゆえに皆、真剣に結婚相手を探している人たちだった。
主婦は、真面目だが、夜の自分は全て嘘で固めてある・・・。
もちろん「独身」ということになっていた。
主婦は、家に帰ればダンナがいるので、ひいきにしてくれるお客さんには友達感覚で接していて、「お酒の席」での会話だから、いくら口説かれたって笑ってかわしていた。
ある日、夜の仕事が終わり、女の子たちと一緒に駐車場まで歩いていたら、お店の№1といわれている「アツコちゃん」がいきなり「Hさあ~ん!」と、大声で叫びだす・・・。
車に乗って信号待ちをしている男性に向かって何度も叫んでるのだが、本人は全然気付かない。
そのうちに信号が変わり、男性はこちらに気付かぬまま通り過ぎていってしまった。
私は、その男性の横顔だけ見た。
怖かった・・・!
アツコちゃんが言った。
「Hさんってねえ~、ベンツ乗ってんだよお~」
・・・なにやらアツコちゃんのお客さんらしい・・・。
向こうは気付いていなかったが、これが主婦とHさんの出会いということになる。
主婦の第一印象は「怖い」だった・・・。