Hさんがお店に来てくれるようになってから、主婦は何となく夜のバイトが楽しくなってきた。
週3回のバイトのうち1回は、Hさんのお相手ができる。
お店の女の子たちが「自分のお客さん」を増やそうと努力する意味がやっとわかった。
自分のお客さんが来てくれると、優先的にそのお客さんのお相手ができるわけで、緊張しながら知らないお客さんの相手をしなくても済む。
自分のお客さんがイッパイいて、コンスタントにお店に来てくれれば、ずっと自分のお客さんだけを接待してればいいので自分自身が楽になるというわけだ。
なるほど~、だから自分のお客さんが少ない主婦は、夜のお仕事が辛かったのだ。
Hさんとは、肩の力を抜いておしゃべりができた。
いつもは、お客さんの顔色を伺いながら、お客さんに合わせて、お客さんの気分を損ねないように言葉を選んでしゃべるので、とても神経を使うし疲れる。
Hさんは、いつも友達と楽しくお酒を飲みながら、その場を盛り上げてくれる存在感のある人だった。
主婦は自分のダンナと正反対のHさんがうらやましく思えたと同時に、素直に「好意」「憧れ」を抱いた。
そうそう、いつの間にかHさんは、アツコちゃんではなく「主婦のお客さん」になっていたようだ。