海洋冒険小説の家

海洋冒険小説の家

(8)心がうきうきしてくるのだった。

  (8)

 旅宿・日野屋で、瀧と助左衛門は菅谷九右衛門と綿密な打ち合わせをし、安土城天主」での衣装展覧の催しを十日後の二十二にすること、刻限は戌の上刻(午後7時)で、蝋燭などの明かりは、双方で用意すること、舞台の後ろの座敷と、駒の牧絵の間の座敷、広縁、納戸を使わせてもらうことなどを決めた。
 瀧は上気した顔で決意をみなぎらせていた。堺の女の力を、実力日本一の権力者に見せるのだ。闘争心が、男の戦のように沸いてきているようだった。瀧は一泊せずにすぐ堺に帰るという。先発してきた十人も帰るという。助左衛門は、そこをなんとか説得して、もう申の刻(午後4時)を過ぎているので、帰るには遅いことを納得させた。そのかわり、書状を堺と京のあちこちに出して、準備させることにした。九右衛門はしぶい顔をしたが、結局、書状をはこびのを、引き受けた。彼の家来の何人かは、今夜は、忙しい思いをすることだろう。なに、かまうものか。どんどんつかえばいいのだ。
 われわれの後ろには、お市の方が付いている。とにかく、安全だといっても、京の町中を夜はとおりたくない。なにが起こるかわからないのだ。人の多いところは色々なものが、即ち、悪党もいるものだある。
                   (続く)


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