海洋冒険小説の家

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(2)海龍丸、播磨沖にあらわる



 来た船に乗せられ、松井友閑のところへつれていかれた。
 「おお、助左衛門殿、来られたか。えらいことがおこった」
 「なにがでござる」
 「黒旗の海賊の頭目の六条の院が堺を攻めるという知らせが参った」 
 「えっ、どういうことでっか?」
 「六条の院の乗ってる船、海龍丸が播磨沖に現れ、九鬼水軍の補給船を撃破したときに、次は堺だ!、と叫んでいたそうだ。播磨攻めの羽柴筑前守殿と九鬼水軍から早馬で知らせて参った。助左衛門殿は如何思われるか」
 「うーん、六条の院が堺をやると言っておるのであれば、きゃつらは来るでしょう」
 「如何いたす?」
 「人出を集めて、南海丸で戦う以外ないでしょう」
 「じゃあ、やってくれるか」
 「われわれの町に海賊どもを一歩でも入れる気はありません。ただ・・」
 「ただ?」
 「この戦では多くの者が死に、怪我を負うでしょう。そのものたちの後のことをしっかりみてくれますか」
 「約束いたす。あとの面倒はまかせてほしい。この戦でまけることあらば、堺は勿論のこと、本願寺でも形勢は逆転するだろう。必ず勝ってもらいたい」
 丸坊主の松井友閑は、透明な眼で助左衛門の眼をじっと見た。その眼は危機感をはらんでいたが、冷静であった。
 「それでは、堺と近隣の村に、水夫(かこ)経験者の志願を募る高札を立ててもらいたい、と。いま、南海丸には土佐・中村までの回航要員しかいませんのでね。それから、南海丸の足軽組頭や大砲の扱える足軽もいるので、これは書状をひとりひとりに手渡してもらうための人を貸してもらいたい」
 「委細承知した。手配しよう」
               (続く)


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