海洋冒険小説の家

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(6)まず、緒戦の海戦



 助左衛門は直感した。ひょっとして、あれは天神丸と海賊らの船ではないかと。播磨に抜けるには、淡路島と明石の漁港の間の狭い海峡を通らねばならず、それで北上してきたのではないか。そうであれば、とりあえず一戦交えることになる。堺の船を略奪したことへの復讐心がめらめらと、体中に広がった。
 「吉兵衛、進路はこのまま、帆を張り増して、あの船に追いついてくれ」
 南海丸はいっぺんに騒がしくなった。
 見張り台から声が届いた。
 「天神丸のようでーす」
 船上で歓声が巻き起こった。
 「海戦用意!」
 これで、船の上の者全員に仕事が出来たことになる。甲板には水と砂がまかれ、大砲には火薬と弾が込められた。
 六兵衛がやってきて、
 「戦の準備は完了だ」
 「うむ。向うもこっちが分かるだろうから、逃げるだろうが、さて、どうしたものか」
 「じゃあ、黒旗の海賊の旗をてっぺんに掲げてみては。海龍丸と南海丸は船の大きさは同じやろ?」
 「まあ、ね。しかし、帆の形が違うから間違うことはないと思うが、しかし、やってみる価値はあるかもしれないな。相手が混乱すれば、追いつけるからな」

 帆布修理係が大急ぎで、黒の大四角形に黄色の羽と足を広げた鷹の絵柄に切り抜いた布を縫い付けていた。うまい出来で、遠目には本物に見えるだろう。
 早速、赤の長旗と鯨の旗が下ろされ、代わりに海賊旗が掲げられた。また、船尾旗の堺の旗の代わりに、博多の船尾旗が取り付けられた。
 心持ち、天神丸と海賊船は速度を落としたようだった。どんどん南海丸は近づいて行った。海賊船は小型のジャンクで、小さい大砲4挺を載せていた。警戒心もなく近づいてきた。
 「おーい、どこの船だぁー」
 海賊船の船頭が怒鳴った。
              (続く)



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