海洋冒険小説の家

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(7)海賊船を撃沈



 「堺の船だぁーっ」
 助左衛門は大声で返事した。言ってにやっとした。
 向こうのほうはすこしけげんな顔をした船頭の顔が見えた。
 「吉兵衛、黒旗を降ろしてこっちの旗を揚げてくれ」
 するっするっと、旗が上がっていき、敵船の船頭がびっくりした顔をして、こちらに向かって怒鳴った。
 「だましたなー」
 「六兵衛、大砲を押し出してくれ」
 助左衛門はそう言ったあと、敵船に怒鳴った。
 「降参しろっ」
 返事の代わりに小さな大砲が火を噴き、弾が飛んできた。戦の用意は一応していたらしい。
 「六兵衛、左舷の砲を一斉に撃ってくれ」
 左舷大砲組頭の六角坊が怒鳴った。
 「撃てっ」
 片舷十二挺の大砲がもうもうたる煙と赤い舌のような炎を噴出して、三貫目の鉄の弾が十二個、相手の船に吸い込まれた。こんな近くで外す訳がない。全部当たった。
 しばらく、煙でなにも見えなかったが、晴れてくると、もう、敵船は姿、形がなく、沈んでいた。甲板や外板がばらならになって浮き、二、三人の海賊が浮いていた。船に何人が乗り組んでいたのだろう。ほとんどが海の藻屑となって消えた。南海丸の乗組員は、「おおっ」と驚きの声をあげた。こんな凄い威力が、南海丸の大砲にはあるんだ、という事を再認識したようだった。
 天神丸に乗っていた海賊たちは、すぐ武器を捨てた。船倉には天神丸の船頭ほか乗り組みのものが閉じ込められていたので、すぐ解放して、堺へ帰した。堺に帰りついたあと、色々なうわさを広げることであろう。海賊らは、天神丸の船倉に放り込んで、堺に送った。友閑殿が始末をつけてくれるだろう。
             (続く)



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