お空のあいちゃん

お空のあいちゃん

レストランで食事



主人の両親は“たいへんだったね。”と私達に声をかけてくれました。でも、かなしいようには見えませんでした。 お義父さんとは私がまだお腹が目立つ前の、妊娠5ヶ月ぐらいのときに会っていました。 お義母さんとは結婚式以来でした。だから、私が妊娠をしていること、孫ができることにあまり実感がなかったのかもしれません。だから、あいちゃんがお空にいったことより、私と主人のことの方が心配なようでした。

日本でだったらきっと考えられないでしょうが、私達はレストランの予約をして、主人の両親と叔母夫婦といっしょに、食事に行きました。 周りの人は、私達は、仲のよい家族が楽しそうに食事をしていると思ったでしょう。誰も、私達の小さな命が、昨日旅立っていったなんて、想像もつかなかったでしょう。。。

私達は食事の間、一度だけあいちゃんの話がでました。 それは、火葬にするか土葬にするかという話でした。 私も主人もどちらがいいのかわからず、土葬する人が多いときいて、“土葬でお願いします。”と業者のかたに伝えてありました。 それを義父に話すと、“ 土葬にしたら、お墓も今買わなくちゃいけなくなる。 経済的にも大変だろうし、火葬にすれば、家につれてかえって、しばらくいっしょにいることができるし、いつか引っ越すかもしれないなら、その時近くにお墓を買ったほうがいいんじゃないか?”と言う意見をもらいました。“つれて帰れる”そう聞いて、主人も私もまよいなく、火葬にすることを決めました。

そのあと、何を話したのかは覚えていません。 でも、食事をしているときは、うそでも笑っていました。主人もそうでした。 主人はステーキを食べていたのを覚えています。私はエビを注文したのだと思います。お義母さんと叔母夫婦はロブスターとステーキのセットを頼みました。そんなことだけ、覚えています。

あいちゃんのそばにはいることができませんでした。葬儀のしきたりも何もわかりませんでした。 日本だったらきっとお通夜の夜でした。きっとあいちゃんのそばにずっといたんだろうなと思いました。 でも、このあとどうしたらいいか、私にはわかりませんでした。 主人にもわからなかったようです。

食事が終わり、朝食をいっしょにとる約束をして、私と主人は家に戻りました。家に戻る車のなかで、私はどうやって自分の両親にあいちゃんのことを伝えるべきか考えていました。私はまだ自分の両親にあいちゃんのことを伝える電話をかけていませんでした。電話をしたからといって、すぐにとんでこれる距離ではありません。 だから、電話をかけるときは、明るく話をしなくてはと思っていました。私が泣いていたら、心配するからです。 顔がみれないぶん、悲しむからです。

でも、私にはまだ心の準備はできていませんでした。。。


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