水彩画紀行  スペイン巡礼路 ポルトガル 上海、蘇州   カスピ海沿岸からアンデスの国々まで

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アゼルバイジャン気質



アゼルバイジャンの首都バクーでの嘘のような本当の話をいくつか。

まず、アゼル名物のタクシー。

ひねもす、のんびり客待ちしているタクシーの不思議な習性。

客が付くや否やまさに追われる脱兎のごとし。

舗装もなき道を時速70~100km前後で疾走。

車間距離などあらばこそ、

4,5台がぴったりくっついて先陣争いをする様は、

サンフランシスコを駆け巡ったマクーインの

映画ブリットそのもの。

スリルが楽しめます。

映画との違いは、自分が主人公で

渦中の最中にいるという喜び。

もっとスリルを味わいたければ横断歩道を横切ること。

ここは「自動車優先」です。

激しい警笛をならして悪態をつきながら、

貴方の前後を猛スピードですり抜けて行きます。

さて、ようやくディナーショウの会場に到着。

改装されたばかりの宮殿のような大広間。

今夜は国民的歌手アゼリンが出演するので期待しましょう。

8時から開始とチケットに書いてありましたが・・・・・。

・・・・・・・・・・?

そろそろ・・9時になった・・・・・?

・・・・・・・・・・・・・?

まだ、楽団が動く気配なし。

待っている故に余得もあります。

向こうのテーブルの妙齢の乙女たちの一群と

いつしか視線が合い始めます。

向こうも退屈しているのでしょう、にっこりと微笑み交わします。

退屈しのぎに絵を描いて見せると飛んできました。

平均月給が60~100ドルのこの首都では、

1000ドル近くするカメラは、高嶺の花。

写真を撮ってあげると、「メールで送って」と、

もう友達になりました。



しかし、もうそろそろ10時。なんのアナウンスもありません。

普通なら最初になにか挨拶があってしかるべきですが・・・。

そういうところに無頓着なのがアゼル風なのでしょう。

ようやく楽団が動き始めました。

しかしなにやら様子がおかしい。

オーナーと口論しています。

ボーイに聴くと、要するに、

「ギャラが少ないから今夜は弾かない」

と言っているそう。

2時間待たされた観客は、ようやく始まったこのドラマを見守っています。

ブーイングもなく静かに眺めています。

これがアゼル人の人のよさというか忍耐強さ。

この楽団ドラマもショウーのひとつと思ってしまえば良いのです。

ようやく楽団が席につきました。

まず前座は、男性歌手の絶唱。

トルコ風の演歌はみな同じに聞こえます。

美しい感動がなくとも我慢しましょう。

ときどき吉幾三の演歌に似ているはずです。

ようやく豊満な肢体で踊りながら女性歌手が登場。

これなら歌が理解できなくても目で楽しめせます。

ここでまた、日本では考えられないことが・・・。

女性歌手の歌っている舞台に、男の子が大きな風船をもって

運動会よろしく駆け巡り始めました。

非常に興ざめです。

しかし、誰も叱りません。親は放ったまま。

歌手も優しく微笑みかけています。

ようやくセキュリティの若者が取り押さえますが、

すぐにまた舞台に舞い戻ってきます。

11時半、もうそろそろ私たちは帰宅時間。アゼリンは、とうとう聴けず。

しかし、カスピ海特有の黒い眉の眼の涼しい美人歌手も登場。

ちなみに、ここでは「付け睫毛」なるものが売ってありません。

みな自然有機栽培で育成された睫毛が長くてなかなか美しい。


しかし支配人不在でマイク調整が悪く良く聴こえなかったのが残念でした。



この国で仕事していると、ソ連時代の悪い慣習からか

いわゆるマネージメントと言う概念が希薄です。

今回もオーナーがいろんな手配をしただけ。

当日の行事を企画立案し、進行を司り、万端に落ち度がないか眼を配らせる

いわゆる支配人と言うかマネージャーが不在なのです。

この国は近代化のためにやるべきことが、山のようにあるのですが、

国にもマネージメントがありません。

若い人には職も将来の夢も展望ももてない国となっています。

国の中枢にいる古老の役人は、日本と同様、自己の保身、老後の自己の収入ばかりに腐心して

将来への思想や理念が皆無なのです。


後日談のおまけがひとつ。

その夜ディナーショーで出された肉もマネージメントの対象外だったようで・・・。

友人と共に翌朝から腹痛と下痢が数日続きました。

でも、あの美しい乙女たちも同じ思いをしているのなら・・・

我慢しましょう。

アゼル人気質を随所で垣間見れる有益なディナーショーでした。

ここに1年住んでいると、さまざまな事が体験できそう。

退屈しない毎日です。

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