読書の部屋からこんにちは!

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2009.04.14
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カテゴリ: 小説
漂流記、無人島・・・
そう聞いて私が思い出すのは、子供の頃ワクワクしながら読んだ「15少年漂流記」、長じてから読んだ井上靖の「おろしや国酔夢譚」、最近では須川邦彦の 「無人島に生きる16人」 の三つです。
しかも、「おろしや」と「無人島に生きる」は実話だというのですから、すごいの一言です。人間の持つ可能性と、究極の環境の中の人間の尊厳を考えさせられました。

しかし、今日ご紹介する「東京島」は、同じ無人島に漂着した物語でも、人間の180度反対の部分を表現した、かなり衝撃的な内容でした。


上の小説の中では、その過酷で悲惨な生活の中にも、救出される日をただ待つのではなく、人間として向上していこうという強い気持ちがあり、それが大きな力となっていました。
でも、東京島の人々に、そういう気概はまったくありません。
生きるための工夫もなく努力もなく、リーダーシップをとる人すらなく、彼らはてんでばらばらに気の合った者どおし、好き勝手に生活を始めていきます。
それは、無人島じゃなくても現代の都会と同じやり方だと、私は感じました。



上記の小説は、しょせん昔の話。
今の人が無人島で暮らすとこうなるんだと、桐野夏生さんは思ったのかもしれません。
東京島の人々の中には、無人島に向く性格と向かない性格。中国人と日本人。そして男と女。その対比もまた、なかなかおもしろく、深いものがありました。


この小説が出版されたとき、その宣伝文句は「女性が一人だけ」ということばかりが強調されていたように思います。そのほうが、人々の想像をかき立てやすいということなんでしょうけれど、内容を一言で宣伝するのに、それはちょっとずれてるなあという気がしました。
最初は確かに清子一人だった。そのせいで男たちは清子を奪い合ったけれど、その後女性は異分子として排除されるようになります。
その後、若いフィリピン女性が7人も漂着したことでかえって人間関係が安定して、とりあえずの落ち着きと繁栄を得ることができた。
という、ほんとうに皮肉な結末になるのです。


Amazonのレビューではあまり評価は高くないようですが、私はこれこそ桐野夏生にしか書けない毒のある小説だと思うので、☆五つです。







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Last updated  2009.04.14 09:38:45
コメント(6) | コメントを書く


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Re:「東京島」 桐野夏生(04/14)  
ばあチャル  さん
わたしも桐野夏生は欠かさず読んでいますが、他の現代作家さんのは内容あらすじを忘れても、桐野さんのは忘れようったって忘れられないほど、作品ごとに斬新・強烈な印象ですね。これもそうでした。次はどこへ行くんだろうといつも思います。

へへへ、でも「女神記」買ってあるのですがまだ読んでないのです。感想をお待ちしています♪
(2009.04.14 19:36:09)

Re[1]:「東京島」 桐野夏生(04/14)  
ぱぐら2  さん
ばあチャルさん
>わたしも桐野夏生は欠かさず読んでいますが、他の現代作家さんのは内容あらすじを忘れても、桐野さんのは忘れようったって忘れられないほど、作品ごとに斬新・強烈な印象ですね。

確かにそうですね。
今、「女神記」に取り掛かろうかとしているんですが、「東京島」の印象が強すぎて、次を読み始める気になれないでいます。 (2009.04.15 09:49:13)

Re:「東京島」 桐野夏生(04/14)  
ミシェル・デマルケ さん
ネット検索をしたところ、男たちが奪い合ったというその女のひとは、そのエピソードを舞台劇や映画に仕立てた、主演は自分自身が演じて・・・ってことでしたよね。
そんな仰天話なのにまったく知らなかったというのは何でなんでしょ? いくら古い話とはいえ、一度くらいテレビとかで耳にしても良さそうなんだけど・・・。

> 私はこれこそ桐野夏生にしか書けない毒のある小説だ・・

あ、なんかソレ分かる気がします。心の闇の深~いところをえぐる桐野ワールドですもんね。分かりやすくなきゃ(みんなに伝わらなきゃ)エンターテイメント作品とは言えないぜって言う人には、評価されにくいと思いますよ。
桐野さんも焦れったいことでしょう(笑)。 (2009.04.15 22:08:29)

Re[1]:「東京島」 桐野夏生(04/14)  
ぱぐら2  さん
ミシェル・デマルケさん
>ネット検索をしたところ、男たちが奪い合ったというその女のひとは、そのエピソードを舞台劇や映画に仕立てた、主演は自分自身が演じて・・・ってことでしたよね。

ミシェルさんのコメントから、私も検索してみて、この小説が実際にあったアナタハン島事件を下敷きにしたものだと、初めて知りました。
人数は同じですね。ストーリーは違うんだけど、でもこの主人公なら映画や劇の主役くらいやりかねない雰囲気です。でも、この小説のほうがもっともっとすさまじい毒にあふれてる…ような気がします。

>そんな仰天話なのにまったく知らなかったというのは何でなんでしょ? いくら古い話とはいえ、一度くらいテレビとかで耳にしても良さそうなんだけど・・・。

ほんとですね。その映画The saga of anatahan ちょっと見てみたい気もします。 (2009.04.16 08:36:04)

Re:「東京島」 桐野夏生(04/14)  
cyn1953  さん
紹介を読ませて頂いて、私も「東京島」読み始めました。桐野作品はエグイ(笑)のですが、それがクセになりそうです。 (2009.04.23 23:20:27)

Re[1]:「東京島」 桐野夏生(04/14)  
ぱぐら2  さん
cyn1953さん
>紹介を読ませて頂いて、私も「東京島」読み始めました。桐野作品はエグイ(笑)のですが、それがクセになりそうです。

そうそう、エグイという言葉がありましたね!
清子のその後の転身にはあ然としましたが、ここらへんも桐野夏生さんらしいです。 (2009.04.24 05:42:48)

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