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被告が実刑になるような事件はよい国策捜査じゃないんだよ。うまく執行猶予をつけなくてはならない。
著者は、2002 年 5 月、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕。2005 年 2 月執行猶予付き有罪判決を受けた外務省職員である。本書では、ロシア関係の仕事の概要や、鈴木宗男議員との関わり、外務省内部の権力闘争、拘留中の様子などが事細かに記されている。
「鈴木宗男事件」とは何だったのか、北方領土問題はどうなっているのか、田中真紀子議員をして「伏魔殿」と言わしめた外務省の実態がよくわかる。
著者によれば、一部の外務省関係者が「佐藤優は、鈴木宗男の意向を受けて外務省を陰で操るラスプーチンだ。組織を健全化させるためには、早く佐藤を追放しなくてはならない」(60 ページ)という話を新聞や週刊誌の記者に流していたという。
そして検察は国策捜査として、鈴木議員を最終ターゲットに据え、著者を逮捕したという。
検察官は取り調べの際、「被告が実刑になるような事件はよい国策捜査じゃないんだよ。うまく執行猶予をつけなくてはならない。国策捜査は、逮捕がいちばん大きいニュースで、初公判はそこそこの大きさで扱われるが、判決は小さい扱いで、少し経てばみんな国策捜査で摘発された人々のことは忘れてしまうというのが、いい形なんだ」(300 ページ)と語ったという。
著者は頻繁に「国益のため」という言葉を使っているが、一国民の単純な感想としては、著者を含めて外務省関係の公務員は本当に国民のために働いているのだろうかという疑問を感じてしまう。外交という組織において保身や派閥対立が起きるのは、日本という国がよほど平和なのか、はたまた平和ぼけで本当の危機を察知できなくなっているのか――いずれにしても、外務省という組織は正常に機能していないのではないかという危惧を強く感じた。
■メーカーサイト⇒ 佐藤優=著/新潮社/2005年03月発行 国家の罠
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