朝夕は、ほんの少しひんやりとしてきた。
昨日は、淡谷のり子生誕100年、群馬県のオスタカ山に日航機が墜落して22年。あの敗戦から62年。
部屋に籠もっているエコノミー症候群の男一人。
秋萩の
下葉色づく
今よりや
ひとりある身の
寝(い)ねがてにする
秋の気配。山萩の下葉もうっすらと赤くなってきた。これからが(私のような)一人でいる者にとっては、なかなかぐっすりとは寝られない夜が続くことだ(古今和歌集)。
変態訳:寒くもなく暑くもない夜の季節が訪れようとしている今日この頃、ついつい物思いに耽ってしまう。あの人は何をしてるかなあ。萩の葉の色が変ったね、などと話し合ったのはいつだったろう、手をつなぎ合って。ああ、そのまま、二人きりで一つ屋根の下で、見つめ合い話し合い睦みあえたら! 空気も美味しいし、山の景色もいいし、木々の間であの人の放つ気配もまた美味しい! 横になってはみたものの、思い浮かぶのはあの声あのささやきあの目あの指。眠れない眠れない。一人っきりのアタシなんて。あの人は、こちらの何を思いだしているのだろう。
涼しくなったから寝られるだろうよ、とヤジを入れるそこの君。恋をしていないな。恋をしているつもりでも女を好きではないな。ただツガイたいだけだろう。タイタイタイ。
寝(い)ぬ」の連用形「いね」+できる・耐えるの意味の「かつ」(上代の補助動詞)の未然形「かて」+打ち消しの助動詞「ず」の連用形「に」+サ変動詞「す」。
我が宿に咲ける藤波立ち返り過ぎがて(難)にのみ人の見るらむ
変態訳:私の部屋の外にそっと咲いている藤の花。その向こうに見えるあの人。激しく睦みあった後のあの人の後ろ姿。そっと見送る私。白い身体の薄いピンク色がまだ消えないのに、だんだん見えなくなっていく「せ(兄・夫)」の君。背の君。愛しい人。ああ、きてきて。戻って来て。あの人は今何を思って歩いているのだろう。あの人も夕べのワタシを拭いきれずに駅へ向かっているのだろうか。会社なんか休んでしまおう、などと考えているのかしら。
かくして朝がやって参りました、とさ。
愛の形 2007.03.18
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