知恵への愛(うそですww)

mission3

mission3「砂漠の民」



フォンは暗闇の中で何かを感じた。
生暖かい物が口の中に入ってくる。
なんだろうか、と確かめようとしたその時、フォンは意識を取り戻した。
が、目に入ってきたのは女の子の顔だった。
しかも距離は1mやそこらではなく0m、つまり接吻と言うやつだった。
「んむんん。むんん。」
フォンは状況も理解できず、さらに口の中にあるものがじゃまで、しゃべることすらままならなかった。
「あ。お目覚めですか?」
「・・・・・。」
少女は天使のような笑顔を向ける。
フォンは絶句する。
「これはエリモルスープと言って、エリモルと言う植物をすりつぶした物です。とっても体にいいんですよ。」
「・・・・・。」
フォンはまだ状況が理解できない。
というよりどんな言葉をかけたらいいのか解らなかった。
「あっ!申し送れました。私、アン・リ・フューレといいます。・・・ところで、あなたは・・・。」
「え?あ、ああ。俺、いや僕はフォン・ガタロスです・・・。」
口の中のエリモルスープと呼ばれた液体を飲み干す。
意外においしい。
「あのぉ。失礼ですが、ここはどこですか?それと、今あなたは・・・僕に何をしてました?」
顔を真っ赤にしながらフォンが言う。
「順番にお答えしますね。まず、ここはアロン族のキャンプで・・・。」
「星の名前を聞いてるんですけど・・・。」
フォンが訂正をうながす。
「あっ。すみません。私たちはこの星をパンデオと呼んでおります。」
残念ながらテクノバイザーのデータバンクには無い。
「次に私がしたことですね。ずっと動かないので、お口に食べ物をお運びしました。」
やっぱりしてしまったのか、キスを。
などと不埒なことを考えながら、再びフォンは真っ赤になる。
「なにぶん、砂漠のど真ん中で気を失ってしまっていたので、こちらに搬送して4日間看病させていただいております。」
「なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
フォンが叫ぶ。
「な、何かお気に触りましたか?」
アンが恐る恐る聞く。
「い、いやなにも。もしかして4日間もずっと食べ物を?」
「はい。なかなか食べていただけませんでしたけど、どうですか?お口に合いますか?」
「ま、まぁおいしかったよ。」
本当は『まぁ』どころではなく、『かなり』なのだが。
とそれどころではない。
4日間と言うことはこの民族に一日三食な習慣があれば、計12回もアンとキスをしたことになってしまうからだ。
おそらくこの民族はキスを知らないんだろう。
「よかったぁ。これ、私がおばあちゃんに教えてもらって作ったんです。」
「お、お手数かけました。」
思わず、フォンも敬語になる。
「ところで、あなたは・・・。」
アンが質問をしようとしたとき、入り口の扉が開き、大柄の男が現れた。
最近は大柄によく会うなとフォンは思った。
「おっ!気がついたか!」
わりと大声。
「お父様、声が大きいですよ。フォンさんは病人ですよ。」
「す、すまない。君はフォンと言うのか。私はデオル・ロ・フューレ、このアロン族の族長だ。」
「は、はぁ。」
「待って下さいよぉ!!ボスゥゥゥゥゥ!!」
デオルの後ろから小柄な男が顔を出す。
「あれまっ!!気がついたの!?」
再び大声。
「ルイさんも声が大きいですよ。」
「あ、すみません。お嬢。」
「あんまり気にしないで下さい。病気じゃありませんし。」
「おうよ。・・・ところでその真っ赤な制服。どこかで見た気がするな。たしかPCSAだったかなぁ?」
フォン赤が好きだったので制服の一部を赤くしようとしたのだが、失敗して全部赤くしてしまったのだ。
「え、ASCPでは?」
「そうだ!それだ。おとといそこに依頼したんだよね。」
うなずきながらデロスが言う。
「ほ、ホントですか!?」
「ああ。」
「連絡とか出来ますか?」
「ここからじゃあ無理だな。シラトルの町までいかねぇと。」
フォンはベッドから飛び起きる。
「そこにはどうすれば!!」
「おちつけ。後でアンが案内してくれるだろう。」
アンはフォンを見てうなずいた。お前じゃいかんのかとフォンは思った。
「それと、サンドハンターに気をつけな。」
デオルが扉から出て行く。
「さ、サンドハンター?」
「平たく言えば強盗団ですね。」
「へ、へえ。じゃあ、行こうか。」
「え。スープ飲まないんですか?」
フォンはスープの存在を忘れていた。

   10分後              砂漠

砂漠の中を2つの影が歩いていた。
「ところで、お父さんはどんな依頼をしたのかな?」
フォンがアンに尋ねる。
「さぁ。あまり詳しくは聞いておりません。でも、何かが暴走したって騒いでましたよ。」
「ぼ、暴走?」
「はい。数ヶ月前、父が購入したお天気ロボだと思います。」
「お、お天気ロボ?」
「見てのとおり。砂漠ですので、雨が降らないのです。そこで、父が旅の商人から買い取ったんです。」
「なんかうんくさいな。」
「私も初めは怪しんだんですけど、お天気ロボががんばってくれたおかげで生活がとても良くなって、今では族の人気者です。」
「人気者、ねぇ。」
前方に旗が見えてきた。
「ここを右です。」
「で、その人気者がなんで暴走したの?」
「そこなんです。解らないのは。」
「う~ん?」
2つの影は砂塵の中に消えていった。

                  シラトル

「なっ!!」
「あ、あぁぁぁ!!」
2人は同時に叫んだ。突然、砂煙の中から現れたのは廃墟となったシラトルの町だった。
「ど、どうして。・・・・あぶないっ!!」
フォンがアンに飛びつき、押し倒す。銃声とともに弾丸がフォンの背中をかすめる。
「だれだっ!!」
「・・・・・。」
沈黙。
「ふ、ふぉんさん・・・・。」
アンが恥ずかしげに言う。
どうやら抱擁という行為は恥ずかしいらしい。
が、今はそんなことを考えている場合ではない。
「あっあのっ。どいてくれますか?」
「だめだよ!!まだ狙われてるかも・・ってうわっ!!」
不思議な力がフォンとアンを引き離す。
「面白い物をお見せします。」
アンが立ち上がる。
その直後、フォンとアンに弾丸の雨が降り注ぐ。
「やめろぉぉ!!」
フォンは思わず目をつぶる。
自分ならともかくアンが弾丸なんて受けたら死んでしまう。
が、その予想を裏切る信じられない光景がそこにはあった。
「え・・・・?」
今にもアンの体を蜂の巣にしようとしていた弾丸の雨がその周囲1m付近に浮かんでいる。
もちろん自分にも同じ現象が起こっている。
「お返しします。」
アンそう言って手を振り上げる。
すると浮かんでいた弾丸が今度は撃った方向に放たれる。
まるでテレビの巻きもどしのようだった。
「ぎゃぁぁぁ!」
「うわぁぁぁ!」
おそらくサンドハンターの叫びだろう。
叫び声がきえ静寂が訪れる。
どうやらハンター達は撤退したようだった。
フォンが不思議な力から解放される。
「申し訳ありませんでした。」
アンが謝る。
「あ・・・あぁ。それよりケガは?」
「フォンさんのおかげでケガはありません・・・・。」
アンの顔が赤くなる。
「さっきのは・・・超能力?」
不思議な力につかまれるフォン。
弾丸が止まり、そのまま跳ね返る。
そのどれをとっても超能力としかいえなかった。
「さぁ。わかりません。物心ついたときから使えました。」
「すごいねっ!!お父さんも出来るの?」
「残念ながら父は出来ません。それに、これを使うとかなり体力を使うみたいなんです。」
アンがその場に座り込む。
「あぁぁ。ごめん!やっぱり俺がしっかりしてなかったから。」
「い、いいえそんな。」
そんな言い争いがしばらく続いた。


次回予告 フォンのいないASCP本部にきた依頼。それは暴走したお天気ロボをとめることだった。果たしてレン1人でお天気ロボを止めることができるのか?次回ASCP第4話「激闘!!ASCPvsお天気ロボ(前編)」お楽しみに。


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