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2008/01/26
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カテゴリ: アート&ブックス
 近く(2月9日~)全国公開される話題の映画「チーム・バチスタの栄光」の原作(宝島社文庫・上下2巻各476円)を読みました。

 原作は、第4回「このミステリーがすごい!」の大賞受賞作で、現在170万部を超すベストセラーになっています。大学病院が舞台。手術室で起こった原因不明の術死をめぐって、さまざまな医療関係者が絡み合うミステリーです。主なあらすじは以下のようなものです。

 東城大学医学部付属病院は、米国の心臓専門病院から心臓移植の権威、桐生恭一を臓器制御外科助教授として招聘した。そして、彼の外科チームは、心臓移植の代替手術である「バチスタ手術」(【注】を参照)の専門の、通称「チーム・バチスタ」として、成功率100%を誇り、その勇名を轟かせていた。ところが最近、3例続けて術中死が発生した。チーム・バチスタの栄光

 原因不明の術中死と、メディアの注目を集める手術が重なる事態に危機感を抱いた病院長の高階。しかも次のバチスタ手術の患者は、海外からの移送されたゲリラの少年兵士であり、マスコミの注目も集めていた。

 そこで内部調査の役目を押し付けられたのが、神経内科教室の万年講師で、不定愁訴外来責任者・田口と、厚生労働省の変人役人・白鳥だった……。 壊滅寸前の大学病院の現状。医療現場の危機的状況。そして「チーム・バチスタ」のメンバー間の相克と因縁。医療過誤か、殺人か。遺体は何を語るのか…。栄光のチーム・バチスタの裏側に隠されたもう一つの顔とは…。

 原作者の海堂尊(かいどう・たける)氏が元外科医で、現役の病理医であるだけに、ディテールがとてもきっちり描かれ、医療現場の現実を臨場感たっぷりに読ませてくれます(映画配給会社のうたい文句は「現役医師が描くメディカル・エンターテイメント」ですが、原作を読む限り当たっています)。

 何よりもこの小説の魅力は、主人公の田口と白鳥をはじめ登場人物がとても個性的なキャラクターで描かれていることです。とくに中央官僚とは思えないような、「はみだし公務員」の白鳥は最高です。真面目な切れ者ようで、毒舌とおふざけたっぷりの強烈なキャラです(現実にはこんな官僚はいないでしょうが)。

 主な舞台が病院(とくに手術室内)というだけあって、やはり全編かなりの専門用語が飛び交います。原作者はできるだけ、初心者にもわかりやすいような説明も付けていますが、それでも難しすぎて、読むのが疲れるようなページもあります(その辺りは斜め読みしても、粗筋にはあまり影響はありません)。

 基本的な筋立てとしては「犯人探し」です。一応、最後まで誰が犯人かは分からないように展開にはなっていますが、後半でなんとなく犯人が読めてしまう「オチ」はややインパクト不足かもしれません。しかし全体としては、とても秀逸なミステリーに仕上がっているうえ、何より「医療現場での推理もの」という日本には従来あまりなかった分野でもあり、個人的には大いに満足しました。



【注】バチスタ手術  学術的な正式名称は「左心室縮小形成術」。一般的には、正式名称より創始者R・バチスタ博士の名を冠した俗称の方が通りがよい。拡張型心筋症に対する手術術式で、肥大した心臓を切り取り小さく作り直すという、単純な発想による大胆な手術(原作中の説明より)。

 ※本の表紙画像はAmazon上のものを引用しました。Amazon.Japanに感謝します。


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Last updated  2012/09/29 12:16:45 PM
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うらんかんろ

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汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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