Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2013/07/08
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カテゴリ: カクテルブック
 さて、ハリー・マッケルホーン(Harry MacElhone)の「ABC Of Mixing Cocktails」の“初版本”(1919年刊)には、304種類のカクテルが収録されています(現行版は369種類収録です)。
s-IMG_3822.jpg

 従来、この「ABC Of …」が欧米初出資料と認められてきたのは、アドニス(Adonis)、アラスカ(Alaska)、アレクザンダー(Alexander)、エンジェル・キス(Angel’s Kiss)、ブルックリン(Brooklyn)、ジン・リッキー(Gin Rickey)、ジャック・ローズ(Jack Rose)、ニッカーボッカー(Knickerbocker)、ミリオネア(Millionaire)、オレンジ・ブロッサム(Orange Blossom)、プッシー・フット(Pussy Foot)、ロブ・ロイ(Rob Roy)、サイドカー(Sidecar)、スノーボール(Snowball)、ホワイト・レディ(White Lady)の15のカクテルでした。
 ※ただし、ホワイト・レディは現在の標準レシピとはかなり違うために、初出とみなさない研究者もいます。


 今回、収録された304のカクテルの名前を、うらんかんろが所蔵する10冊近い1940年代以前のカクテルブックと照らし合わせたところ、上記の15も含めて84ものカクテルが、この「ABC Of …」上が欧米初出と確認できました。


 そのなかにはダイキリ(Daiquiri)のような超有名なカクテルのほか、ビジュー・カクテル(Bijou Cocktail)、ブロンクス・テラス(Bronx Terrace)、クラブ・カクテル(Club Cocktail)、コモドア(Commodore)、アイ・オープナー(Eye-Opener)、ジョン・コリンズ(John Collins)、マミー・テイラー(Mamie Taylor)、ペグー・クラブ(Pegu Club)、ヨコハマ(Yokohama)など、現代のバーテンダーにもそこそこ名前の知られたのもありました。s-IMG_3839.jpg


 さて、“初版本”にある304のカクテルのうち、現行の「Harry’s ABC Of …」ではなくなっているカクテルはどれくらいあるのか、手間を惜しまずに数えてみました。すると、全部で163。約53%です。差し引き、現行版まで生き残っているのは141です。


 見方を変えれば、現行版に収録の369のカクテルのうち、初版から生き残っているのは約38%しかないということになります。ちなみに現行版まで生き残っている141のカクテルは、以下の通りです(少し長くなりますが、重要な基礎データなので、すべて記しておきます)。


 Adonis、Alaska、Alexander、Alfonso、American Beauty、Angel’s Kiss、Apple Jack、Astoria、Bacardi Cocktail、Bamboo、Bijou Cocktail、Blackthone、Bloodhound、Bossom Caresser、Brandy Crustas、Brandy Daisy、Brandy Fix、Brandy Flip、Brandy Julep、Brandy Smash、Brandy Sour、Brazil、Broken Spur、Bronx、Brooklyn、Bull Dog、Café de Paris、Carrol、Casino、Champagne Cocktail、Champagne Pick-Me-Up、Chinese Cocktail、Clover Club、Coronation、Daiquiri、Derby、Diabolo、Diki Diki、Doctor、Dream、Dubonnet、Dunlop、s-IMG_3847.jpg


 Eagle’s Dream、East India、Egg Nog、Egg Nog Hot、Elk’s Own、Empire Punch、Fish House Punch、Fox River、Gilloy、Gin Cocktail、Gin Daisy、Gin Fix、Gin Fizz、Gin Julep、Gin Rickey、Gin Sling、Gin Smash、Golden Fizz、Grenadier、Harry’s Cocktail、Harry’s Pick-Me-Up、Harvard、Inca Cocktail、Ink Street、Jack Rose、Jersey Cocktail、Journalist、Knickerbocker、Knock-out、Lasky、Locomotive





 Reform Cocktail、Rob Roy、Rock & Rye、Rose Cocktail、Royal Cocktail、Royal Smile、Ruby Fizz、Russ House、Saratoga、75 Cocktail、Shandy Gaff、Sidecar、Silver Cocktail、Silver Streak、Sir Walter、Snowball、Southern Beauty、Star Cocktail、Stinger、Stone Fence、Swissess、Tango、Tantalus、Texas Fizz、Third Degree、Thunder、Tom Collins、Trilby、Tropical、Vie en Rose、Virgin、Wardy’s、Wax Cocktail、White Lady、Xanthia、Yale、Yokohama、Za Zas-IMG_3837.jpg


 マッケルホーンは、「Harry’s New York Bar」のオーナーとなる前、ロンドンやフランス国内のいくつかの場所でバーテンダーとして修業しました。


 従って、彼が「ABC Of …」で取り上げたカクテルは、少なくとも1910年代後半の欧州(少なくともロンドンやパリでは)では登場していて、街場のバーで飲まれていたことの証(あかし)と言えるでしょう。


 しかし、マッケルホーンの本の中で生き残っていたとしても、現実のBarの世界で現在でも認知されているカクテルはどれくらいあるでしょうか? 


 ちなみに、この141のカクテルの中で先般、うらんかんろが、現代のBarでの認知度・知名度を基準に、連載「カクテル――その誕生にまつわる逸話」で取り上げたのは、以下の33のカクテルです。

 Adonis、Alaska、Alexander、Angel’s Kiss、Bacardi Cocktail、Bamboo、Bijou Cocktail、Bloodhound、Bronx、Brooklyn、Champagne Cocktail、Clover Club、Daiquiri、Egg Nog(Hot Egg Nog)、Gin Fizz、Gin Rickey、Jack Rose、Knickerbocker、Manhattan、Martini、Millionaire、Mint Julep、Old Fashioned、Orange Blossom、Pussy Foot、Rob Roy、Shandy Gaff、Sidecar、Snowball、Stinger、Tom Collins、White Lady、Yokohama


 連載ではこれらのカクテル誕生について、僕が現在知り得る限りのデータや手がかりを紹介したつもりですが、今回、マッケルホーンの“初版本”を見て、さらに追記・修正が必要なものも出てきました。そのなかには、従来のカクテルの歴史書や現在刊行されているカクテルブックを書き変える必要がある重要な事実もありました。


 間違った事実がひとり歩きし、それが真実であるかのように定着してしまうことは、どこの世界でもあることですが、スタンダード・カクテルの世界でもそれが起きていたのです。                                       <次回へ続く>





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Last updated  2013/07/08 09:56:27 PM
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うらんかんろ

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汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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