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2013/07/15
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カテゴリ: カクテルブック
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 英国生まれの ハリー・マッケルホーン (Harry MacElhone)が 「ABC Of Mixing Cocktails」 (1919年刊)の編纂に精力を注いでいた1910年代は、モダン・カクテルの基礎が築かれ、花開いた時代と言われています。その中心だったのがロンドン、パリ、ニューヨークでした。

 残念なことに、ニューヨークは1920年から13年間、禁酒法時代という暗黒の歳月を過ごすことになります(もっとも、禁酒法施行の間、米国内の“もぐり酒場”では、別の意味でカクテルは発展していきましたが)。

欧州で1920年代以前に出版されたカクテルブックは数少なく、この「ABC Of …」以外、体系的な資料はほとんど見当たりません。 ホテルや街場にBarはもちろんありましたが、当時のバーテンダーのカクテルづくりの技術や知識は、ほとんど師匠から弟子への口伝だったからです。

 「ABC Of …」の功績は、 1910年代に存在したカクテルが確認できるということだけではなく、この時代の欧州における、ほとんど唯一かつ重要な「カクテルの一次資料」 だということです。「ABC Of …」に最も近い時期のカクテルブックには、「173 Pre-Prohibition Cocktails」(Tom Bullock著 1917年刊)という本がありますが、残念ながらこれは米国内で出版されたものです。

 「ABC Of …」の後、欧州できちんとしたカクテルブックが出版されるのは、あの「The Savoy Cocktail Book」(1930年刊)まで11年の歳月を待たねばなりません。だから、うらんかんろは、マッケルホーンがこういう記録を残すマメな人であったことに、心から感謝しています。

 さて、今回からは、「ABC Of Mixing Cocktail」とほぼ同時代のカクテルブックとも比較しながら、有名どころのカクテルを中心に、個々に詳しくみていくことにしましょう。s-Adonis.jpg

1.アドニス(Adonis)

 アドニスと言えば、 1884年にブロードウェイでヒットしたミュージカル「アドニス」(主演はヘンリー・ディクシー Henry Dixey)にあやかって、ニューヨークで誕生したと伝わっています。考案者は、おそらくはニューヨークのバーテンダーでしょうが、残念ながらその名は伝わっていません( 写真 は、Adonis@Bar Rocking Chair)。

 「アドニス」の名は、ギリシャ神話に登場する美少年の名前に由来します。 現代の標準的なレシピは、ドライ・シェリー4分の3、スイート・ベルモット4分1、オレンジ・ビターズ1dash ですが、 「ABC Of …」では、ドライ・シェリー3分の1、スイート・ベルモット3分の2、オレンジ・ビターズ1dash( ベルモットの方が多い! と、誕生から間もない時期は、かなり甘口の仕上がりが一般的だったことが分かります。

 しかし、米国生まれのカクテルであるのに、なぜか1890年刊の「American Bartender」(William T. Boothby著)や1917年刊の「173 Pre-Prohibition Cocktails」(Tom Bullock著)には登場しません(ひょっとして米国生まれというのは間違いで、欧州で生まれたカクテルではないかとも疑いましたが、下記に紹介する「The Waldolf-Astoria Bar Book」(1935年刊)のアドニスの項には、冒頭に記したエピソードが記されていますので、やはり米国生まれなのでしょう)。

 マティーニが歳月とともに辛口志向になるのと同様に、アドニスも年を追うごとに辛口化していきます。11年後に出版された 「サヴォイ・カクテルブック」では、ドライ・シェリー3分の2、スイート・ベルモット3分の1、オレンジ・ビターズ1dashと、早くもシェリーとベルモットの比率が逆転 しています。

 参考まで記せば、「サヴォイ…」の後、出版された1940年以前のカクテルブックでの「アドニス」のレシピは以下の通りです。

・「The Artistry Of Mixing Drinks」 (フランク・マイヤー著 1934年刊)仏
  ドライ・シェリー2分の1、スイート・ベルモット2分の1、オレンジ・ビターズ1dash
・「The Old Waldolf-Astoria Bar Book」 (A.S.クロケット著 1935年刊)米
  ドライ・シェリー2分の1、スイート・ベルモット2分の1、オレンジ・ビターズ2dash
・「Mr Boston Bartender’s Guide」 (1935年刊)米
  ドライ・シェリー3分の2、スイート・ベルモット3分の1、オレンジ・ビターズ1dash
・「Café Royal Cocktail Book」 (W.J.ターリング著 1937年刊)英
  ドライ・シェリー3分の2、スイート・ベルモット3分の1、オレンジ・ビターズ1dash

 現代に近い辛口のレシピが登場するのはいつ頃かと言えば、手元にあるカクテルブックで調べた限りでは、1995年の「ニューヨーク・バーテンダーズ・ガイド」(サリー・アン・バーグ著)が初めてです。

 なお、この「アドニス」のバリエーションとして、1890年、横浜グランドホテルで「バンブー(Bamboo)」(作者は来日米国人のルイス・エッピンガー、Louis Eppinger)という日本初の世界的カクテルが生まれたというエピソードはあまりにも有名です。

 アドニスが日本にいつ頃伝わったのかは定かではありません。おそらくは、外交官や商社マンを通じて、戦前に伝わっていたと思われますが、なぜか文献での登場例はありません。日本国内では、「バンブー」の方に人気が集まったため、「アドニス」自体は、現在に至るまで(名前はそれなりに認知されていますが)Barでの人気カクテルとはなっていません。ちなみに、日本国内の文献で初めて登場するのは、戦後の 1954年(昭和29年)に発売された「世界コクテール飲物辞典」 (佐藤紅霞著)です。

<次回へ続く>




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汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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