Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2013/08/08
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カテゴリ: カクテルブック
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◆「Harry's ABC Of Mixing Cocktails」にみるクラシック・カクテル

7.ジャック・ローズ(Jack Rose)

 ジャック・ローズも20世紀初頭に生まれたクラシック・カクテルの代表格で、現代のバーでもよく注文が出る人気カクテルの一つです。誕生や経緯・由来については諸説があって、決定的なものはありません(諸説の詳しい内容については、先般連載した拙稿「カクテル――その誕生にまつわる逸話」のジャック・ローズの項をご参照ください)。

 現代の標準的なレシピでは、 アップルジャック・ブランデー(カルバドス)6分の4、ライム・ジュース6分の1、グレナディン・シロップ6分の1 というところでしょうか(シェイク)。

 ジャック・ローズが登場する最も古いカクテルブックは、うらんかんろが調べた限りでは、 1908年に米国人のウィリアム・T・ブースビー(William T.Boothby)が著した「World Drinks and How To Mix Them」 (1914年説もあり)で、ハリー・マッケルホーン(Harry MacElhone)の 「ABC Of Mixing Cocktails」(1919年刊)は、二番目に古い文献 と考えられています。s-Jack Rose.jpg

 ジャック・ローズは少なくとも、1910年代の米国の大都市や欧州のロンドンやパリでは、かなり認知されていたカクテルだったことは間違いありません( 写真 = Jack Rose @ Bar Savoy Hommage )。

 カクテル名の由来については、1900~1910年当時、著名な暗黒街のボスだったジェイコブ・ローゼンワイヒのニックネーム「ボールド・ジャック・ローズ」から名付けられたという説(出典:Wikipedia英語版ほか)が伝わっていますが、裏付け資料には出合っていません(他にも説はありますが、この稿の目的ではないので触れません)。

 さて、ブースビーのレシピが、 アップルジャック2分の1、グレナディン・シロップ4分の1、レモン・ジュース1spoon というシンプルなものであるのに対し、マッケルホーンのレシピは、とても複雑なものとなっています( アップルジャック<またはカルバドス>3分の1、ジン6分の1、ドライ・ベルモット12分の1、スイート・ベルモット12分の1、オレンジ・ジュース6分の1、ライム<またはレモン>ジュース6分の1、グレナディン・シロップ少々 )。

 ジンやベルモット、そしてオレンジ・ジュースまで加えるレシピに驚かされますが、こうしたジャック・ローズのレシピは、調べた限りでは、なぜかマッケルホーンの本以外には見当たりません。それどころか、マッケルホーン自身、後年の「Harry's ABC…」の改訂版では、現代の標準レシピに近いもの( カルバドス2オンス、レモン・ジュース=分量指定なし、グレナディン・シロップ4dash )に変えています。

 ちなみに、後の1930~40年代の主なカクテルブックに登場した「ジャック・ローズ」は、どういうレシピだったのか、ひと通りみておきましょう。

・「The Savoy Cocktail Book」 (ハリー・クラドック著 1930年刊)英
アップルジャック(またはカルバドス)4分の3、グレナディン・シロップ4分の1、ライム・ジュース1個分(またはレモン・ジュース半個分)

・「Mr Boston Bartender’s Guide」 (1935年刊)米 アップルジャック45ml、ライム・ジュース半個分、グレナディン・シロップ1tsp、

・「The Artistry Of Mixing Drinks」 (フランク・マイアー著 1934年刊)仏 アップルジャック(またはカルバドス)2分の1、グレナディン・シロップ2分の1

・「The Old Waldorf-Astoria Bar Book」 (A.S.クロケット著 1935年刊)米 アップルジャック3分の2、グレナディン・シロップ3分の1

・「Café Royal Cocktail Book」 (W.J.ターリング著 1937年刊)英 アップルジャック(またはカルバドス)4分の3、グレナディン・シロップ4分の1 レモン・ジュース(またはライム・ジュース)半個分

・「Trader Vic’s Book of Food and Drink」 (ビクター・バージェロン著 1946年刊)米 アップルジャック1オンス、グレナディン・シロップ1dash、ライム・ジュース1個分、 


 なお、 日本に伝わったのも古く、1924年(大正13年)刊の「コクテール」(前田米吉著)にすでにその名前が見えます が、レシピは、 アップル・ブランデー3分の2、ライム・ジュース3分の1、ラズベリー(・シロップ?)少量 と記されています(なぜかグレナディン・シロップではありません!)。生ライムがとても貴重だったこの頃の日本で、果たしてこのレシピに忠実につくれるバーはあったのでしょうか?




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うらんかんろ

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汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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