Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2013/08/16
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カテゴリ: カクテルブック
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◆「Harry's ABC Of Mixing Cocktails」にみるクラシック・カクテル

8.ジョン・コリンズ/トム・コリンズ(John Collins/Tom Collins)

 ジョン・コリンズとトム・コリンズ。いずれも19世紀半ばに登場したクラシック・カクテルですが、名前だけでなく、レシピも酷似していて、実に紛らわしい名前のカクテルです。

 「ジョン・コリンズ」は、 19世紀半ばの英国人ジョン・コリンズ氏が考案したと伝わっています。 否定する論考もないので定説としてほぼ支持されているようです。 当初の「ジョン・コリンズ」はオランダ・ジン・ベースでしたが、英国産のオールドトム・ジンがよく使われるようになって「トム・コリンズ」というもう一つのカクテルが生まれたというのも、ほぼ定説 となっています。

 では、現代の標準的なレシピはどうなっているでしょうか? 何をもって標準的と言うのかは議論のあるところでしょうが、先般の連載「カクテル――その誕生にまつわる逸話」で、うらんかんろが紹介したのは、次のようなレシピです。

◆ジョン・コリンズ
【レシピ1】 ウイスキー(45~60)、レモン・ジュース(20)、シュガー・シロップ2tsp、氷、ソーダ(適量)、マラスキーノ・チェリー、レモン・スライス
【レシピ 2】 オランダ・ジン(45~60)、レモン・ジュース(15)、シュガー・シロップ1tsp、氷、ソーダ(適量)、飾り=レモン・スライス&チェリー
【スタイル】 ビルド    【グラス】 トール・グラス(容量300~360mlサイズで)

◆トム・コリンズ
【レシピ】 ジン(45~60)、レモン・ジュース(15)、シュガー・シロップ1tsp、氷、ソーダ(適量)、飾り=レモン・スライス&チェリー
【スタイル】 ビルドまたはソーダ以外をシェイク   【グラス】 トール・グラス(大ぶりのコリンズ・グラスで)
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 ハリー・マッケルホーン(Harry MacElhone)の 「ABC Of Mixing Cocktails」(1919年初版刊) での「ジョン・コリンズ」は、 「大ぶりのグラス(Large tumbler)に氷3~4個入れ、オランダ・ジン1グラス、レモン・ジュース1個分、シュガー2tsp(ティー・スプーン)、ソーダを加え、しっかりステアする(stir well)」 というレシピです。

 マッケルホーンは、「ロンドン・ジンを使うのが、しばらくの間、習慣になっていたが。」というコメントを付記していますが、1910年代後半では、オランダ・ジンを使うのが主流になってきたということでしょうか?

 また、「トム・コリンズ」は、 「大ぶりのグラス(Large tumbler)に氷を2~3個入れ、オールドトム・ジン1グラス、レモン・ジュース1個分、シュガー1tsp、ソーダを加え、しっかりステアする」 となっています。すなわち、マッケルホーンの本では、両者はジンの種類の違いにすぎないのです。

 ちなみに、 「サヴォイ・カクテルブック(The Savoy Cocktail Book)」 (1930年刊)ではどうかと言えば、 「ジョン・コリンズ」はマッケルホーンと同様、オランダ・ジンをベースにしていますが、「トム・コリンズ」では、ロンドン・ドライ・ジン という指定です( 写真 = Tom Collins @ Bar Arlequin )。

 「トム・コリンズ」が生まれた時期については1880年代説もありますが、初めて活字で紹介されたというカクテルブック「How To Mix Drinks」(ジェリー・トーマス著)が1876年の出版であることから、 少なくとも1875年以前には誕生していたことは間違いありません (出典:欧米の専門WEBサイト)。

 そして一方、「ジョン・コリンズ」はその後、オランダ・ジンがベースのもののほかに、 1940年代になってウイスキーをベースにしたバリエーションも生まれました。 ウイスキー・ベースの「ジョン・コリンズ」が欧米のカクテルブックで登場するのは、現時点で確認した限りでは、 1947年刊の「Trader Vic's Bartender's Guide」(ビクター・バージェロン著)が最初 です。

 70年代まではジン・ベースの「ジョン・コリンズ」を紹介していた「Mr Boston Bartender’s Guide」も1980年以降、ウイスキー・ベースに替えています。現代においても、カクテルブックではオランダ・ジン・ベースのものとウイスキー・ベースのものとが混在しています。

 海外の専門サイトでは、「トム・コリンズ」について、英国産のオールドトム・ジンにちなむ名前であるにも関わらず、米国発祥説を唱えるところもあります。具体的根拠はあまり示していませんが、19世紀末の欧州のカクテルブックにはあまり登場しないのに、ジェリー・トーマスのカクテルブック=1876年刊=に登場することも一つの要因かもしれません。

 ちなみに、1880~1940年代に刊行された主なカクテルブック(マッケルホーンの本以外)での「ジョン・コリンズ」と「トム・コリンズ」は、どういうレシピだったのか、ひと通りみておきましょう。

◆ジョン・コリンズ
・「Bartender’s Manual」 (ハリー・ジョンソン著、1882年初版、1934年再版、2008年復刻版刊)米 &  「Bartenders Guide: How To Mix Drinks」 (ウェーマン・ブラザース編、1912年初版、2008年復刻版刊)米
 オランダ・ジン1グラス、レモン・ジュース2~3dash、ライム・ジュース2dash、シュガー4分の3tsp(ティー・スプーン)、氷、ソーダ適量

・「American Bartender」 (ウィリアム・T・ブースビー著、1891年初版、2009年復刻再刊)米 オランダ・ジン1グラス、レモン・ジュース2分の1個分、シュガー1tsp、氷、ソーダ適量

・「Modern American Drinks」 (ジョージ・J ・カペラー著、1895年初版、2008年復刻版刊)米 オランダ・ジン1グラス、レモン・ジュース適量、シュガー1tsp、氷、ソーダ適量、レモン・ピール

・「The Savoy Cocktail Book」 (ハリー・クラドック著、1930年刊)英 オランダ・ジン1グラス、レモン・ジュース2分の1個分、パウダー・シュガー2分の1tsp、ソーダ適量

・「The Artistry Of Mixing Drinks」 (フランク・マイアー著 1934年刊)仏 ジン1グラス、レモン・ジュース半個分、シュガー1tsp、シュウェップス・ソーダまたはソーダ適量(※トム・コリンズも同じレシピ)

・「Mr Boston Bartender’s Guide」 (1935年刊)米 オランダ・ジン1グラス、レモン・ジュース半個分、パウダー・シュガー2分の1tsp、氷、ソーダ適量(※1980年代以降はウイスキー・ベースに)

・「The Old Waldorf-Astoria Bar Book」 (A.S.クロケット著 1935年刊)米 &  ・「Café Royal Cocktail Book」 (W.J.ターリング著 1937年刊)英 → ともに収録なし

・「Trader Vic’s Bartender’s Guide」 (ビクター・バージェロン著 1947年刊)米 バーボン・ウイスキー1オンス、レモン・ジュース1オンス、シュガー・シロップ2分の1オンス、ライム半個、ソーダ適量

◆トム・コリンズ
・「Bartender’s Manual」 (ハリー・ジョンソン著、1882年初版、1934年再版、2008年復刻版刊)米 → 収録なし

・「American Bartender」 (ウィリアム・T・ブースビー著、1891年初版、2009年復刻再刊)米 オールドトム・ジン1グラス、レモン・ジュース2分の1個分、シュガー1tsp、氷、ソーダ適量

・「Modern American Drinks」 (ジョージ・J ・カペラー著、1895年初版、2008年復刻版刊)米 オールドトム・ジン1グラス、レモン・ジュース適量、シュガー1tsp、氷、ソーダ適量、レモン・ピール

・「Bartenders Guide: How To Mix Drinks」 (ウェーマン・ブラザース編、1912年初版、2008年復刻版刊)米 オールドトム・ジン1グラス、レモン・ジュース2~3dash、ライム・ジュース2dash、シュガー4分の3tsp(ティー・スプーン)、氷、ソーダ適量

・「The Savoy Cocktail Book」 (ハリー・クラドック著、1930年刊)英 (ロンドン)ドライ・ジン1グラス、レモン・ジュース2分の1個分、パウダー・シュガー2分の1tsp、ソーダ適量

・「The Artistry Of Mixing Drinks」 (フランク・マイアー著 1934年刊)仏 → ジョン・コリンズとまったく同じレシピ

・「Mr Boston Bartender’s Guide」 (1935年刊)米 オールドトム・ジン1グラス、レモン・ジュース半個分、パウダー・シュガー2分の1tsp、氷、ソーダ適量

・「The Old Waldorf-Astoria Bar Book」 (A.S.クロケット著 1935年刊)米 &  ・「Café Royal Cocktail Book」 (W.J.ターリング著 1937年刊)英 → ともに収録なし

・「Trader Vic’s Bartender’s Guide」 (ビクター・バージェロン著 1947年刊)米 ジン1オンス、レモン・ジュース1オンス、シュガー・シロップ2分の1オンス、ライム半個、ソーダ適量


 なお、日本のカクテルブックで「ジョン・コリンズ」「トム・コリンズ」が初めて登場するのは、いずれも 1924年(大正13年)刊の秋山徳蔵著「カクテル(混合酒調合法)」 ですが、ともにジン・ベースとだけ記され、「トム・コリンズ」は「ジョン・コリンズ」の別名と書かれているだけです。
ウイスキー・ベースの「ジョン・コリンズ」が初お目見えするのは意外と遅く、1962年(昭和37年)刊の木村与三男著「カクテール全書」 となっています。




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うらんかんろ

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汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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